第4話

 図書室の話である。そう、保健室ではなく、図書室の話である。


「そう、出るらしいぞ」

「へー今どき珍しいですね」


 神奈川先生と撫子が話している。ま、関係ないな。


「三人で見に行きましょう」


 何故、わたしを巻き込む、渋い表情でいると。聞けば、新聞部が懸賞金をかけているらしい。学食のラーメンセット三枚の引換券である。タダ飯か、実に悪くない話である。この時、保健室の三人組は一つとなった。


「それで、何をすればラーメンセットの引換券を貰えるのだ?」

「インタビューしてその音声を録音すればいいのです」


 最近はハイテクな時代である。スマホに音声スクリーンショットなる機能があるらしい。


「で、何処をどうすればいいのだ?」


……。


 聞いたわたしがバカであった。


「こうゆうのはどうでしょう、その幽霊に録音の仕方を聞いては?」


 撫子がまともな事を言った。


「よし、それで行こう。合言葉は風林火山だ」


……神奈川先生が微妙なことを言い出す。テレビで歴史の特集でしたのか?

撫子と目が合う。


 ま、どうせ幽霊など、居ないだろうと撫子と確認して図書室に向かうのであった。


「お帰りなさいませ、ご主人様」


 図書室に入ると、第一声がメイド喫茶である。わたしがすごすごとしていると。


「ご主人様ではなくて、お嬢さまの方がよろしいですか?」


 メイド服姿の生徒が少し困った様子で話始める。そう言う問題ではない。


 詳しく事情を聞くと……。


 幽霊騒動で利用者数が激減したとのこと。一番やってはいけないテコ入れだ。イヤ違う、これは司書さんの趣味だ。


「それで、幽霊と言うのは?」

「あちらでコーヒーをお飲み中です」


 普通に居るし、見た目は貞子だし。この高校の制服は着ているが、やたらと前髪が長い。こんなのが図書室に居れば怖くて近寄らないわな。


「相席をお望みですか?」

「は、はい」


 メイド服姿の生徒が幽霊のもとに行き、何やら相談している。


「三名様、貞子セットです」


 メイド喫茶のオプションに幽霊が入っているし。とにかく、タダ券のラーメンセットの為だ、わたし達三人は幽霊の隣に座る。


「で、始めてこのメイド喫茶に来た理由は?」


 神奈川先生が幽霊に話かける。確かインタビューを録音して新聞部に提出であった。


……。


「ここをこうです」

「ほーう」


 沈黙の後で幽霊に音声録音機能の説明を受ける。この幽霊なる人物、害は無さそうだ。そう、当初の計画通り幽霊に教わるのであった。


「それで、わたしに殺して欲しいのは誰ですか?」


 は?わたしは声を失った。イヤ、悪霊であるので当たり前の事を言うのか。


「録音できた?」

「はい、バッチリです」


 神奈川先生と撫子が話あっている。


「不味いでしょ、殺し屋を学校新聞に載せるのは」


 タダ券欲しさで学内を混乱させるのは問題であるはずである。わたしがうろたえていると。


「冷やかしですか?」

「そんなとこだ」


 悪霊の問いに神奈川先生は完全に開き直っている。


 しかし……。


『一緒に死んでちょうだい』


 悪霊は本気の顔でわたし達に言う。


「さっきより、悪霊らしいなこっちを使おう」

「はい、神奈川先生」


 更に二人の会話が続き立ち上がる。


「サービス、終了でお願いします」

「ご利用ありがとうございます、清算は受付でお願いします」

わたし達は出入り口のカウンターに向かう。

「コーヒーを飲み放題が900円。その他、指名料が入りましてお一人様、2500円です」


 高いなー。


 この手の店は行きつけていないので良く分からないが仕方がない。


「よーし、タダ券でラーメンセットを食べるぞ」


 撫子の言葉にピーンときた。


『タダでないし!!!』

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