第6話 怪しい通路
柵に沿って歩きながら消えたルーグ達を探す。
森林地区内部は木の枝や蔦が深く絡み合って日光を遮断している。重苦しい空気が深部から流れてきて、正午を回ったばかりだというのに薄暗く不気味だった。
クロイは暗がりに目を凝らそうと柵の向こう側に身を乗り出した。その瞬間杭が大きく傾き、バランスを崩して盛大に前方へ転げる。その様子を馬鹿にして笑っていたシャビも、寄り掛かった杭があっさりと抜け、器用に一回転してから地面に背中を打ち付ける。
「まったく、何してるの」
ユウナは呆れ顔で後輩達を見下ろしつつも背中の蜘蛛脚を伸ばし、襟元を掴んで二人を引き起こした。騒ぎ声を聞いたギュートも慌てて駆け寄ってきたので、クロイもシャビも土を払いながら気まずそうに笑う。
「すみません、ちょっと体重かけたら倒れちゃって」
「脆くなってたんですかね?」
その問いには答えず、壊れた囲いを眺めるリーダーの表情は硬い。
「リーダー、これ見て下さいよ」
手近にあった杭をユウナは軽々引き抜いて見せた。どうやら浅く掘った穴に差し込んでいるだけらしく、周辺の杭は全て同じ状態だった。
「少し先に元の穴を埋めた跡も残っているし、誰かが囲いの位置をずらしたようですね」
「ああ、それも良からぬ目的の為にな。向こうにルーグの通り道を見つけた。調べれば関連が分かるかも知れん」
行こう、と皆を手招きしてギュートは歩き出す。倒れた柵を跨ぎ越えて四人はいよいよ森林地区へと踏み込んだ。
数メートル進んだ先の木の陰に地面が不自然に盛り上がった場所があった。中央には大きな穴が開いている。
懐中電灯で中を確認すると、穴は森の奥へ向かって伸びているらしかった。まずリーダーが穴の中に降り、その後にサブリーダー、そして新人二人が続く。
通路は大人が立って歩けるほどの高さと幅があったが、ギュートだけは体を折る様にして進むしかなかった。土の壁や床は綺麗に均してあり、ルーグが齧った跡ではなく人の手で掘られた物と思われた。
十メートルほど進むと壁に行き当たった。ここまで道は一本だったがルーグの姿は見当たらない。どこかに抜け穴があるのかと探っていると、不意にギュートが壁に耳を押し当て聞き耳を立てる。
「微かだが壁の向こうからルーグの羽音が聞こえる。それにこれは・・・ラジオか?」
顔を放すと音のした所を叩いた。壁の一部が僅かに凹み、パラパラと土が落ちて隙間から木の板が覗く。
ギュートは皆を振り返って壁の先を指し示した。それを合図にユウナは蜘蛛脚を傘の様に広げた。クロイも周囲に泡粒を浮かせ、シャビも耐ルーグ用の銃を構える。
リーダーの右手がカウントダウンを始める。
五、四、三、二、一・・・握られた拳はそのまま鋭く土の壁を貫いた。
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