第79話 でこぴんでお礼を言われる俺の気持ちを考えた事はあるのか?

「みーちゃん! 露出デートの時間だよ!」

「デートの行先は刑務所だな」

「じゃあ私罪人やるからみーちゃんは看守やってね」

「誰もショートコントをやろうとは言ってないが」

「違うよ。そういうプレイだよ」

「余計言っとらんわ」

「あ、じゃああれしよ。……こっちの方に置いてたんだけど」


 そう言うや否や。零は俺の部屋にある押し入れを漁り始めた。そして。


「あ、あったあった。みーちゃんこれ」


 そう言って見せてきたのはピンク色の卵のようなかたt


「アウト! なんでそんなもんが俺の部屋にあるんだ!?」

「え? いつか使うかなって。もちろん新品だよ! という事でみーちゃん、これ付けてからデートしよ! スイッチは渡しとくね!」

「却下」

「じゃあみーちゃんに付ける!」

「あ、おい。やめろ! 脱がせようとするな!」


「まあまあ、そう硬いことは言わず。硬くするのはおち○ぽ様だけにしといて」

「最低のエロおやじが出てきてるぞ」

「百億あげるから硬くするのはおち○ぽ様にして」

「最高のエロおやじを出すな。というか金出すから最高のエロおやじって認識やべえな」

「エロおやじ×みーちゃんの援交本はよ」

「お前にしか需要が無いな」

「私にもあるよ! お兄ちゃん!」

「当たり前のように押し入れから出てくるな。新」

「出すのは子種汁だけに「いい加減にしろ」ありがとうございますっ!」

「でこぴんでお礼を言われる俺の気持ちを考えた事はあるのか?」

「んー。じゃあ次は足ピンした時に言うね」

「語感だけで選んでるだろ」

「み、みーちゃん! 股間で選ぶは卑猥だよ!」

「卑猥なのはお前の存在だよ。存在が強制猥褻罪だよ」

「私はちゃんと中身で選ぶタイプの卑猥だもん」

「お兄ちゃん! お兄ちゃんだって卑猥な体してるよ! ムラムラするよ! 体育があった日のお兄ちゃんとかドスケベだもん! あれもう犯してって言ってるよね!?」

「具体的に言うな。……待て。俺臭うのか? ちゃんと制汗剤は掛けてるんだが」

「汗臭くないけどみーちゃんの匂いが強くなるよ! えっちだよ! みーちゃん! でもなんも付けないのも興奮するよ? 汗だくで絡み合わない?」

「いいからそろそろ準備しないか?」


 関係ない話が九割を占めてしまった。


 今日は零とのデートの日である。昔はよく二人ででかけていたが、最近は無かった。


 ……なんだかんだ言って、零にはかなり世話になっているし。お給料も入ったし。


 お給料はかなりの額であった。俺の怪我の分も含めて……それはもう、かなり。


 もちろん無駄遣いするつもりは無いのだが。


 ◆◆◆


「えへへ。みーちゃんとデート」


 そんなこんなで今、俺と零は現在目的地へ向かっている最中である。


 零と腕を組んでいるので少し歩きにく……くない? え?


 少し足を速めてみると。零はピッタリとその動きに着いてくる。遅くしても同様だ。


「ふふん、みーちゃんの事が好きならその一挙手一投足の動きは読めないとね」

「愛が重い」


 ……まあ、好きにさせておくか。

「え!? 好きにしていいの!?」

「良識の範囲内でな」

「じゃあ痴漢プレイしよ! ちゃんと中まで挿入れるやつね!」

「良識の範囲外だな。というかああいうのって周りにバレるだろ」

「みーちゃんが増えて壁になればいいんだよ。複数プレイもできてお得だよ」

「俺を勝手に増やすな」

「じゃあ私が増える?」

「勝手に増えるな。……はぁ。さっさと乗るぞ」

「はーい」


 ちなみにここ、駅のホームでの会話である。周りからの視線が痛い。

 ちなみにここに子供が居れば零は割と普通の言葉を話す。精々『コウノトリさんいつ子供運んできてくれるかな』とかである。



 ……いつもと言ってる事変わらなくないか?



 そんな事を考えながらも電車へと乗る。少し距離があるので座れたら……と思っていたが、残念な事に全席埋まっていた。


 そのまま俺達は電車に揺られながら目的地へと向かう。


 さすがに声も聞かれやすいので零との会話は少ないか小声だ。


 ……その代わり。


「おい零。尻をまさぐるな」

「みーちゃんっていいおしりしてるよね」

「撫でるな。あと全く嬉しくないからやめろ」

 零にセクハラをされながら、だが。


「えー? じゃあ挿入れやすそうなおしりしてるよね?」

「何も変わっとらん。入れるな」


 と、話していると次の駅へと辿り着き……かなりの人が入ってきた。



 そして。零の隣におじさんが来た。……凄い不躾な視線を零へと送りながら。


「零」

「ん」


 零の名を呼ぶと俺のやりたい事を察したのか、手を離してくれる。俺はその手で零の肩を抱き、少しずつ場所を移動し……。壁の方まで行く。


 そして、零を壁の方に。俺は零のすぐ目の前に立った。


 人が少ない内は大丈夫なのだが。人が増えてきたら俺達はこうするのだ。痴漢防止である。……考えすぎだと言われそうだが。何かあってからでは遅い。


「……ふふ」


 そう考えていると。零が笑った。


「……なんだ?」


 そのまま零は俺に抱きついてきた。いきなりの事で俺は驚く。


「なんでもない」


 零は……嬉しそうな声でそう言った。俺は周りの視線とか、胸に当たる柔らかい感触に男の子が反応しそうになりながらも。


 零が楽しそうなら良いかと。俺も笑ったのだった。


 ◆◆◆


 何度か乗り換えをして。その目的地が段々と分かり始めた時。


 零の肌に鳥肌が立ち始めた。


「……零?」

「みーちゃん。……もしかして行きたい所って」

「ああ。もう分かるよな」


 そこのトンネルを抜けると――そこには。




「海だよ、向かっている所は」



 太陽に煌めく水平線が見えた。


 そのまま俺達は駅を降り、海へと向かう。


 零はじっと。その光景を見ていた。


「昔、約束しただろ? 海にい……きた…………」




 ……あれ? したか?


 海。あれ?



 そんな約束。していたのか?






 ……記憶に無い。だが、何故か俺は昔から。零と二人で海に行きたがっていた気がする。



「……してたよ、約束」


 零はそんな俺の疑問に答える。


「良かった、していたよな。すまない、俺はよく覚えてないんだが。昔からずっと零と海に行くんだって気持ちだけあってな」


 恐らく。かなり幼い頃に約束し、その記憶は忘れてしまったのだろう。ただ、零といつか海に行くという事だけ覚えていて。


 その時、零はふと俺を見た。その目は滲んでいて……。



 それでいて、笑っていた。


「ありがとう、みーちゃん」


 そのまま俺に飛びついて。胸に顔を埋めてきた。


「ずっと、みーちゃんと一緒に……来たかったんだ」


 その抱きしめる力は強い。……まるで、見られたくないかのように顔を隠している。


 ……まさか。いや、言葉にする事でも無いか。



 俺はただ、零の背中に手を回し。その頭を優しく撫でたのだった。


 ◆◆◆


「……ちなみにいつ頃離れてくれるんだ?」


 それから三十分。零は離れなかった。

「すーはーすーはー」

「やめろ! 嗅ぐな! 恥ずかしい!」


 やっと零は離れてくれた。その時ふと、疑問に思った言葉が口から出た。


「そういえば。零って俺の思考が読めるんだよな」

「あ、うん。そうだよ」

「……まあ、今更だからそれは良いんだが。それにしてはかなり驚いてたな。目的地が海って事も分かってたんだろ?」


 俺がそう言うと……零は首を振った。


「……読めなかった」

「そうなのか? 珍しいな。それか俺が隠そうと思ってた事は読めないとかか?」

「ううん。私の分霊も住まわせてるから基本的には無理」

「やっぱりそれチートすぎないか?」


 ……まあ、それは良いか。何にせよ……


「それなら。サプライズ成功だな」


 初めて零から一本取れたような気がして嬉しくなった。零は――



「……ぁ」


 その目から。どんどんと雫が溢れ出した。


 そのまま零はまた俺に抱きつく。



「みーちゃん」

「なんだ?」


「大好きだよ」


 心の底から。その感情を全てぶつけるような言葉を向けられた。その破壊力は凄まじいものだ。



「……ああ、俺もだ」


 前も似たような会話をしたが。あの時とは確かに何かが違うやり取り。


 傍から見ても……俺からしても、もう。ただの幼馴染とは思えなくなるくらい。


 釣り合うとかそんな事がどうでもよくなってしまうくらいには魅力的で。



 離したくない。と。そう思ってしまった。


「私はね、みーちゃん」


 涙混じりに零が俺を呼んだ。


「みーちゃんが幸せなのが一番幸せなんだ。星ちゃん達が傍に居ようが……私は幸せなの。なんでか分かる?」

「……分からないな」

「みーちゃんは何があっても私を『一番』好きだから。それだけで私は一番幸せだし、星ちゃん達が居て、みーちゃんがもっと幸せならそれで良い。……ううん、それが良い」


 その言葉に。俺は目を見開く。


「……読んだのか?」

「ん。少しだけ」


 零は言葉を続ける。


「確かに独占欲はゼロじゃない、……ううん。確かに彩夏ちゃんが引っ越してきた時はちょっと焦った。みーちゃんが取られるんじゃないかって。でも、今はそうは思わないから」


 そのまま零が少し離れ……まだはらはらと涙を流しながらも。俺の頬に手で触れ……じっと、見た。


「今のみーちゃんは。誰か一人を選んだら傷つく。絶対に。……それに、傷つく人も増えるから」


 そのまま零は俺の頬を優しく撫でる。


「最終的にはみーちゃんが決める事だよ。……でも、私は。傷つくみーちゃんは見たくないな。……立ち直るまで……ううん。永遠に支える覚悟はあるけど」


 その目は泣きながらも、力強く。


「法律とか、倫理とか、そんなのどうでもいい。みーちゃんが幸せなら、そんなもの。要らない」

「……それは言い過ぎじゃないか?」

「言い過ぎじゃない。私はみーちゃんさえ居れば他はどうでもいい。……それに、倫理に関しては私だけじゃなくて星ちゃん達だってそう。皆、みーちゃんのハーレムに居たいって思ってるから」


 零の瞳は俺を捉えて逃がさない。決して。


「不安な事があるなら全部私に言って欲しい。力になるし……絶対、解決するから」



 その言葉に……俺は笑った。


「零は強いな」

「みーちゃんが居るから強くなれるんだよ」

「……ああ、そうか。そうだな」


 そのまま俺も――零を見た。


「なあ、零」

「なあに? みーちゃん」


 そして。零を見て、俺は一度。深呼吸をした。


「俺は……まだ自分でも上手く飲み込めていない。それに、モヤモヤする事は沢山あるんだが。それでも――」


 拳を握りながらも。



「零を……新を。星を。綾夏を。静を。咲を。瑠樹を。沙良を……幸せにしたい」


 自分の中にある『それはただのクズだ』とか、『現実を見ろ』とかの声を無視しながら。そう言ったのだった。




 ああ、言ってしまった。これで良かったのだろうか。


 ……否。男だろ、未来。一度吐いた唾を飲み込むようなみっともない真似はするな。


 そんな俺に――零は笑顔を向けてくれた。


「うん! みーちゃんなら出来るよ、絶対に」

 零がそう言って。嬉しそうに――本当に嬉しそうに笑う。嫌とか、そんな悪感情は一切見られない。



「……だが。その、だからと言っていきなり関係が進むのは……良くない気がするんだ。まだ、俺は割り切れていない。……流れでそういう事をするのは将来俺が後悔する。だから――まだ、待って欲しい。すまない」

「ううん、いいんだよ」


 そんな俺の情けない言葉にも零はにこりと笑い返してくれる。


「みーちゃんはちゃんと変わってるもん。……だって。もう『釣り合う』とかそんな事は考えてないでしょ?」

「……そうだな」

「ん。だから大丈夫。一回良い方向に向かったら後はそこを進むだけ。……私がちゃんと導くからね。悪い方向に行かないように」

「ああ。……少し長くなるかもしれないが」

「ん、大丈夫。みーちゃんと一緒に居られるなら待てるよ。どれだけ長くても」


 そこでほんの少しだけ……零の表情が陰った。


「一緒に居られないよりはそっちの方がずっと良いもん」

「……零?」

「ううん。なんでもない」


 そして。零は俺と手を繋いだ。




「ん。今日はまだまだ長いんだから。一緒に遊ぼ」

「ああ。……まだまだ零と行きたい所があるんだ」


 零と俺は歩き始める。……零の言う通り。まだまだ時間はあるのだから。

 めいっぱい楽しもう。


 ◆◆◆


「あ! みーちゃんみーちゃん! 青姦スポットがあるよ!」

「切り替え凄まじいなおい」

 ビーチを二人で散策していると零がいきなりそんな事を言う。


「ちなみにみーちゃんは海洋生物オ○ニーはイける口?」

「飲めるお酒を聞く感覚でえげつない性癖を聞くな。無理だわ」

「えー? タコ脚に絡まれるみーちゃんも見たかったのに」

「需要がねえ」

「あるよ! 私なら十万で買うよ!」

「もっと有意義な事に金を使え」


 一応シーズンが始まったばかりなので人もそれなりに居る。ここはあまり居ないのだが。


 ……しかし、そうだな。


「……零があんなに喜んでくれるなら、最初の海はもっと綺麗な所に行った方が良かったか」

「私はみーちゃんと一緒に来られたから。満足だよ」

 そう零は言ってくれるが。……しかし。


「沖縄とか行ってみたいな」


 俺はつい、そう言ってしまった。


「……? 行く?」

「いやそんなコンビニみたいな感覚で……」


 そこで俺は改めて思い出した。


「離島だけど。別荘あるよ?」


 こいつ、超絶お嬢様なのだと。


「……待て。お前そういうのは嫌いじゃ無かったか?」

「んー。権威を振りかざすのは好きじゃないけど。使えるものは使いたいし? ほら、それで言ったらえっちな水着いっぱいとかゴム百個とか買ってるわけだし」

「……ちょっと納得してしまうな」

「でしょ? ……プライベートジェットはさすがに持って……あれ? どうなんだろ。お父さんに聞いた事なかった」

「頭バグりそう」


 これが金持ちか。


「しかし。それなら沖縄の海に行った事とか無かったのか?」

「初めてはみーちゃんとって決めてたから」

「……そうか」


 零はそう言ってにこりと笑う。


「保護者は……お母さん暇だしお母さん連れていけばいっか。みーちゃんにも会いたがってたし」

「うっ……」

「どうしたの? みーちゃん。出るの? 出すなら口に」

「出さねえよ。人の母親を聞いて出すとか最低のパブロフの犬だよ」


 零の母親……というか両親は一言で言うと変人である。零ほどでは無いが。


 ……まあ、良いか。


「夏休みもあるし。星ちゃん達にも聞いとくね」

「……ああ、俺も母さん達に聞いておこう」

 そうして。何故か沖縄旅行が決まったのだった。


 ◆◆◆


「美味しいか?」

「ん! 美味しい!」


 お昼は近場にあったそこそこ有名な海鮮丼のお店に入った。零は昔から海鮮が好きなのだ。


「これにみーちゃんのみーちゃん汁をかけたらイカまで楽しめるって事……?」

「いくら個室だからとそんな事を言うんじゃない」



 ……ちなみに。零はお嬢様ではあるものの、食べ物まで最高級食品しか食べないとかではない。


「ん〜!」

 ……実際に食べてる所を見ればそれは分かりやすい。元々零は感情が面に出やすいからな。



 その美味しそうに食べる姿はこちらも見ていて心地いい。


「……ん、はい、みーちゃんもあーん」

「ん? …………ああ」


 もう今更それくらいで動じたりはしない。一口それを貰う。


「ふふふ。お互いの体液の交換。これはもう実質セック「ありえません」」

「……だけど美味いな。やっぱりここは。……ほら、零も」

 ちなみに俺が頼んだのは刺身の盛り合わせである。

 その中でも零の好物のサーモンをお箸で渡す。……すると、零はぱくりとかぶりついて。


 ちゅるちゅるとその端をしゃぶりはじめた。


「ちょ、零」


 その舌が艶めかしく。箸の先端を撫で、唇で食まれ。


 ……どうにかその箸を取ると。


「ん、みーちゃんの味がした。ご馳走様」

「……普通の箸ならともかく。割り箸だぞ」

「実はちょっと辛かった」

「馬鹿な事をするから……。ほら、もう一つやるよ」

「わーい」


 そうして零にもう一つサーモンを渡す。


「おいしー! ……でもやっぱりしゃぶるのはみーちゃんに限るね」

「俺をしゃぶるな」

「じゃあしゃぶしゃぶする」

「猟奇的方向性に持っていけという意味では無い」


 零との時間は心地良い。……変に誘惑されている時は心休まらないが。


「え? 今誘われた?」

「誘ってねえ」

「魚コキする?」

「新しい概念を……いや、無くはないのか。人間って業が深いしな」

「あれ? でもわたしの知ってる画像サイトだと無かったはずだよ?」

「よし、じゃあ改めて言おう。新しい概念を生み出すな」


 まあ……いつも通りと言えばいつも通りか。


 そうして、俺達はお昼を食べ終えたのだった。


 ◆◆◆


 それから。零の服を買いに行ったり……割と普通にデートらしいデートを過ごした。


「なあ、零。楽しんでくれたか?」

「うん! すっごい楽しかった!」

「そうか。良かった」


 俺も楽しかったし。それなら成功と言っても良いだろい


「ね、みーちゃん」

「なんだ?」


 帰り道を歩きながら。零がふと話しかけてきた。


 手をぎゅっと握り……じっと、俺を見て。











「私達、前世でも一緒だった、って言ったら信じる?」



 唐突に。そんな事を言ってきた。



「今更何を言うんだ。お前が信じて欲しいなら信じるぞ」


 というかこちとら心に零の分身飼ってるんだぞ。


「いつもは茶化してるような言い方だからああなってるだけだ。零が本気で信じて欲しいと言うなら……そうだな。明日地球が滅ぶと言われても信じるぞ」



 俺がそう言うと。……零は俺にもたれかかってきた。


「……そっか」

「ああ」


 零は顔を見せないように。俯きながら、そっと背中に手を伸ばしてきた。


 俺もその背中を引き寄せ……その頭に手を置いたのだった。



 ◆◆◆◆◆


 ああ、ダメだ。今日はダメな日だ。


 私がみーちゃんを支えるって。もう弱い所は見せないって決めたのに……甘えてしまう。



 今日はみーちゃんが……あの頃のみーちゃんと重なってしまったから。



 もう、絶対に失わない。失いたくない。


 思わず抱きしめる力が強くなっても。彼はただ優しく頭を撫でてくれる。……これもずっと、変わらない。


 ……早く。終わらないといけない。ずっと甘えてばかりだと、あの時のようになってしまう。


 それは絶対に嫌だ。


 いくら平和なこの世界でも。危険はたくさんあるのだから。








 ――目を瞑ると。思い出してしまう。



 ずっと夢だと思っていた。私の――







 前世を。

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