6月3日

この日は朝から強めの雨が降っていた。いつも通る道には色とりどりの傘が道を埋めていた。学校に着くと傘を閉じ持ってきていたタオルで濡れた髪を拭いた。しかし拭いてもベタベタとした感覚は残っている僕は雨の日が嫌いだった。

髪も拭き終わり教室へ入ろうとした。しかし後ろからふと気配を感じて振り向くと濡れた彼女がカバンを漁っていた。なにか探しているのかと聞こうと思ったが頭で考えるより先に声が出ていた。

「タオル貸そうか?俺、2枚持ってるよ」

なかなか大胆な行動に自分自身も驚いていた。そして気持ち悪がられないか不安になった。彼女は少し考えたような顔をするとスっと手を出してタオルを受け取った。

「ありがとう…。洗って返すね。」

彼女は下を向きながら恥ずかしそう言った。僕はうんと小さく言って教室へ入った。初めて彼女と会話(?)したのが嬉しくて小さくガッツポーズした。

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