第2話

 放課後、わたしと撫子は駐輪場に向かう。勿論、帰る為だ。


「ねえ、ここにある自転車を全てパンクさせたら面白くない?」


 ひいぃぃぃ、犯罪だ。少年院に行って、一生、あいつは少年院に行ったと語られる。


 撫子はドライバーを取り出すと……。


 ここは不可抗力だ、撫子ともみ合いになり。遠巻きにはガチの喧嘩に見えるであろう。

「これは不味いな……」


 わたしの時間が一瞬、止まる。この展開は誤って、撫子を刺すエンドだ。わたしは一歩下がると、撫子は不機嫌になる。


「何で刺してくれないの?血が出て真紅の制服姿になりたかったのに」


 やはり、真意はそっちか、ホント、この撫子は面倒くさい。わたしは首を傾げて困っていると。


 「おいそこ!何をやっている」


 ヤバイ、先生だ。


「はい、お花畑を作りたいなと思いまして」


 確かに、刺されたら、お花畑に行けるな。


「先生、正門にある紫陽花の花の前で記念撮影しませんか?」

「あー俺は仕事中だ」


 すごすごと帰って行く先生であった。再び、駐輪場で二人きりになると。


「流石、琴美さんです。適当に頼み事をして撃退する。正にわたしの嫁です」


 わたしが複雑な表情になり、悪寒が走る。


「ぽ……」


 ひいぃぃぃ、正当防衛でこのまま刺してしまうか?


 そうだ!


 わたしはナイフを取り出して、自分の手首を切る。そして、撫子の制服を真紅に染める。


「おおお、美琴の血でいっぱいです」


 最高の快楽を得た表情で気絶する撫子であった。しまった、血だらけの女子高生が倒れていたら騒ぎになる。


 わたしは急いで神奈川先生を呼びに行くのであった。


 例えば誕生日が近いとする。わたしは今日も保健室登校である。居るのは撫子と神奈川先生だけである。


「あぁぁ、のーぅ……」

「どうした、へぼちん?」


 何か酷いあだ名が付いた気がする。わたしと撫子の関係は記憶喪失になった、お姫様と悪役令嬢の関係に近い。どちらがお姫様なのか何時ももめる。そんな事はさて置き、誕生日であった。


「わたし、後、二週間くらいの命なの。だからその前に誕生日をお祝いして……」


 酷い嘘を言った、これでは悪役令嬢である。勿論、二週間で死ぬ予定はない。


「へぼちん、死ぬのか?」

「大丈夫、神様に誓ってそれはないわ」

「ほー、悪役令嬢に決まりだな」


 そんな会話が終わると、二人は勉学に戻る。


「あががが……」


 肝心の事が抜けている。わたしは立ち上がり。


「誕生日なのお祝いして!」


 ホント、最初から言えば良かった。


「おや、チロルチョコが欲しいのか?」

「それはバレンタイン、わたしは誕生日の祝いがされたいの」

「では、ゴディバのチョコか?」


 ここは妥協してゴディバのチョコで我慢しよう。


「チョコ欲しさに体を売るのは止めなさい」


 その言葉は真剣で、神奈川先生はどんな人生を送ってきたのだ?わたしは斜め四十五度になるほど首を傾げるのである。とにかく、誕生日パーティーの開催が決まった。


「良かったな、へぼちん」


 先生が『へぼちん』は不味いだろうにと、今後の人生を心配するのである。


「ちなみに、プレゼントはゴディバのチョコと一生あだ名が『へぼちん』かの選択だ」


***


「あら、美琴さん元気が無くて?」


 神奈川先生が紅茶を入れてわたしの前に置く。そう、今日がわたしの誕生日なのだ。結局、わたしはゴディバのチョコより、ふざけたあだ名を止めることを選んだ。撫子は体調が悪いのか、奥のベッドに寝ている。


「撫子さんは?紅茶が冷めてしまいます。呼んできてくれる」


 仕方がない起こしてくるか。わたしは奥のベッドに行き撫子を起こす。すると、突然、ベッドに引き込まれる。撫子は裸である。


「うふふ、子猫ちゃん、一緒に楽しみましょう」


 そう言うと首筋にキスをしてくる。甘くて激しいキスは、わたしの体中が火照るのであった。段々と理性が無くなり、更なる刺激を求める。すると、わたしの口の中に撫子は舌を入れられて、ディープキスをする。


「ダメ……先生がいる……」


 下に指が触れた瞬間、突然、撫子の動きが止まる。


「そうね、今度は先生の居ない時にしましょう」


 撫子との甘い時間は終わりのようだ。わたしは乱れた制服を直してベッドから出る。撫子も制服を着ている。とにかく、神奈川先生のもとに戻ろう。保健室の中央にあるテーブルにつくと、紅茶を飲む。


「美琴さん、風邪かしら、顔が火照っているわ」

「あ、あ、大丈夫です」


 そんな話をしていると、撫子がやって来る。


 うぅ、気まずい。

 

 本当に撫子がわたしに惚れているか?そう、想うだけで先ほどの激しいキスが思い出させる。


 まてまて、これは孔明の罠だ。


……。


 訂正しよう、撫子が孔明ほどの知力はない。むしろ、本能の塊である。


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