第71話 旅立ち?
シャラシャラシャラッ
「♫ワーレはうみの子、さーすらいのーっ、たーびにしあれば、しみじーみとーっ♪」
「カーナ様、変わったお歌ですね?何処の歌ですか?」
「この歌?私の故郷の歌よ、この世界じゃないけど」
「この世界じゃない?」
「何でもなーいわ」
え~っ
世界の車窓からコンニチワ、の番組は終了した?ではなく、馬車の車窓からコンニチワ中のカーナ▪アイーハです。
あれから、何とかハンスさんを説得して神の森を脱出。
予定通りテータニア皇国皇都へ、楽しい旅行を開始しました。
ビール工場パート従業員として苦節数ヶ月、パート雪ウサおばちゃん達の井戸端会議をへて、ついに此処まで来たのです。
ヤッホーッです。
マンボーです。
天気予報です。(意味不明)
最高です。
もう渋い28号の顔を見ないで済むと思うと嬉しくて嬉しくて、舞い上がってしまいますって、本当に舞い上がってしまいました?
馬車の周りを三回転半してしまいました。
はう!?
持病の冷え症が復活です。
ヤバいヤバいヤバいです。
ぶるぶるぶる
なんて思うでしょ?
チッチッチッチッ、そこは
実は、こっそりパートおばちゃん達に旅行の話を伝えたら、餞別に冬毛(一年中冬毛)で編んだ雪ウサ毛皮コートを貰ったんです。
それはもう
ですがこの世界は氷河期並みの冬。
それでも完璧ではありません。
なので!
更に雪ウサ毛布と雪ウサローブで完全武装。
矢でも吹雪でもドンと来い、ですわ。
「ほーほっほっほ、私はもう完璧よ。寒さなんかへっちゃらなんだから!」
ビュ~ッ
(ちょっとの吹雪)
「ぐはっ!?今の撤回、寒いものは寒い!」
うう、雪ウサ完全武装でもこの寒さ!
この世界の気温を舐めてました。
息が白くて煙幕張ってんかって、近所のガキに棒でつつかれそうです。
やってらんないわ!
「サミ~っ、暖房ない?暖房!」
「有りませんよ。馬車の中ですよ?!」
「お焚き上げしよ、じゃなく焚き火しよ」
「馬車が燃えて無くなっちゃいますから!」
何なの、この無駄に隙間だらけ馬車は?
幻聴で
「はあ、しかし、そのまん丸着ぐるみは、なんだか只の白い毛玉にしか見えませんが」
「失礼な!雪ウサ印は無敵防寒着。こーやって転がりながら鬼煎餅を噛ったり、トイレまで行ける優れもの。しかも寒くない!」
「ただ無精なだけでは!?」
「うるさいです。そんなんだから未だに恋人が出来ないんですよ!」
「それは関係ないでしょう?!」
ハンスさんは今年て32歳になりますが、未だに独身であります。
お顔は悪くないのに全く勿体ない話です。
案外この国の女性達は見る目がないですね。
あ、私の好みではないですけよ。
基本私はオジ専です。
それもイケおじがグットです。
勿論、先般のアルタクスさんみたいな、目の覚めるような爽やかイケメンも好物ですが、あれは鑑賞用となっておりますので、見ては楽しめますが、やはり結婚となると幾つか恋の経験豊富なイケおじがベスト。
やっぱり上手くリードしてくれて、それなりの財をお持ちの方がいいじゃないですか。
うふふふ、今回の旅の目的の一つは、そんなイケおじを見つける事なんですよ。
だからワクワクが止まりませんのよ。
しっかし、さっきから雪ばかりの殺風景な雪景色。
たまの雪景色はwelcomeですが、24時間、365日雪景色では感動も何も有りません。
「ハンスさん?皇国までどのくらいなの?」
「そーですね、あと2時間くらいですか」
「とーいぃ!?案外、遠かったんだね!」
「仕方ありませんよ、雪道ですから」
「いや、トラックなら……まあ、そうだね」
「?」
一応、馬車はソリタイプにチェンジしてるけど、それでもスピードは上がりません。
冷たい目の雪ウサギが乗る大型トラックは、どういう原理か知らないけど雪の上を滑るように速いって聞きました。
いや、ソリ雪上仕様で実際に滑ってるらしいけどね。
ファンタジーだね。
あ、関係ないけどあのトラック、EVなんだよね。プラントの余熱発電を利用した充電タイプ………。
は?
なんでソッチばっか先進的?
向こうEV雪上車、こっちソリ馬車?
馬車もEVにしてよ!
馬糞公害どうしようもないよ!
雪に黒い点々堪んないよ!
ヒヒーンッ
「わ!?」ゴロゴロゴロッボンッ
馬が怒った!?
ではなく??
「何、いったい?転がって荷台の壁にぶつかったんだけど!痛くないけど」
ハンスさんが馬車を急ブレーキ。
私は、まん丸だから転がっちゃいました。
でもイタクな~い!
ほっほっほっほっ
完全武装の雪ウサ着ぐるみパーフェクト。
バウンド激しいのが難点です。
「い、いえ、急な飛び出しがありまして」
「急な飛び出し?横断歩道があったの?」
「おうだんほどう??」
「あ、何でもない。え、女の子が倒れてるじゃない!交通事故!?」
「こうつう?いや、馬車は当たってないです。随分先て飛び出したのを見ましたから」
「え、じゃあ、当たり屋じゃない?」
「当たり屋?」
「交通詐欺よ。事故を装って賠償金を踏んだくる犯罪に違いないわ。私に任せなさい!」
「あ、カーナ様!?」
もう、私のイケおじ捜しの旅……じゃなく、世界漫遊の旅を、のっけから台無しにされて堪るもんですか!
私は毛布とローブを脱いで馬車を飛び出すと、女の子のところに飛んでいきました。
こうしないと羽根が使えず機動力が落ちるからです。
ビューッ
ぐは?!
寒ミーが容赦なく襲ってきます。
リフレインが呼んでます。
((くっくっくっ、我が名はサミー▪マーベラス、極寒の寒さを味わうがよい))
誰だ、お前?
アメコミ筋肉マスクマンが白マニュキュア歯で立ちはだかります。
パチンコ屋のマスコットか?
そうして毛皮一層コートと怒涛の根性でサミー▪マーベラスをぶっ飛ばして辿り着いた先は、あら?
雪の中に埋もれていたのは、まだ10歳くらいの子供でした。
ちょっと親は何処よ!?
その辺に隠れてるんでしょ?
ふざけんじゃないよ、出て来なさいよ!
あ、女の子が気づいた?
「はーい、ハロー?」
「よ!?」
あらら、この子、目が点になってるわ。
所さんの番組じゃない。
どうしたのかしら?
「よ?」
「よう!」
お返しの挨拶?
「よう?男の子みたいな挨拶ね」
「妖精だぁーーーーーーーーっ!???」
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