第20話 一章最終話 おっぱいに強い男子高校生なんていなおっぱいよ!?

「ん。みーちゃん。ちょっと写真撮りたいからこっち座って」

「ん……? ああ」


 零にスマホを握らされ、横向きで撮るよう頼まれる。


 俺は石段の上に座ると……零がしゃがみこんだ。


 そして……零は俺の足を開かせ、片手で自分の両目を隠した。


「……何を撮らせようとしてるんだ?」

「? えっちな写真だけど」

「撮る訳ねえだろうが!」

 スマホを投げたくなる衝動を抑え、俺はため息を吐く。


 アンガーマネジメントだ。五秒か六秒だったか?耐えろ。俺。


「え!? でも! 差分とかも撮りたい! みーちゃんのみーちゃんからみーちゃん汁が出てるところとか!」

「OK G〇ogle。アンガーマネジメント 連続で来る 零の場合 対処法」

『諦めてください』

「クソ! 全人口の知識を駆使しても無理なのか!」

「だからどうしてそのスマホは対応してるんですかね!?」


 頬を膨らませる零へとそう怒り、スマホを返す。


「むぅ……じゃあもうついでにネタばらししとくね」

「おい。すっごく不穏なんだが」

「自分のスマホの写真、確認してみて」


 嫌な予感を募らせながらも、俺は自分のスマホを確認する。


 ……ほとんど写真なんて撮らないはずだが。


 しかし、俺が写真を開いた瞬間だ。


 画面が肌色に染まっていた。いや、正確には肌色や桃色だが。



「何してんの? お前。職質されたら一発アウトだが? というかいつの間に撮ったんだよ」


 というか動画まであるぞ。絶対見ないが。


「ふふ。みーちゃんにバレないでどれだけえっちな画像とか動画撮れるかってチャレンジしてたの」

「やっぱり君エロ漫画の世界に居ない? 一般小説の界隈に居るべき存在じゃないよ?」

「常に新しいヒロインを目指してるので」

「うん。居て欲しくない意味での新しいヒロインだね。ゲテモノヒロインとも言うね」


 とりあえず全部消そう。選択を選び、下からどんどんスクロールしていく。


「本当にどれだけ撮ってんの!? 全然無くならないんだけど!」

「えへへ……撮ってたら盛り上がっちゃって」

「盛り上がんなよ!? 人の部屋で」

「色んなシチュ試したいなって。みーちゃんの性癖も開拓したかったから」

「ねえ。三百枚超えたんだけど」

「確認しないみーちゃんが悪い」

「撮る方がもっと悪いからね!」


 というかまじでこんなの見られたら捕まるぞ。ガチで。なんで気がついたら無修正の画像と動画で溢れかえってんだ。


 とりあえず全て削除し、ゴミ箱からも消す。


「まあ、私の方にも画像とか残してるから。欲しくなったら言ってね」

「消せ。お前スマホ落としたら詰むだろうが」

「だいじょぶ。USBに入れて家に置いてるから」

「何も大丈夫じゃねえな」


 思わずため息を吐くも、零はむっとした顔をしていた。


「あーちゃんには好評だったのに」

「妹になんてもん見せてんの? え? 十八禁とかそんなレベルじゃ無かったよ? あれ」

「あーちゃんもそのうちやるって言ってたから楽しみにしててね」

「そろそろ心臓ぶっ壊れるわ。ストレスで」

「その時は私のと半分こだね。ふふ。私の心臓の半分がみーちゃんに……これって実質セッ〇スでは?」

「情報量で頭パンクしかけたよ?そんな医療技術もねえし、何をどう考えたらそんな結論に至るんだよ。ヤンデレも真っ青だよ」

「大丈夫。下手なヤンデレには負けない自信がある」

「上手なヤンデレが出てくるフラグ建ったね! 俺が物語の主人公なら三章辺りで出てきそうなフラグだな!」

「未来君のツッコミやけに具体的じゃない? 大丈夫? 誰かに言わされてない?」

「まさか。そんな事無いだろ」


 乾いた笑いを漏らしながらも零を押しのける。やめろ。口をとがらせて手のひらにキスしてくるな。


「み、未来さん! ボクとも撮ってください!」

「ああ、もちろん良いむぐっ」


 目の前に推しの乳が。ひょっとして俺死ぬ?


 それに呆気に取られてるとパシャリと写真の音がした。


「え、えへへ……これでイン〇タに上げれる「俺が百万人から逃げないといけなくなるからやめよっか」」

「ま、まさか……1000000P!? み、みーちゃん……さすがに死んじゃうよ?」

「桁を四桁減らしても十分死ねるなおい」

「うぅ……でもボクも匂わせとかやってみたいです」

「分かる? それ匂わせじゃないの。香水の原液ぶちまけてるんだよ。何ヶ月も取れない匂い付いちゃうよ?」

「もー、彩夏ちゃん。匂わせってのはこうやるんだよ? 未来君、手を前に出して。こう、手のひらを前に出す感じで」


 星に言われたように手を出す。すると……星はその手に指を絡ませた。


「それで、未来君。そっちから撮ってみて」

「……」

 とりあえず言われた通りにやる。やるのだが。



「どう? これで完成。匂わせだよ」

「香水を鼻に直接ふりかけてんな。それはもう言ってるも同然だろうが」

「匂わせ……みーちゃんのみーちゃん汁を顔中にかける! それで写真を撮る!」

「それは匂わせじゃなくて臭わせだな。そんなん上げたら男子倒れるって」


 零にそう言いながらもこっそり彩夏の乳を楽しんでしまう……くっ。殺せ!


「みーちゃんの脳内くっころ処女奪われた……」

「そろそろ頭にアルミホイル巻いた方がいいかな」

「未来君。それは危ないから。色々と」

「や、やっぱり未来さんは色仕掛けの方が……? ぼ、ボク。頑張ります」

「ん。四人で頑張ってみーちゃんを落とそう。5Pで一緒に子供産もうね」

「ツッコミどころしか無いが。法に触れる事しか無いな。とりあえず近親相姦はやめよ?」

「という事はあーちゃんはおしりですれば解決って事だね」

「ドヤ顔すんな。上手くねえから。解決とケツを掛けるっておっさんかよ。それとなんも解決してないから」

「ケツにかける!? それとも書ける!? どっち! 正の字!?」

「とりあえず黙ってろ。その口縫い付けるぞ」

「み、みーちゃんが望むなら……でも、最期まで面倒は見てよ……ね?」

「重い! 冗談を冗談だと見抜け!」

「ってことは黙らなくて良いって事だよね」

「星、やれ」

「いえすさー!」


 星に零を止めてもらいながら、ため息を吐く。


「……彩夏。悪いが、俺の写る写真を上げるのはやめておいてくれ。一ファンとしてそれは心苦しい」


 と、そう言えば。彩夏はハッとした。


「ご、ごめんなさい」


 本当に心苦しい。だが、とりあえず言っておかねばならない。


「その代わり……と言っては何だが。SNSに上げない写真ならいくらでも撮っていいぞ」

「ふぁい! ふぃーふぁんのふふぁあふぁふぃんがふぉふぃふぁい!」

「さすがの俺でも聞き取れなかったな。ろくでもない事を言ってるのは分かるが」

「ふぁふぇしふぃふぃいふぇふぃふぉ?」

「試しに聞いてみよ? ……か。まあ、そうだな。聞いてみない事には分からんか。星」

「はーい」

 星が零の口から手を離した。


「それで何を言ったんだ?」

「みーちゃんのくぱあ写真が撮りたい!」

「星」

「はーい」

ふぁんふぇなんで!?」

「という事で彩夏。もう時間は少ないが……撮りたい事とか無いか?」


 と、聞けば。彩夏は少し顔を赤らめながら……言った。


「じゃ、じゃあ……さっき星ちゃんと撮ってた写真……撮りたいです。でも、匂わせとかじゃなくて、星ちゃんに横から撮ってもらう感じで」

「お、おぉ……分かった」

 零との温度差で風邪ひきそうだ。彩夏が俺の手に指を絡ませ……顔を近づけてくる。



 いや待て。やばい。彩夏が美少女アイドル過ぎてやばい(語彙力の欠如)

 いや、さっき星にやられた時も心臓やばかったんだが。これはやばい(やばい)


 というか……え? 可愛すぎない? 照れ顔の彩夏可愛すぎない?




 パシャリと写真を撮る音が聞こえた。


「はっ……今俺の内なるオタクが飛び出した気がする」

「ふふ……可愛かったです」


 やめて! 心臓持たないから!


「という事で口直しの時間です。みーちゃん。粘膜握手しよ」

「くそ、ちょっと嬉しく思ってる自分が情けない。というか新しい言葉を作り出すんじゃないよ」

「じゃあ子供できる匂わせしよ。ハメ〇りしよ」

「もう匂わせは良いだろうが! というかいきなりドストレート投げてくんじゃねえ!」


 軽口で心が落ち着いてしまうのが本当にやだ。くそ、嫌って言いたいのに。


 ◆◆◆


「今お兄ちゃんがえっちな目に遭ってる気配がした!『口では嫌って言ってるのに体と心は正直だな』って言いたい!」

「新ちゃん!? 授業中に何言い出してるの!?」


 ◆◆◆


「ハックション」

「どうしたの? みーちゃん、風邪? 私に伝染す? ちゅーする? べろちゅーする?」

「しねえよ。飛躍しすぎだ……ああ、彩夏、ありがとう」


 彩夏がポケットティッシュを差し出してくれたので受け取る。


「あ、それとボク、何枚かまた皆で写真撮りたいです!」


 と、彩夏が言ってきた。当然俺達は頷き……写真を撮り始めたのだが。



「ク、クソ……オデ、ユルセネエヨ……」

「落ち着け! SNSでnectarのアンチに永遠に噛み付いていた山田!」

 一番やっちゃいけねえ事やってんじゃねえか山田。それファンの民度落とすだけだぞ。無視して通報ブロ安定だ。



 いや、おっぱい。まあ俺も立場が逆ならなかなかしんどいとはおっぱい思うが。


 何せ、今俺のおっぱい。視界にはおっぱいおっぱいしか映ってないのだからおっぱい。


「……やっぱりみーちゃんはおっぱいに弱い?」

「おっぱいに強い男子高校生なんていなおっぱいよ!?」

「未来君。語尾やばくなってるから」


 仕方ないだろう。視界がおっぱいおぶおっぱいなのだから。


 こうなったのにも訳がある。まず最初に零が抱きつき、星が抱きつき、彩夏が抱きつき……


「何の理由もねえなぁ! これ!」

「まあまあ。落ち着いておっぱいしといて」

「知ってる? おっぱいって名詞だおっぱいよ? むぐっ」

「おっぱいおっぱいうるさいよ、未来君。さすがに私も恥ずかしいんだから」

「むぐ!(ならやらないでください!)」


 そんなこんなで事故がありながらも、段々と時間が迫ってきた。


「最後は……普通に四人で撮りたいです。未来さんを中心に」

「ん。おっけー」

「あ、じゃあ私後ろから……でもどうしよっか。撮る人」

「凄いな。めちゃくちゃ偶然豪がこっち向かって歩いてきてるぞ」


 少し遠いが、豪が見えた。豪を呼ぶと、駆け足でこちらへ来た。


「悪いな、豪。写真を撮って欲しい。お前にしか頼めん」

「ははっ。そりゃ他の男子がやったらスマホ割れるもんな。良いぜ。ハーレム野郎」

「すっごい否定したい。否定したいけど否定したら俺の中で大切なものが崩れる気がするからしないでおこう」


 という事で、豪に俺のスマホを渡す。


 俺が座り、横に零と彩夏が。そして、俺の後ろで星が膝立ちになった。



「撮るぞー! はい、チーズ」


 星が俺の肩へ手を置き、零と彩夏が俺の肩にもたれかかるようにしてきた。



 パシャリと写真を撮られる。


「……本当にこいつ、よく生きてんな。普通殺されてるぞ」

「俺も思う」

「あ、相葉君。もう一枚お願いしても良いかな?」

「分かった。そんじゃ早速撮るぞ」


 豪がまたスマホを構えた。


「それじゃ、はい、チー――」


 頭に柔らかい重みが。星が胸を乗せてきたのだとすぐに分かった。


 そして、両腕に柔らかく暖かい温もりが。零と彩夏が抱きついてきたのだ。



「――ズ」

 そのままパシャリと。写真を撮られたのだった。



 この二枚の写真はやがて……俺の机の上に写真立てに置かれるのだが、まだ俺はその事を知らない。


 ◆◆◆



「あー、楽しかった」

「今までで一番楽しい遠足でした」

「楽しかったね、みーちゃん」

「楽しかったのは否定しないが。寝るふりをしながら膝に倒れつつ脱がそうとするんじゃない。俺が一人で奇声を上げるやばい奴みたいになってたぞ」

「今更今更。観念してみーちゃん出しな?」

「大丈夫? 日本語ぐちゃぐちゃだぞ」


 バスから降り、そんな会話をしながらも帰るために歩き始める。



 なんやかんやあったが……同じクラスの人達からは少しではあるが、認められているような気がしなくも無くなってきた。


 スマホを使えなくなりそうだった原因が俺達のクラスだった事。そして、俺がどうにかしようと頑張った事を、担任が帰りのバスで報告してくれたのだ。そこから、皆が俺を見る目がまた少し柔らかくなった。

 だが俺は忘れないぞ。零に襲われてる俺を見殺しにしたのは。


「それじゃ、帰るか」

「帰ろ、みーちゃん家に」

「行きます!」

「だね。行こっか」

「当たり前のように着いてこようとするな。……いや、良いんだが」


 そうして、俺の日常と言う名の非日常が帰ってくるのだ。ゴールデンウィーク明けの次の試験では……結果を出したいな。



 少しでも、零達に追いつけるよう。






 だが――


「見つけた! 蒼音未来! 俺達とハーレム勝負をしろ!」


 まだ、非日常の中の非日常は続きそうだった。



「人違いです。お引き取り下さい」



 第二章 ハーレム対決へ続く。










 ―――――――――――――――――――――――


 あとがきのようなもの

 作者の言葉や、お願いなど苦手な方。終わった余韻を楽しみたい方は読むのはお控え下さい。








 まず最初に。ここまで読んでくれてありがとうございます。読者様方のお陰でジャンル別の週間ランキングに載ったり(六月二十四日現在九位)、もう少しでジャンル別月間ランキングの十位以内に入ったり出来そうです(六月二十四日現在十一位)

 完全にノリと勢いで書いてる作品だったので、一章はあまり起伏の無い話になってしまったのは申し訳なく思ってます。二章からは色々とイベントを起こしながら進んでいくのでもっと面白く、狂った話になっていくと思います。というかします。


 そして、作者からの最初で最後のお願いです。まだ☆を付けてない方や、ブックマークがまただよという方は是非して欲しいです。めちゃくちゃモチベーションに繋がります。


 今までにやってくれたよという方や、コメントや♡などで応援してくれた方は本当にありがとうございます。もちろん、読んでいただけるだけでも感謝の気持ちしか無いのですが。


 これからも狂った作品を作るためによろしくお願いします!


 そして、これからもみーちゃん達のお話をお楽しみください!



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