6月7日

昨日の余韻がまだ残っている。夜はソワソワしてほとんど眠れなかった。LINEの連絡先画面の中で彼女の名前はひときわ輝いて見えた。しかし交換したのはいいものの、最初何を送れば良いか全くわからず、気づけば日が昇っていた。

今日も僕は予定がなく暇だった。しかし寝不足で体が重たい。せっかくの日曜日を棒に振るのもどうかと思い、よっと立ち上がり着替えを始めた。窓から差し込む日の光が目を焼くように差し込んできた。

着替えが終わるとバックを持ち、買い物に出かけた。特に欲しいものも買わなければいけないものもなかったが、気持ちを落ち着かせるために出かけようと思ったのだ。どこへ出かけるかも決めていないためとりあえず電車に乗り街中へ行ってみることにした。

自転車に乗ると何故か自然と駅へ急いでいた。待ち合わせも約束もしていないのに。

駅につくと切符を買い、改札をくぐる。そして電車が来るのを待った。誰もいないホーム、鮮やかなアジサイ、デジャブを感じた。しかし期待ははずれ僕一人のホームに電車は轟音を響かせながらやってきた。僕は下を向いて乗り込んだ。

目的の駅まで時間がある。僕はスマホで暇つぶしできそうな所を検索した。カフェ、カラオケ、ボーリング、一人で行くには少し寂しいところばかりだった。そして何故か僕は1人ということにこだわっていた。

駅に着くと、とりあえず散歩しようと思いフラフラと歩き始めた。駅を出て商店街に向かった。日曜日ということもあり交差点は道行く人で賑わっていた。

商店街につくと一軒一軒じっくりと店の様子を見て渡った。途中肉屋でコロッケを買い歩き食いした。

のんびりとそんなことをしていると気づけば商店街の最後の店の前まで来ていた。そこは洋服屋で商店街では珍しく、店内は女子高生や小学生などで賑わっていた。僕は少し目を向けると中に見知った顔があった。彼女だった。目を疑った。休日に2回も彼女と出会えるなんて…。奇跡としか思えなかった。彼女は中でアクセサリーを見ていた。僕は外で店に背を向けて、どう話しかけようか迷っていた。そしてやっと覚悟が決まり店内を見た。その時、僕は言葉を失った。彼女の隣に見知らぬ男がいて彼女と仲良さそうに話していた。彼女と背丈は一緒ぐらいでモデルのように綺麗な顔立ちをしていた。僕の心の中でなにかが壊れた気がした。僕は無言で振り返ると駅に向かって駆け出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る