7
「また会ってくれるかな」
タクヤは夢見の淹れてくれた水出しコーヒーを一口飲んだ。
「やさしい味だね。癒されるよ」
「時間切れだったんでしょう」
お昼の休憩時間を利用してタクヤは百合を呼び出していた。
「もともときっかけが欲しかっただけで、一回で済むとは思っていなかったからね」
「もう一度会うのは問題ないでしょう。こんどはあたしも同席するし」
ただあれだけ話が食い違ってしまうと。夢見は依頼者の持ってきた写真をじっと見ている。
「ちょっと感じは違っているけど、あの娘に間違いないと思う」
「今思うとその写真、盗み撮りした写真のようにも見えるんだけどね」
「盗み撮りでしょう」夢見がサラリと言う。
「ミーちゃんさあ」タクヤは水出しコーヒーをぐっと飲んだ。
「あたし調べてみるよ。依頼者のほうを」
「それじゃ僕はあの娘のほうをさりげなく」
そう言ってタクヤは立ち上がって事務所を出ていく。
「タバコでしょう」夢見がタクヤに声をかける。
「もちろん、今からは行かないよ」
階段の降り口に灰皿が置いてある。下の階は《ボス・テナー》の中を除いて全面禁煙になっていた。タクヤはパーカーのポケットからタバコとライターを出して火をつけた。
「相棒のおねえちゃんも吸ってるよね」
ラーメン屋のおやじがタクヤに声をかけてきた。
「向こうのほうがヘヴィーですよ」
「そうなんだ」
「刑事さんだったらしいね」
わかっちゃうもんだなとタクヤは思う。そして、自分のことも知られてるのだろうかと思った。ビルの向こうに夕焼けが見えた。タクヤは夢見に電話をかける。
「やっぱり今から行ってくる」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます