6月5日
この日は体育祭の練習のため男女合同で体育を行うことになった。僕は正直運動は苦手だ。そのため体育祭などはあまり好きではなかった。いやいや外へ出ると、すぐに彼女が目に入った。しかしいつもとは違い、髪を結んでいて、違う雰囲気だった。見とれているうちに準備運動が始まった。夏のような日照りによって温められた地面はまるでホットプレートのようだった。
準備体操が終わり最初はリレーの練習からだった。僕の走順は15番目、あまり目立たない最後の方だがアンカーではないところを希望した。ピストルの音と共に最初の走者の走る音が辺りに響き渡った。僕のクラスは7組中3位だった。正直僕は勝ち負けなんてどうでもよかった。ただ早くこの行事が終わってくれることを願っていた。
そうこうしているうちに僕の番になった。順位は変わらず3位、この位置をキープできるようにしようと思った。バトンが渡る寸前、ふとコースの内側を見ると彼女が僕を見ていた。僕が見たことに気づくと彼女は小さく拳をあげた。その時僕の心の中でなにかに火がついた。
ここから先はあまり覚えていない。嬉しさのあまりか、いつもなら気だるげにやるリレーを本気で走っていた。そして気がつけば1位にのし上がっていた。
次の人にバトンを渡すといつも以上に疲労がどっと来た。そしてクラスのみんなからマシンガンのようにコメントが送られてきた。あまりの量に聞き取れず困惑していると、遠くで彼女がニコッと笑った。そして、口パクで「おつかれ」と言ったような気がした。その瞬間疲れは全て吹き飛んでしまった。
夏の暑さなんて気にしないほど僕の心は燃え上がった。運動もたまにはいいかもしれない。そう思えた日だった。
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