第88話 おねショタものの導入みたいな会話をナチュラルにしないで
前回までのあらすじ! みーちゃん含む私達がつつじちゃんの弟&妹になりました!
あらすじたすからない。何もかも忘れて家で寝たい。
「……えっと。つつじさん?」
「む。ダメだよ。お姉ちゃんって呼ばないと」
「零さん。これどうにかなりませんか」
「わーいおねーちゃーん」
「なんで適応してるんだよ。本当に」
「おねーちゃんぽよんぽよんー!」
「新もやめなさい! お姉ちゃんが困ってるでしょ!」
「ふふ。みく君もやってみたい?」
「やめてください心が持たないですお姉ちゃん」
男の子はおっぱいに弱いのである。
おっぱいに強い男の子など男の子でない(暴論)
「……蓮美さん助けて」
「うふふ。お母さんって呼んでくれないのかしら?」
「子が子なら親も親だな!?」
何なのだこの天然親子は。
(養殖親子はえっちだから仕方ないね)
意味が分かりたくない。
(まあ養殖じゃなくてもこの親子はえっちだけど)
えっちなのはお前の魂だ。
「なあ、つつじさ――」
「お姉ちゃん」
「つつじさ」
「お姉ちゃん」
「……お姉ちゃん」
「はーい」
なんなのだこのお姉ちゃんは。
「一応、一応聞いておきたいんだがな? ……学校では普通に呼んで良いよな?」
「……? 当たり前でしょ」
「ああ。良かった。さすがに学校で同級生をおねえ――」
「私はもうみく君達のお姉ちゃんなんだから。いつでもお姉ちゃんって呼んで良いんだよ」
「『普通の呼び方』が『お姉ちゃん』だと思い込んでるぞこのお姉ちゃん」
やべえぞ。これじゃあ本格的につつじさんをお姉ちゃんと呼ばなければいけなくなる。
「お姉ちゃんが出来たって思えば良いだけだよ、みーちゃん。あるあるだよ」
「ないないだよ。そんな簡単にあってたまるか」
いや。きっと大丈夫だ。学校ではいつも通り呼んでと言われるはずだ。さすがに同級生男子からお姉ちゃんと呼ばれる羞恥を知らないだけだろう。大勢の前だときっと大丈夫なはずだ。
うん、大丈夫。大丈夫だと思い込もう。
◆◆◆
「みく君、ちょっとお姉ちゃんにジャージ貸してくれないかな。冷房が効きすぎてるみたいで」
「……」
「みく君? どうしたの? 何かあったならお姉ちゃんに話してごらん?」
「聞き間違えだと思い込もう」
「どうしたの? お耳が悪いの? お姉ちゃんが耳かきしてあげよっか?」
「聞き間違えだったら良かったんだがなぁ……」
どうしよう。このお姉ちゃん、
「……ええとだな、つつじさん」
「つーん」
「つつじさん?」
「つーん」
「……お姉ちゃん?」
「はーい! 何かな、みく君。みく君も寒いならお姉ちゃんが暖めてあげよっか?」
「この世界は狂っている」
「お、お姉ちゃんでも世界を正すのは難しいかな。でも、みく君が言うならお姉ちゃん頑張るからね!」
「誰かこの一人称お姉ちゃんから助けて」
零……はもうダメだ。星!
「……あれってなんかそういうフェロモンでも出てるのかね?」
「多分そんな感じだよ」
ダメっぽい。諦めてる。それなら彩夏!
「ちょっとずるいです。……ボクだって未来君のお、お姉ちゃんとか妹に」
「なってみる?」
そんな気軽に姉や妹が増えてたまるか。誘うな零。
……静。
「やっぱりおっぱいは罪……未来君のためにも削ぎ落としてあげなきゃ」
「暴力はダメだからな?」
静はやっぱりアレである。
そして大本命の咲。咲ならきっとどうにかしてくれる。
「……姉ならまあ」
「まあ?」
「ママが空いてるなら別に」
「咲さん?」
なんか怖い。え? 俺に三人目のママが出来るの? いや、蓮美さんのは冗談だろうが。
「これひょっとしなくても逃げ場ないな?」
いや。まだだ。まだ終わらんよ。
「という事で豪! へールプ!」
「お? なんだなんだ? 俺にお兄ちゃんになって欲しいのか?」
「ハゲろ」
「当たり強くねえか!?」
終わった。何もかもが。
と、そう思っていると。
顔面が乳で覆われた。
え?
顔面が乳で覆われた、
え???
「みく君は私だけの弟だよ?」
「
「もちろんお姉ちゃんはみく君と零ちゃん、あらちゃんのだから。安心してね?」
「あ、
はいじゃないが?
あれ……思ってたよりやばいな、これ。あとすんごい良い匂いする。
「あ、みく君あったかい! やっぱりジャージは良いから授業中もこうしてて良いかな?」
「
「やった! ありがと!」
良くないが? 全くもって良くないが?
と、そうしていると零がいそいそと机の下に潜り込んできた。
「じゃあ私はみーちゃんの下半身に」
「ふぁふぇろ」
「舐めろ!?」
「やめろ!」
絶対分かってて言い返してるぞ。こいつ。
「ひゃっ。ちょっとみく君、くすぐったい」
「アッッッゴメンナサイッッッ」
「……もう、みく君はいたずらっ子なんだから」
やめて。俺の初恋の記憶を刺激しないで。存在しないはずの記憶まで溢れだしちゃうから。
「おおー。みーちゃん、制服って結構丈夫なんだね」
「やめろ。つんつんするな」
顔面がおっぱいでいっぱいなのだ。男子高校生がこれを我慢出来ると思うか? いや、無理だね。
「……お前ってほんとエロ漫画の世界から出てきてるよな」
「普通の世界に生まれたかった」
「お前以外からすれば普通の世界なんだがな。……まあ。頑張れ」
ついに親友からも見捨てられてしまった。
さて。どうしよう。この状況。
「とりあえず零はそこから出ていけ」
「えー。ここ私の家にしたい。学校に居る時は」
「もう生徒指導されたくねえんだよ」
とりあえず零を戻して。
……次。
「えっと、つつ――」
「お姉ちゃん」
「……お、お姉ちゃん。ジャージ貸すから一旦離れて」
「えー? お姉ちゃんこのままが良いんだけどなぁ?」
「男の子には辛いから! 色々!」
「え!? どこか辛いの!? お姉ちゃんが摩ってあげよっか」
「おねショタものの導入みたいな会話をナチュラルにしないで」
渋々離れてくれたつつじさんにジャージを渡す。
「サイズが合うかは分からんが……まあ、大きい分には大丈夫だと思う」
「ありがと、みく君」
俺の方が背も高いし、さすがに小さいという事はないだろう。
しかし、その俺の見積もりはかなり甘かった。
つつじさんがジャージに袖を通し。ファスナーを上げ――
「……あれ?」
「おおー。私でもギリ着られるのに」
「でっっか」
「……やっぱりボクよりおっきい」
「おっぱいは敵」
「別に。私だって五年後には……」
でかい。何がとは言わないが。ファスナーが上げられないって本当にあるんだ。
「え、えへへ。ちょっと恥ずかしいところ見せちゃったね」
……こういう。天然な所が来るんだよな。
(股間に?)
心にだよ。
(どっちも下心だし同じようなもんだよ)
それは…………ノーコメントで。
そうだ。一応聞いてみたいんだが。つつじさんのこれって天然(自称)みたいな感じだったりしないか? 俺この辺よく分からんし。
(自称天然が本当に弟と妹にしたいって真面目な顔で言うと思う?)
思いません。
(一応答えとくけどガチだからね。親子共々)
そっか……そっか。
「……? どうかしたの? みく君」
「いや。ちょっと自問他答を」
「それが出来るの未来ぐらいっしょ……ひゃっ」
「どうした?」
「やっ。今頭の中で声が」
お前か。
(私だ)
そういえば咲達の中にも居るんだったな。
咲が悲鳴を上げたかと思えば押し黙り。チラチラと俺を見て顔を赤くしていた。
「おいこら。何を聞いてやがるこのムッツリギャル二号」
「む、ムッツリじゃないし」
「ちょい待ち。その一号って私じゃないよね?」
「悪かったな。お前はオープンだ。俺の前で妹を亀甲縛りに……あぶな」
学校でこの発言は危ない。いや、もう今更な気はするが。
「さすがに妹が目の前でよく亀甲縛りにされてるなんて言えないもんね」
「全部言ったな?」
もうみんなドン引きだよ。俺は何もしてないんだが。
と、その時。教室の扉の方で何かがちらちらしているのが見えた。
「日向?」
こちらを見ていたのは日向であった。俺が気づいた事に気づいて、日向がとことこと歩み寄ってくる。
そして、耳元に口を寄せてきた。
「こ、今週末。何時に待ち合わせしようかなって思って」
なーんでこんないい匂いするんだ? 本当に同じ性別なのか?
ではなく。そういえば日向と週末出かけようと話していたんだった。
「ああ。……土日どっちが良いんだ? 俺はどっちでも構わないが」
「ど、土曜日で」
「了解」
余り周りには聞かれたくないのだろうと思い、一段階声のトーンを落として話す。
「午前と午後どっちが良い? あとどこに行くんだ?」
「えっと。ちょっと行きたい所が何箇所かあるんだ。午前はダメかな?」
「全然良いぞ。待ち合わせ場所は……どこが良い?」
「駅前でどうかな?」
「分かった。時間は……十時か十一時くらいにするか」
「ちょっと準備に時間が掛かるから。十一時が良いかも」
「準備? ……まあ、分かった」
含みのある言い方をするという事は、言いたくないことでもあるのだろう。
返事を返すと、日向はぱあっと顔を輝かせた。本当におと(略)
「ありがと! じゃあ僕も次の授業行ってくるね! 楽しみにしてるから!」
「あ、ああ。俺も楽しみにしてる」
「うん! ばいばい!」
小さく手を振る日向に手を振り返して。教室に戻るのを見届ける。
「じー」
すると、多方向から凄い視線を感じた。
「……ど、どうした?」
「デート。羨ましいですね」
「い、いや。男同士だぞ?」
「でも、日向ちゃんの事。可愛いって思ってますよね」
前の席に居る彩夏の言葉に俺は目を逸らした。
「……むぅ」
彩夏は頬を膨らませる。
……そして。机に肘をつき、またじーっと俺を見てきた。
見ない。見ないぞ。おっきいのが机でむにゅっとなってる所とか。見ないぞ。
「日曜。家に泊まっていってください」
「え?」
「決まりですからね。瑠樹達も寂しがってますし」
待て。確か家って……。
「ふ、二人とシェアハウスしてるんだったよな」
「はい。一つ大きな部屋があるので、そこなら四人でも寝られますよ」
ニコリと微笑むその顔には悪意など一切ない。たすけて誰か。
すると、じーっと俺達を睨んでる人が一人。
静である。助けてくれないかな。
「……」
「静ちゃん。ここでおっけーしといたら今度は静ちゃんの家に泊まりに行きやすくなるよ」
「行ってらっしゃい! 未来君!」
「懐柔が早すぎる」
どうしよう。逃げ場が。……星達なら。
「まあ、私の家にもそのうち行かせるし。お母さん追い出して」
「……私は未来の家に泊まりに行こうかな」
「みく君が泊まりに来る! 楽しそうだね! 零ちゃん達も来てね!」
ないな。逃げ場。
断れるはずもないし。断わる理由もないし。なんなら行きたいって思っちゃってるし。
「……分かった」
そう答えると、彩夏の目が見開かれ。輝きはじめる。
「やった!」
何この子可愛い。
そして、今週の予定が埋まり……恐らく来週からの予定も埋まったのだった。
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