第11話「急に出てきたあの子」
保健の先生に帰宅するよう促された俺は自宅に帰ってから佑葉に連絡を取ろうとメッセージも送ったし電話もした。
しかし、佑葉は電話にも出ずメッセージに対する返信もなかった。
そして翌日、登校してきた俺は顔を真っ青にした。
教室に入っても佑葉の姿が見当たらず、保健室へと足を運んだ俺は保健の先生から佑葉があれから目を覚まさず、病院へ搬送されたと聞かされた。
懸念していたことが現実になってしまい動揺していた俺はいてもたってもいられず急病で早退すると偽り、佑葉が搬送された病院へと足を運んでいた。
病室の扉を開けると、ベッドに寝転がっている佑葉の横には母親と見られる人物が座っていた。
「……こんにちわ。もしかして旭陽くん?」
なぜ佑葉の母親が俺の名前を知っているのだろうか。
佑葉の母親とは一度も面会したことがない。
「は、はい。そうですけど」
「会えて嬉しいわ。佑葉、家でいつも旭陽くんの話をしてるから」
家でいつも俺の話をしてるって、俺と面と向かって会話をしたことなんてねぇじゃねぇかよ……。
目に涙が浮かびそうになり、俺は目を擦る。
「そう……なんですね」
「まあそんなに気を重くしないでよ‼︎ 今回はいつものやつが偶然長引いてるだけだと思うから。こんな時間にここにいるってことは学校を抜け出してきたのよね? 私、一旦家に帰って荷物を持ってくるからよかったら佑葉のそばにいてあげて」
慣れているのか、佑葉の母親からはあまり重たい空気を感じない。
……いや、痩せ我慢だな。俺の前で悲しい表情を見せるわけにはいかないと気丈に振る舞ってくれたのだろう。
「ありがとうございます」
そして佑葉の母親は病室を出て行った。
俺は病室で佑葉と二人きりになる。
「何で今回は自分の体に戻れないんだよ。戻れないなら戻れないでいつもみたいにプカプカ浮かんで姿を見せてくれよ。迷惑だなんて言わないから耳元で囁いてくれよ……」
「私がいなくて寂しかったですか?」
「--っ⁉︎ 佑葉⁉︎」
急に現れた佑葉に俺は病室で思わず大声を出してしまった。
病院が一人部屋だったことがせめてもの救いである。
「あれ〜〜? 旭陽さんもしかして泣いてました? 泣いてました? よっぽど私がいなくなったことが寂しかったんですねぇ」
「……寂しかったよ。寂しかったに決まってるだろ⁉︎」
「あ、旭陽さん?」
「前からずっと心配してたことが現実になったんじゃないかって気が気じゃなかったよ‼︎ なのに何でそんなケロっとした顔で出てきたんだよ‼︎」
「あ、いや、ちょーっと野暮用があったといいますか……」
「野暮用でみんなを心配させんじゃねぇよ‼︎ 俺だけじゃなくて母親とか先生とか色んな人が心配してるんだからな⁉︎」
「す、すいません……」
「……すまん。ちょっと感情的になっちまった。とりあえずはもう元に戻れそうなのか?」
「はい。そのうち戻れると思います」
「そうか。とりあえず、母親に迷惑かけてもあれだから俺は帰る。それじゃあな」
「え、ちょっと旭陽さん⁉︎」
佑葉から引き止められはしたがそれを無視して俺は病室を出た。
佑葉が姿を眩ました理由を取り除くために。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます