タクヤの前に現れた女性はタクヤの想像とは明らかに違っている。依頼者には何か特別な思い入れでもあるのだろうか。

《人違いじゃないの》

 少し離れた席にいる夢見からタクヤのケータイにメールが届く。派手で気の強そうな女性を想像していた。依頼者の説明もそんな感じだったはず。

「探偵さんですよね」

 幼い感じで、着ているものもそんな彼女によく似合っている。

「あたしあまり上司のプライベートとか知らないんですけど」

「女性ってそういう話が好きそうですが」

 タクヤはにこやかに微笑みながらそう言った。彼女には本来の依頼についてまだ話をしていない。

「あたし、混ぜてもらえないんです。こんな感じでしょう。子どもに思われてるみたいで」

「そんなことないと思いますけど」

「それで、どこまで調べたんですか」

 女性は小声でタクヤにそうきいた。

「彼はこのこと知っているんですか」

「あたし別れますから。断り切れなかっただけなので」

 突然の展開にタクヤはたじろぐ。

「まあ、そう処理することもできますが」タクヤは苦し紛れにそう言った。浮気調査なんて彼女を呼び出す口実でしかなかったのに。いったいこの娘は誰と浮気しているのだろう。そう思いながらタクヤは依頼者のことを知っているか百合という女性に尋ねる。

「知りません。誰ですか」

 タクヤは大きくため息をつきそうになるのを必死でこらえた。夢見からメールが届いていることはわかっている。けれどこの状況でそれを見ることはできない。

「本当に知りませんか。その人からの依頼なんですが」

 向かいの女性はキョトンとした顔のままタクヤを見ていた。

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