6月6日(1)
この日は土曜日で何もすることがなかった。どこかへ出かける予定もないし、週末の宿題も終わってしまった。
ダラダラとスマホを見ていると自分の好きなアニメの映画が今日から公開だということに気がついた。僕は急いで支度をし家を出た。
1番近くの映画館までは電車で30分ほどの所だ。僕は楽しみで自然と早足で進んでいた。駅につくと、切符を買って改札をくぐる。そして電車が来るのを待った。僕以外の人は誰もいない。アジサイが一人、見事に夏を彩っていた。電車が来る2分前、駅の階段を誰かが降りてくる音が聞こえた。顔を上げるとあの彼女が階段を降りてきていた。一瞬困惑した。心の準備が整っていない。どうすれば良いか分からなかった。
その時、彼女と目が合った。そして彼女は近づいてくると小さな声で
「偶然だね。どこ行くの?」
と聞いてきた。僕は詰まった息を飲み込んで声が震えるのを無理やり押さえ込み、
「あぁ、近くの映画館にね。好きな映画の公開日が今日なんだ。」
そう言うと彼女は驚いた顔をして
「偶然だね。私もだよ。」
僕も驚いてしまった。しかも見る映画も一緒だという。神様は意地悪なのか優しいのか分からなくなった。その時、駅に電車が走ってきた。ドアが開くと彼女は一目散に乗り込んだ。
「早く行こう!」
そう言って無邪気に笑う彼女はいつも以上に可愛く見えた。
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