第2話 日々の狭間
廊下ですれ違うたび、挨拶をしてくれる。
昼休みに遊びにきては私のコーヒーを飲んで帰っていく。なんて自由な少女だ。
ある日、いつものように昼休み一緒に過ごしていると彼女の腕に目がいった。
ひどく傷ついていて胸が痛くなったがあえて触れなかった。でもずっと頭に残っていた。
言ったら悪い気がするが何も悩みなんか無さそうなこの子が一人で苦しみ自分を傷つけてしまっていると思うと教師としてではなく一人の大人として解決してあげれたらと思った。
思っただけではダメだったようだ。
それから私は彼女に精一杯尽くした。彼女に不足した愛情を少しでも私が補給できたらと。何でもないただの教師が一人張り切っていた。
話は聞けないままだったので何が理由なのかはいつまで経ってもわからないままだった。
彼女は私の前だと暗い表情など一つも見せないし、相談事などもあの日の恋愛相談以外なかった。
私が張り切っていると彼女は毎日くるようになった。絵の話や趣味の話、好きな音楽の話など楽しくしてくれた。とっても綺麗な笑顔で。毎日が過ぎるたび新しい傷は増えていっていた。
長袖のワイシャツの袖の部分に赤く水玉模様ができていた事にはさすがに気づかない訳にもいかず視線を向けたら彼女は自然を装ってブレザーを着た。私はこの事について本当に触れては行けないと自分に言い聞かせた。可哀想だといって厚意を持って何かアクションを起こしてしまえばきっと彼女は真っ暗な空洞で一人泣き叫ぶ事になるだろうから。
彼女の左腕は彼女を元気付けている。リストカットは彼女の懸命に生きようとする証。
そんな事を考えては自分の心配する気持ちを抑え、出来るだけ彼女の前では笑顔でいようと決めた。私なんかがそんな小さな事をしても彼女の自傷行為に効く薬になるわけがないと分かっていてもそう決心していないとダメな気がした。
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