第10話 パンケーキデート02

 新しいエディナモールは円柱を半分に切って並べた形をしており、三本の連絡通路が建物同士を繋いでいた。服屋、雑貨店、本屋などあらゆる店が揃い、本館の最上部は映画館になっている。そして別館にはペット用品や家電量販店、スーパーまで入っていた。

 大通りに面したアーチ門を潜ると、真っ先にエディナモールの象徴である円形広場が目に入る。ここではプロを招いての演奏会や期間限定ショップなど様々なイベントが行われる。

 広場の周囲からは水路が放射状に伸びてレストランやカフェのテラス席の傍を通り、建物全体を囲む流れへと注ぎ込んでいた。所々に橋やベンチもあって、開放感のあるお洒落な空間が広がっている。

 平日の昼間にも関わらずモール内は再オープンを心待ちにしていた人で賑わっていた。クロイとアマリアは仕事で来たことも忘れ、弾む足取りで中へ踏み込んでいった。


 目的の店の一つはすぐに見つかった。

 オレンジの筆記体で「ArmayCowley」と書かれた看板が掛かっている。良く見慣れたそのロゴは事務所に常備されている紅茶のブランドの物だ。

 店内はハーブやフルーツの香りで満たされていた。備え付けの棚には赤茶色で統一された缶や紙のパッケージが並び、それぞれのパッケージにはブレンドの詳細を記した説明書きも添えられている。沢山の紅茶を前に目移りしていると、店員がトレーに小さな紙コップを乗せてこちらへ近寄って来た。


「新作のフレーバーティーです。是非お試しください」


 にこやかな笑顔に誘われて、クロイもアマリアも自然と紙コップを受け取っていた。赤みの強い液体は紅茶の爽やかさの中にほのかな甘い香りが漂っている。飲んでみると口の中に苺の優しい甘みが広がった。

 美味しさに目を見開き、その表情のまま互いに目が合って思わず吹き出してしまった。


「これ、凄く美味しいね」


 笑いの余韻を残しつつクロイが言うと、アマリアも口元を抑えながら頷いた。


「私も好きです。でも、ギュートさんや来客用でもありますから」


 残念ながら今回は諦めるしかない。


 アマリアは数ある商品の中から「おすすめ」のポップが置かれた缶を手に取った。ブランドの定番商品で香ばしい香りでさっぱりと飲みやすい紅茶だ。会計を済ませて商品を受け取ると、少し後ろ髪を引かれつつ二人は店を出た。

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