第3話・スクエア……いろいろと困る
週末──オレとデルタは、公園を散歩していた。
《ねぇ、これってデートだよね……あたしたち、デートしているんだよね》
「まっ、デートと言えばデートになるのかな」
《やったぁ♪デートだ、デート! この後、ナニする?》
「考えて無かった」
《しょーがないなぁ。じゃあ、あたしが考えてあげる……まずは、あのヌイグルミを吊り上げるゲームやって、話題のアニメ映画観て……他にもいろいろ》
オレは、はしゃいでいるデルタを見上げて「あの体で、どうやって映画館に入るつもりだろう」と思った……そういえば、最近はずっとデルタを見上げているから首が痛い。
デルタが言った。
《ねぇ、手をつないでもいい?》
手をつなぐ? いったいどうやって。
「別にいいけれど」
《やったぁ♪カレシと手をつなぐの夢だったんだ♪少し締めつけるけれど我慢してね》
締めつけるってナニ? オレが若干の不安を感じていると。デルタから出てきた三つ爪の、機械アームがニョロニョロと伸びてきて。
オレの胴体をガシッと強くつかんで捕獲した。
「ぐぇぇ腹がぁ! リバースするぅ!」
《わ~い♪デート、デート、カレシと手をつないじゃった♪楽しい》
手をつながれたというより、未確認飛行物体に捕獲されたようにしか見えないオレの体を、デルタは上下左右に振る。
《デート、デート》
本人はつないだ手をブラブラさせているつもりだろうが……時々、勢い余って地面に叩きつけられたりしているオレには……迷惑な行為だ。
《今度は肩を組んでみるね》
「ちっ、ちょっと! うわぁぁぁ!」
今度は、片方の肩から脇腹にかけて三つ爪アームがつかむ。
「い、息ができない」
《デート、デート》
デルタな彼女と、つき合ってみてわかったコト……パート3、彼女はデートに夢中になると、周囲の状況が見えなくなる。
デルタは、犬を連れて公園を散歩していた人を発見して、テンションが爆上がる。
《あっ、モフモフのワンちゃんだぁ、かわいい》
肩抱きされたまま、地面を引きずられるオレ。
「うわぁぁぁ、やめろいぅ!」
《ワンちゃん、ナデナデさせてくださ──い》
デルタが、ロングリードでつながれた小型犬を吸引ビームで、三角形の中に引き込むのが見えた、飼い主の悲鳴が公園に響く……をいをい。
デルタの中で怯えた子犬の鳴き声と、子犬が走り回る音が、うつ伏せになったオレ耳に聞こえる。
《よし、よし、よし》
数分後──若干、水分と養分を吸収されて、弱った子犬が地上に降ろされた。
《ふぅ、ワンちゃん可愛かったね……次は池でボートに二人で乗って……あれっ? どうしたの! ボロボロじゃない! 誰がこんな酷いコトを!》
地面に伏せたオレは、心の中で「おまえが。引きずったんだよ」そう呟いた。
《スクエアが、こんな状態ならデートの続きはムリそうだね……日を改めてデートしよう、家に帰るね》
オレは、グッタリ腹をつかまれたクレーンゲームの景品状態で空中に吊り上げられ、家まで運ばれた。
後日──日を改めて、デルタの強すぎる要望で、オレは気乗りはしなかったがデートが再開された。
《今日こそ、公園の池でボートに乗るんだからね……あそこで、ボート借りられるみたいだよ》
「わかった、わかった……えーと、料金はアレ? アンノウンはボートに乗るの禁止? 以前小型円盤がボートを
《なにその過剰な禁止反応! しょがないなぁ、ボートに乗らなければいいんでしょう……先に一人でボートで遊んでいて》
デルタはどこかに行ってしまい、オレは一人でボートに乗って池の真ん中まで漕いできた。
(デルタ、どこへ行ったんだ?)
オレが不思議がっていると、ボートの下に黒い三角形型の影が現れ、池が盛り上がってボートが揺れた。
「うわぁぁぁ! 転覆する」
水を滴らせて池から、空中に浮かび上がるデルタ……オレの顔に水が降りかかる。
《えへへへっ、驚いた♪》
「カップルが乗ったボートが、デルタの波で揺れて悲鳴があがっているぞ」
《あっ、本当だ……みなさん、ごめんにゃん♪あたしがボートに乗らなければいいんだよね》
そう言うとデルタの下部から照射された、吸引ビームでオレごとボートが空中に浮かぶ。
「うわぁぁぁ!? 未確認飛行物体に拉致される」
《デート、デート、次はクレーンゲームで景品ゲット!》
クレーンゲームが置いてある、アミューズメント施設に到着すると、また入り口に張り紙がしてあった。
「アンノウンのアミューズメント施設入店はお控えください……だって、なんでも以前、店ごと吸引ビームで宇宙に持ち去られそうになったんだって」
《えーっ、またぁ……あっよく見たら店の屋根に青いシートが被せられて、あそこ穴開いているね……いいコト思いついた、先にお店の中に入って、欲しいアミューズメントグッズを指定するから、景品が入ったゲーム機の前で待っていて……二千円くらい投入して》
オレが言われた通り、デルタが欲しがっている
景品が入ったゲーム機に、硬貨を二千円分ほど投入するとデルタが言った。
《少し離れていて、いっくよぅ》
ブルーシートがめくれ、風が店内を暴れる。景品の取り出し口から、竜巻に乗った景品が次々と空に浮かぶデルタの中に吸い込まれていく。
《これは、ただの自然現象だも~ん、竜巻で景品が空中に舞い上がっているだけだも~ん》
オレは不自然現象だと思った。
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