第7話 「幼馴染なあの子」

「今日もお疲れ様です」

「--っ!? だから急に耳元で話しかけるのはやめろって言ってるだろ!?」


 今日も今日とて、俺が下校していると耳元で囁いてきた佑葉。


 恐らく今後俺がどれだけ注意をしても耳元で囁くのはやめてくれないだろう。


「へへへー。おもしろくてつい」

「ついはやめろって何度も……」

「おつかれぇい!!」

「痛って!!」


 佑葉と会話をしながら下校していると、後ろから俺をスクールバッグでどついてきたのは幼馴染の高坂こうさか美莉奈みりな


 家が隣同士ということもあり美莉奈とは幼少期からの知り合いで、髪を短く切りそろえたボーイッシュなその見た目が逆にいいと男子の間で人気が高い。


 そんな美莉奈と俺がこうして会話をできているのは、家が隣というアドバンテージがあるからだ。


「美莉奈か……。何すんだよ急に」

「急にどついてみたら面白いかと思って」

「いや急にどつくな!! どいつもこいつも面白いって理由だけでちょっかいかけやがって……」

「他に誰かから何かされたの?」


 自分の脳みその小ささが恨めしい。


 自ら墓穴を掘るような発言をしにいくとは……。


「あ、いや、別にそういうことでは……」

「というかアンタ、さっき誰かと喋ってなかった? 周りには誰もいないように見えたけど」

「い、いや? 別にしゃべってないぞ?」


 どうやら佑葉と喋っているところを目撃されてしまったようだ。


 佑葉と喋っているところは誰にも見られないよう注意しているし、特に同じ学校の生徒には見られないように気を遣ってはいた。


 それでもこうして目撃証言があるのは気が緩んでいる証拠なのかもしれない。


「なんか友達の間でも最近旭陽が誰もいないのに一人で喋ってるってプチ話題になってるんだけど」


 おい待てプチ話題になってるなんて聞いたことないぞ。


 気を付けているつもりでも結構一人で喋ってるところを目撃されてるんだな……。


 今後は今まで以上に気を付けなければならない。


「……見間違いだろそんなの」

「えー、結構何人も見てるって話だけど」

「人違いじゃないのか? 流石に俺だって誰もいないのに一人で話したりは……」

「私がいるじゃないですか」

「--っ!? だから耳元で話すなって言ってるだろ!?」

「え? 私別に耳元で話してないけど」

「あーいや、あのーあれだよ。ちょっと声でかいなと思って」

「そう? そんなに大きく話してたつもりなかったけどなー」


 俺が焦っている横で、チラッと佑葉の方に目をやると口を押えてぷくくと頬を膨らましていた。


 こいつ本当に……。


 佑葉はパチッとウインクしてから手を振って自分の体がある学校へと帰っていった。


 その後、若干怪しまれはしたもののそれ以上突っ込まれることはなく、俺と美莉奈はそのまま帰宅した。

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