第7話 私も怒っちゃうよ! お馬さんごっこでバコパコしちゃうよ!
「これが即落ち二コマですか」
「みーちゃんの即落ち二コマ……!? ごくり。言い値で買おう」
「売ってねーわ」
「わ、私だけに見せてくれるって事……? もう、みーちゃんったら。ツンデレさんなんだから」
「その前向きさだけは見習いてえな。前向きさだけは。もう一度言う。前向きさだけは。あと新。胸を擦り付けてくるな」
「え……もう、お兄ちゃん。こんな所で興奮しないでよ……! 馬鹿!」
「うん。お兄ちゃんな。時々思うんだ。妹が馬鹿なんじゃないかって。悲しい事に否定する材料が無いんだよ」
ニコニコとした笑顔で頭を撫でると、新はえへへと笑った。うん。馬鹿だ。しかも救えないやつだ。
「……えっと、個性的な妹さんですね?」
「物は言いようだな。こいつ普段は頭良い癖に俺絡みになると馬鹿になるんだよ」
「お兄ちゃん! そんなに私の事馬鹿馬鹿言うなら私も怒っちゃうよ! お馬さんごっこでバコパコしちゃうよ! 仰向けになって!」
「やめろ! 俺はもう血の繋がった妹のド下ネタなんて聞きたくないんだ! 口縫い付けるぞ!」
「え? 家族だから一生大切にしたい? そ、それってもしかしてプロポーズ!?」
「内容が一ミリも掠ってねえなあ! 病院行くか!」
「びょ、病院って……まさか産婦人科!? も、もしかして私……寝てる間にお兄ちゃんの事犯しちゃったの!?」
「俺が襲いに行っていない分、新は自分の事をちゃんと理解してるな……零よりは良いのか……? いや、ダメだな。比較対象が悪すぎる」
というかカロリーを使いすぎて頭が発熱してきた。助けてくれ豪。お前だけが癒しだよ。
(うるせえ! 巻き込むんじゃねえ!)
うわ。ついに幻聴まで聞こえてきた。気持ち悪っ!
(ぶん殴るぞ!?)
などとイマジナリー豪とやり取りしながら現実から逃げる。うん。俺もそろそろやばいな。マトモ成分補給しよう。
「という事で二人とも。世界情勢や日本情勢について話そうか。二人は今の日本をどう思う?」
「話題がセンシティブ過ぎる!? やめやめ。消される。ガチで消されるから」
「み、未来君がツッコミのしすぎでおかしくなりましたね」
「え? みーちゃん犯すの? ダメだよ、初めては私が奪うから」
「うぅ……! 私がお兄ちゃんの童貞貰うの! 三歳の時約束したもん!」
「話が……進まねえ」
「よーし、任せてね」
一分後
「むぐー!」
「まぐー!」
タオルで口を塞がれ、ロープでぐるぐる巻きにされたにされた零と新の姿があった。
「星……いや、星先輩と呼ばせてください」
「いや、ふつーに呼んでよ。……というか、初対面で妹ちゃん縛ったけど良かったの? 自己紹介もしてないし……」
「ああ。その方がいい。自己紹介も後でで良いだろう」
「むぐー!(どうせなら亀甲縛りにしてよ!)」
「まぐー!(縛られるならお兄ちゃんに縛られたかった!)」
……とか思ってるんだろうな。最近目でわかるようになってきてしまった。要らん。この能力。誰か買ってくれ。
「それで、ボク達がどうして未来君の家に来たのか、ですよね?」
「ああ。まだ理由を聞いてなかったからな」
彩夏に頷きながらも少し固くなる。冷静になってしまった。
……今、家に現役アイドルが来てるんだぞ? やばくねえか?
そうしていると、腕が幸せな感覚に包まれた。星だ。
「簡単だよ。零ちゃんが羨ましかったから。そ、その。好きな男の子の家に居るなんて、さ」
「やべえ。二人との高低差で鼻血出そう」
純粋の極みか。……いや、二人が不純の極みなんだろうな。うん。
「ぼ、ボクも。……いつか未来君のお部屋でお勉強会とかもしてみたいなって」
「……ああ。それは良いな。ゴールデンウィーク明けなんかは中間テストもあるし、やるか」
「……! やった!」
彩夏の顔がパッと輝いた。可愛い。あと揺れてる。
「……ずっと気になってたんだけど。二人……ううん。三人って何で知り合ってたの? というか彩夏ちゃんもなんで未来君に惚れてるの?」
……と。ふと疑問に思ったのか、星が聞いてきた。
「ああ。そうだな。……話しても大丈夫か? 彩夏。というかあの時がきっかけであってるのか……?」
「……はい。ボクは大丈夫ですよ。それと、合ってます。あの時で」
彩夏に頷き……俺はさすがに反省してるだろうと二人を見た。
……反省四割。快楽六割といったところか。なんで放置プレイ楽しんでるんだ? こいつら。
「……話の腰を折らないのなら拘束を解く。良いか?」
「ん」
「む」
二人は頷いた。俺は二人の拘束を解く。
「よし、それじゃここでずっと話すのもなんだ。俺の部屋行くか」
◆◆◆
「話聞いてた?」
部屋に入った瞬間、流れるように零に押し倒された。
「……はっ! どうしてみーちゃんは私に押し倒されてるの?」
「無意識かよおい。お前が押し倒したんだわ」
「みーちゃんが押し倒してフェロモンを醸し出すのが悪い」
「んなフェロモン出してねえわ。てか降りろ」
……俺も慣れてしまってつい押し倒される準備をしてしまったが、それは置いておこう。
「ん。私重い?」
「このやり取り前にもしたなあ! ネタ切れか?」
「む。ネタ切れじゃないもん。という事でテイク二」
パチン、と零が手を叩いた。
「ん。私重い?」
「…………いんや。もっと食えって思うぐらいには軽い」
「ふふ。良かった。これから重くなるよ? お腹が」
「変化球来た!? というか嫌だ! 高校生で子供は! 世間から白い目で見られる!」
「ふふ。私達が特別視されるって事だね」
「どうしたらそんな脳味噌になるの? ねえ? あとドヤるな」
ドヤッと効果音が出そうな零を見てイラッとする。
「あとさっさと降りろ」
「え……堕ろさない! 私絶対に堕ろさないから!」
「語弊しか無いなぁ! その言い方は!そんな事俺が言う訳ないだろうが!」
「はい言質取った。これで既成事じむぐぐ」
「……ほーんと。隙あらばイチャつくんだ、二人は」
その暴挙を止めてくれたのは……星だった。
「助かったぞ星。このままだと話が進まなかったからな」
「……駅前のパフェ奢りね」
「あれ、おかしいな。妥当だと感じてしまう。やってくれた事は結構簡単な事のはずなのに」
だが奢ろう。確かそこそこの値段はしていたはずだ。まあ、一度くらいなら良いだろう。
「……ずるい! 私もお兄ちゃんとデートしたい! 帰りはホテルに連れ込まれたい!」
「よし、新は頭の病院に連れ込んでやるからな」
「び、病院で……!? ひ、卑猥過ぎるよお兄ちゃん!」
「卑猥なのはお前の頭の中だ。漂白剤に漬け込んでやろうか」
「それってどんなプレイ!? リョナ!?」
「プレイじゃねえよ! 俺にとんでもねえ性癖を植え付けようとするんじゃねえ!」
零を俺の上から降ろし、立ち上がる。
「……とりあえず、遅くなったが自己紹介からだな。こいつは新。俺の妹で、中学二年生だ」
「新です! 将来の夢はお兄ちゃんのお嫁さんになってお兄ちゃんを養う事です、子供は十人欲しいです! そのために今はお兄ちゃんの童貞を虎視眈々と狙ってます! よろしくお願いします!」
「よし、今日は記念すべき二百回目の家族会議だな」
「今日こそお母さん達を説得するもん!」
「その気概はどっから来てんだよ。……こんな妹だが、頭は良い。学年でもトップクラスだ」
「将来お兄ちゃんを襲う時に役立つかもって勉強してたら頭良くなりました!」
「うん、頭の良い馬鹿だな」
そして、俺は次に苦笑いしている星達を見た。
「そして……こっちの二人が同級生の西綾星と切長彩夏だ」
「西綾星だよ。今日君のお兄さんに振られたんだよね」
「初対面の妹に言う事では無いなぁ!」
「あ、なら私と一緒だね! 私も毎日お兄ちゃんが寝てる時に耳元で『大好きだよ、お兄ちゃん。結婚して♡』って囁いてるけどいつもダメってしか言わないんだ。早いところ言質取りたいんだけどね! 家族会議の時に使えるし」
「何してくれてんの!? てか俺鍵閉めてるよね!?」
「独学でピッキング覚えたに決まってるじゃん」
「当たり前のように犯罪者の道を進まないで!? お兄ちゃん心配だよ!? 将来が!」
「ふふ。心配ならずっと監視するしか無いよね。隣で」
「こんな時だけ頭良くなるんじゃねえ! ……じゃなくて。自己紹介の続き行くぞ。こっちが切長彩夏だ」
先程からうずうずしていた彩夏を見ると、彩夏が嬉しそうにぴょんっと飛び跳ねた。
ばるんっ、と揺れた。おい効果音の差が酷いぞ。俺の脳。どうにかしろ。
「遅くなったけどはじめまして! ボクは切長彩夏です! よろしくね!」
先程までとは少しだけ雰囲気が違う。テレビで見るような元気な笑顔で、彩夏は言った。
「……あれ? 彩夏ちゃん? 彩夏ちゃんがなんで家に?」
「おい。気づいてなかったのかよ」
「ずっとお兄ちゃんの顔見てたから……夜のオカズにするために」
「何言ってんの!?」
「えへへ……お兄ちゃんに知られちゃった」
「えへへじゃねえ!」
「まあ、私がどんなふうにお「言わせねえよ!?」してるかは今度二人きりでじっくり教えるとして」
「……今日の家族会議は鮮烈なものになりそうだ」
「彩夏ちゃんがどうして家に……?」
「え、えっと、ボクも星ちゃんと同じですよ。み、未来さんに振られてしまったので」
彩夏がそう言えば……新が信じられないと言いたげな顔で俺を見てきた。
「もしかしてお兄ちゃん……B専?」
「違う。やめろ。最近その辺の話題もセンシティブなんだぞ。それと、俺はちゃんとお前らを可愛いと思ってる」
「えっ……お兄ちゃん、こんな所で告白なんて……結婚する?」
「しない」
「そうだよね。私、まだお兄ちゃんと結婚出来る年齢じゃないもんね。婚約だよね」
「一度お前の……お前と零の脳を観察してみたくなったぞ」
「え!? やっぱりリョナ「だからそんな性癖は持ってねえ!」」
……とりあえず、これで自己紹介は終わりで良いのだろうか。良いだろうな。
「……話を進めるぞ。俺と零が彩夏に会った時の話だったよな?」
「あ、うん。聞きたいな」
と、その時。零が星に口を押さえられたまま手を挙げた。
「…………なんだ、零」
「あ、そのゴミでも見るような目……やば、濡れちゃった……ごめんごめん、星ちゃん許して」
星がまた口を押さえつけようとしたのだが、零が謝ったのでその手が下ろされる。
「私! あの時の話したいです! みーちゃん!」
「……なんだろう。絶対ダメだと直感が告げているのに。少しだけ聞いてみたい自分が居る」
いや、もしかしたら普通に話してくれるかもしれない。うん。
「良いぞ」
「やった!」
という事で、零が話す事となった。
「あの日、私達はラブホ一ヶ月耐久をした帰りでね」
「壮大な出オチだなぁ! 二話連続かよ!」
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