第3話 卒業式前日
明日は卒業式だ。
陸はもう2年近く学校に行けていなかった。理由はいじめで体調を崩したからだ。
夜寝るとき、なかなか寝れなくなった。朝も起きれなくなった。起きようと思うと身体が言うことを聞かず、そのままベッドの中で死ぬほど苦しんだ。目眩もした。死にたいとも思うようにもなった。
でも理沙のことはどんな時も忘れられなかった。
理沙の笑顔は陸の生きる原動力だ。
理沙の笑顔を思い出すと陸の心は、枯れたバラが水差しにいけられ、また咲くように心が潤う気がした。
PM7時。
陸は父と母と夕飯を食べるているとき、父がおもむろに言った。
「陸、明日卒業式だろ?」
陸の代わりに母が答えた。
「そうなの。お母さんとしては陸に卒業式は出てほしいけど、陸が行きたくなかったらもう行かなくてもいいよ。でも担任の先生は陸に卒業式に来てほしいと言っていたよ」
陸は黙ったまま、ご飯を口に運んだ。
陸は口を開け言葉を発するのもめんどくさかった。
卒業式なんか、絶対に行かない。
めんどくさい。
陸をいじめてた奴らに会いたくない。
あいつらに会うとまた面倒なことになる。
そんなことを考えながら、父と母と一言も話さずに陸は食事を終えた。
陸は階段を上がり、自分の部屋に入った。
部屋にはベッドと勉強机だけしかない。
陸はベッドに寝転んだ。
そして寝たままスマホを見た。
ラインが一件着ていた。
陸は驚いた。
理沙からだった。
「いきなりごめんなさい。明日卒業式に来てほしい。あたしと亮、そして陸の三人で卒業式の後、写真撮りたい。陸。あたし、今まで陸がいじめられていたの止めもせず黙って見ているだけだった。でもそんなのおかしいと思ってる。あたしと亮は陸のこと助けたいと思ってる。陸、明日の卒業式絶対に来てね。そして、その後、昔遊んだ公園でお別れ会しよ。あたしが東京に行くこと親伝えに聞いてるでしょ。陸、あたし、陸に謝りたい。今まで助けてあげられなくてごめんって。亮もそう思ってるの。下手くそな文章になってごめんなさい。これがあたしと亮の想いです」
陸は明日、卒業式に行こうと思った。
こんなライン一つで考えが変わるなんて、自分って単純だなと思った。
本当に陸は単純だ。
なんか元気が出てきた。
陸は部屋を出て、リビングルームに戻った。
「母さん、父さん、明日、卒業式に行くよ」
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