第19話 未零は青空の下で皆の目の前でお父さんとお母さんがセッ〇スして産まれたんだよ

「という事でみーちゃん。優勝のご褒美。処女貫通式しよ」

「初っ端から飛ばしすぎてない? 大丈夫?」

「だって……前回はあんまりみーちゃん好き好き攻撃出来なかったから」

「前回ってなんだよ……というかその世界一頭悪い攻撃やめろ」

「むぅ……じゃあみーたんの処女貫通式しよ」

「名前の呼び方の頭の悪さが極まってきたな。というか男に処女はねえんだよ」

「大丈夫。優しくしてあげるから」

「大丈夫なのはお前だけであって俺は大丈夫じゃねえんだよ」

「……じゃあ仕方ない」


 と、流れるように俺は押し倒された。


「正気? 真昼間だよ? 散歩なうだったからここ外だよ? 俺の部屋じゃないよ?」

「大丈夫。雲の数数えてたらすぐ終わるよ」

「雲が真っ青になるぐらいの快晴なんだわ。目悪くするだろ」

「……はっ! 目隠しプレイ!?」

「とりあえず安直なプレイに結びつけようとするんじゃねえ。つーか先生仕事しろ。こいつ止めろ」

「じゃあ目潰しプレイだね」

「誰も特殊なプレイにしろとは言ってねえが?」

「まあまあ。野外で体育着プレイってのもたまには良いじゃない?」

「たまにはってなんだよ。初めてでそんなプレイは拗らせるわ。心を」

「メンヘラみーちゃん……! みーちゃんの血ってどんな味するんだろうね」

「助けて! 星! こいつをどうにかしてくれ!」

「ふふ。星ちゃん達は今着替えに行ってるんだよ」

「あれ? もしかしなくてもこれってピンチ?」

ピンチチャンスだよ?」

「へーるぷ! 豪!」

「ふふ。残念。相葉君はさっきトイレに行きました」

「あれ? 史上最大のピンチなのでは?」

「未零ちゃんが産まれたら言おうね。『未零は青空の下で皆の目の前でお父さんとお母さんがセッ〇スして産まれたんだよ』って」

「子供の気持ち考えて? 三歳でグレるよ?」

「ふふ。グレたらその時は二人でいっぱい悩もっか」

「幸せな悩みみたいに言ってるけどマッチポンプだから。子供グレさせたのお前だからね?」

「楽しみだね」

「あ、ダメだ。話聞いてねえ」

「ん? 話って? 男の子が生まれたり双子が産まれたら名前どうするかって話?」

「ねえ。会話って人類の叡智の塊なんだよ? 会話しよ? じゃないとただの獣だよ?」

「みーちゃんはバックの方が良いの?」

「そうじゃねえ!」



 というかまじで離れねえぞ。誰か先生は……


「ふ、不純異性交遊が目の前で……ど、どうすれば……」



 って担任いるじゃねえか!


「せ、せんせ、たすけ」

「私にはどうしようも出来ないです!」

「ちょ、にげ、逃げんな! 責任から! この学校の先生どうなってんだよ!」

「邪魔者もいなくなったね」

「担任を邪魔者扱いすんな。てかそろそろガチで怒られるぞ」

「むぅ……しょうがない。他の先生呼びに行ったみたいだし。怒られるのもめんどくさいし」

「反省する気ゼロかよ」


 零が立ち上がったので俺も立ち上がる。


「それじゃ、私も着替えてくるね」

「さっさと行ってこい。自由時間が無くなるぞ」


 ……そして、少し離れた場所にあるトイレへ向かった零へ手を振り、俺はジャケットを羽織るのだった。


 ◆◆◆


「はぁ……」

 今日何度目かのため息が漏れた。


「……新ちゃん。今日ため息多くない? 何かあったの? も、もしかして好きな人でも」

「お兄ちゃんの遠足にこっそりついて行こうとしたら怒られたんだよね」

「そうだった。この子ブラコンも真っ青なブラコンだった。なんで忘れてたんだろ」

「もー。早いところ既成事実作りたいのに」

「……兄妹だよね? 血の繋がった」

「私は信じてないもん。多分お兄ちゃんと血は繋がってないよ。そう信じれば健康な子供は産まれてくるよ」

「やばい。新ちゃんのブラコンが極まって……あれ、今更か」


 友達の言葉にため息を吐いた。


「あーあ、早くお兄ちゃんと――して――した後に――したいな」

「ねえ。私の知らない言葉出てきたんだけど。どこで知ったの? その言葉」

「え? エロ同人誌だけど」

「当たり前のように言わないでよ。ていうかシックス……? なんちゃらって何?」

「ああ、それはね……」


 お兄ちゃんに小さい頃教えてもらったのだ。

『友達に教えてって言われたら優しく教えてあげるんだぞ』

 って。

 ふふふ。これでお兄ちゃんにまた褒められるはずだ。


 ◆◆◆


「ハックシュン!」

「大丈夫? 未来君。風邪ひいた?」

「いや、多分大丈夫。鼻が少しムズムズしただけだ」

「あ、ボクポケットティッシュ持ってますよ。どうぞ!」

「ああ、ありがとう」


 彩夏からティッシュを貰って鼻をかみながら零を待つ。



「……それにしても遅いな。零」

「そうですね……」


 何故か胸がザワついた。


「……な、なあ。一つ聞きたいが。零が来た時、トイレ周辺って人居たよな」

「……? 居たけど。それがどうかした?」

「なら大丈夫……か」

「あ、でも人いっぱいでしたよね。確か、もう一つ修学旅行に来てる高校があったとか。もう一つの大きな体育館使ってるんでしたっけ?」



 その言葉に。俺は冷や汗を一つ垂らした。


「……まずいかもしれない」

「え? どうかしたの?」

「実はな……零、方向音痴なんだよ。重度の」


 と……俺が言えば、二人はきょとんとした顔をした。


「本っ当に慣れた道じゃない限り迷う。アイツは。余裕で屋内でも迷う。……しかも、トイレは少し離れた場所だったよな。更衣室は使えなかったらしいし。公園に挟まれてる所だったしな。だから……多分、人が多く戻る方へ行くはずなんだよ」


 俺は一度ため息を吐いた。


「彩夏。ちょっとジャケットを持っててくれ。寒かったら着てても良いぞ」


 俺は彩夏へとジャケットを渡した。……そして、俺は走り出す。


「あ、ちょっと、未来君。先生とかに言わなくて良いの!?」

「すぐ連れ戻してくるから大丈夫だ! その辺で待っててくれ!」



 まあ、問題に巻き込まれていても零なら大丈夫だとは思うが。



 ……怪我はしないでくれよ。零。


 ◆◆◆


「……迷った。ここどこだろ」

 同じ体育館だけど。知らない顔が多い。というか知らない顔しかない。


 うーん……迷うのは別に良いんだけど。みーちゃん成分が足りなくなってきた。禁断症状が出そう。今日はみーちゃんの使用済み下着持ってきたっけ……?



 鞄の中を探っていると……私に近づいてくる影があった。


「君、どうかしたの? うちの学校じゃ無いみたいだけど」


 あー……なんかイケメンっぽい人が来た。みーちゃんの方がずっともっとかっこいいけど。


 ……まあ。道ぐらいは聞いておこうかな。


「……あの。一つ聞きたい事が……あの?」

「あ、ああ。ごめん。つい見蕩れていたよ。君が綺麗でね」

「え、えっと……?」


 うわぁ……なんか良くない気がする。なんか周りから凄い見られてるし。


「あー! またきーちゃんがハーレム増やそうとしてる!」


 ……って、なんか聞こえてきたし。


「こらこら、真琴。ダメだよ。そんな事言ったら」

「ひ、飛輝ひゅうき君。これ以上女の子が増えるのはあんまりかなーって思ったり」

「てかガチ美人じゃん。やばくね? ヒュウっちの正妻候補じゃん」


 あー。これ絶対話しかける人間違えた。いや、あっちから話しかけてきたんだけど。


 ……とりあえず、それとなく逃げよう。うん。みーちゃんならきっと私を見つけてくれるはずだし。


「じ、じゃあ、私はこの辺で「ちょっと待って」」


 呼び止められた。……どうしよう。正直めんどくさい。


 ……でも、無視したらもっとめんどくさい事になりそう。


「……なに?」

「そ、その……今俺達バレーボールしてるんだけど。良かったら参加していかないかい?」

「結構です。早く戻らないといけないので」


 こういうのはキッパリ断る。処世術の一つだ。……ただ一つ、問題点はあるけど。


「ちょっとちょっとー! 折角ヒュウっちが誘ってくれたのにその断り方は無いんじゃない?」


 こういうのが出てくる事だ。


 思わずため息を吐きそうになった。その時だ。



「零! こんな所に居たのか」

「……! みーちゃん!」


 みーちゃんが来た。わたしは振り向きざまに抱きつく。


「おい。見知らぬ人ばかりの土地で抱きつくな」

 みーちゃんの背中を指で何度か叩く。



 ――話 合わせて


 ……と。

 昔、みーちゃんとモールス信号を覚えたのだ。二人だけの秘密の合図とかに憧れてたから。


 みーちゃんはため息を吐いた。


「か、彼氏が居たんだね」

「うん。自慢の彼氏」

「……悪いな。零が世話になった。ほら、自由時間無くなるぞ。早く行こう」


 私はみーちゃんに頷いて、そこからやっと抜け出せた。


 ……ただ。向こうの人の中で一人。ギャルっぽい人が私達をずっと見てた気がした。


 ◆◆◆


「ふー。ありがと、みーちゃん。お礼は私のおっぱいで良い?」

「良くねえ。つか要らねえ」

「……みーちゃんはおしり派だった?」

「そうじゃねえ……」


 今日何度目かのため息を吐いていると……零が抱きついてきた。


「ふふ。でもありがと、みーちゃん。みーちゃんが来るって信じてたよ」

「……その言葉だけなら正直ぐっと来るんだがな?台無しなんだよ。股間摩るから」

「ついでにこっちも開発しよう」

「乳首はやめろ! 新しい性感帯を開発しようとするな!」

「ふふふ。もう耳はよわよわだもんね。みーちゃん」

「や、やめ。やめろ! まだ無垢だった小学生時代に開発された話を持ち出してくるな!」

 耳元に口を近づけようとする零の頭を鷲掴みにしていると……


「あ、帰ってきました!」

「ちゃんと連れて帰ってきたんだね」


 彩夏達が来た。


「……! 彩夏ちゃんずるい! みーちゃんのジャケット着てる!」

「え、えへへ……未来さんに着て良いって言われたので」


 零が彩夏へとそう言って……拗ねたような顔をした。


「良いもん。私にはみーちゃんの下着があるし」

「え? なんで?」

「……? みーちゃん成分が枯渇した時用のだよ」

「なに当たり前のように言って……っておい。ガチであるのかよ」

「もちろん使用済みのだよ?」

「おいこら。何当たり前のように被ろうとしてるんだよ。絵面やべえぞ」


 俺のトランクスを被ろうとする零の腕を掴んで止める。


「というかなんで俺の使用済みを持ってるんだよ」

「あーちゃんに頼んだ。みーちゃんがお風呂入ってる隙にこっそり」

「やってる事窃盗だからね!? 訴えたら勝てるよ!?」

「じゃあ等価交換って事で私のあげるよ。上下付きで」

「俺が普通の男子高校生なら頷いてただろうな。俺の理性舐めんな」


 どうにかトランクスを奪い返し、ポケットに突っ込む。


「……自由時間も残り三十分か。何かやりたい事はあるか?」


 どうにか話題を変えようと星と彩夏を見た。


「私! 色んな所で写真撮りたいです、皆で!」

「あ、それ良いね。さんせー!」


 彩夏の言葉に星がそう言った。俺もそれで構わないし、零も頷いていた。


 そして……俺達は景色の良さそうな所を探す事となったのだった。

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