6月6日(2)

電車に乗り込むと彼女は真っ先に空いている席に座った。僕は緊張で体が動かなかった。「ここ、いいよ…。」

彼女は恥ずかしそうに隣の席を指さした。僕は心臓が口から出てきてしまいそうなった。

「じゃ…じゃあ遠慮なく…」

上手く言葉が出てこない。恐る恐る席に座った。

「今日の映画楽しみだね。」

「そうだな、2年振りの映画だもんな」

最初はお互い緊張で会話が途切れ途切れになっていた。しかし気がつけばたわいもない会話で盛り上がっていた。映画のこと、家族のこと、アニメのことなど、彼女の様々な面を知ることが出来た。そして気がつけば映画館のある駅に到着していた。僕たちは早足で映画館へと向かった。そして到着すると真っ先にポップコーンを買いに走った。

「何味にする?」

彼女が聞いてきた。

「僕は塩味かな。」

そう言うと彼女は笑って、

「じゃあ私はキャラメルにする。食べあいっこしようよ。」

と提案してきた。声が出なかった。嬉しいような悪いような、様々な感情が入り乱れ僕は思考がショートしてしまった。彼女は自分から言っておいて恥ずかしくなったのか、後ろを向いて手で顔を隠していた。その後、僕達は気まずくなりあまり会話が出来ないまま映画を見終わった。

しかし映画の力は凄い。気まづかったのなんて吹き飛んでしまった。僕達は映画の感想を話しながら昼食を食べるためにフードコートへ向かった。

昼過ぎで席はかなり空いていた。席に着くと彼女は余程お腹が空いていたのか、小走りでパスタを注文しに走った。僕はすぐに出来そうなうどんにした。お互い料理が届くと映画の感想の続きを話しながら食べ進めた。

「ごめん、私これからこっちの方で用事あるんだ。だから帰りは1人でもいい?」

食べ終わる頃に彼女は言った。

僕は決心してあることを提案した。

「ねぇ、連絡先交換しない?」

僕にとっては覚悟の提案だった。

彼女は最初少し戸惑ったような顔をしたが少したってからニコッと笑い

「いいよ」

と言ってLINEのQRコードを差し出した。僕は嬉しさで飛び上がってしまいそうだった。連絡先を交換すると彼女は時計を見て勢いよく立ち上がった。

「やばい、時間に遅れちゃう。ごめん、またね」

そう言って駆け足で行ってしまった。僕も帰ろうと席を立ち上がると彼女が座っていた席の下に彼女が使っていたハンカチが落ちているのを見つけた。来週、学校で届けよう。そう思って駅へ向かった。僕は今日少し強くなれた気がする。

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