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「そもそもこれは依頼なの」
「依頼でしょう」
「でもこれはいわゆる探偵業の依頼ではないよね」
「狭義ではね。そもそも探偵業なんて街の便利屋みたいなものだから」
「狭義でなくてもこれは探偵の仕事じゃないと思う」
「人のプライベートに干渉していいの」
「夢見さん、それが探偵じゃない。人のプライベートにズケズケと土足で踏み込む」
「でも人の気持ちを変えるなんて誰にもできないよ」
「そもそも人の気持ちなんて他人にはわからないからね」
「噓をついてるかなんて誰にもわからない」
「ここで自己言及のパラドックスを持ち出すわけ」
「嘘つきパラドックスって本当にパラドックスなのかな」
「まあどうでもいいけど」
「まずは依頼どおりに依頼人の要求を相手に伝えればいいんだから」
「でも依頼人が本当に求めているのはそれから先でしょう」
「まあね」
「でもちゃんとそれについては約束は出来ないって言ってあるわけだし」
「ただ伝えるだけじゃ納得しないでしょう」
「それは彼の希望通りになるように努力はするさ」
「それを彼がどう評価するかは彼の問題で」
「ミーちゃんさあ。せっかく来た依頼なんだから」
「でも最初の依頼がこれじゃ」
「面白くない」
「やな感じがするだけ。前途多難っていうか」
「そんなにおかしな依頼かな」
「おかしいよ。パラノイアだし」
「探偵の依頼なんてそもそもまともじゃないんだよ」
「普通じゃない、普通」
「普通とまともは違うの」
「相対的か絶対的かの違いみたいな」
「タクヤ君の言うところのオーディナリーピープルの普通の依頼なのね」
夢見は立ち上がってドアのほうに向かう。
「今日は上がってもいい。疲れちゃった」
「いいよ」
「となりによって来るの」
「ちょっとね」
「待ってないから」
「おかまいなく」
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