第4話 「倒れてしまうあの子」

 初めて城戸の幽体離脱した姿を目撃した俺は翌日、もう少し幽体離脱について詳しく知っておこうと思い城戸に声をかけるつもりで登校していた。


 すると、通学路で俺の前を歩いていた城戸の姿を見つけ、声をかけた。


「城戸、おはよ」

「--っ!?」


 声をかけて城戸が俺の方を振りむいた瞬間、一言も会話することができないまま城戸はその場で倒れてしまった。


「ちょ、おい城戸!?」


 階段で城戸が倒れてきた時と同じように俺は城戸の体を支える。


 そして周囲を見渡すと、俺の後ろには幽体離脱をした城戸が浮かんでいた。


「す、すいません!!」

「……はぁ。とりあえず保健室行くぞ」


 宙に浮かんだまま頭をペコリと下げる城戸の姿に思わずため息がでる。

 俺は城戸を抱きかかえながら保健室へと向かった。






 保健室に到着したが朝も早いせいかまだ先生はおらず、城戸の身体をベッドに寝かせてから幽体離脱をしている城戸とゆっくり話す時間ができた。


「なあ、もしかするとって話なんだけどいいか?」

「……はい」

「もしかして城戸、俺を見ると倒れるんじゃないか?」

「お恥ずかしながらその通りです……」

「いやなんだよそれ!?」

「わ、私も理由は分からないんです!! も、もしかしたら旭陽さんの顔が怖いせい……?」

「別に怖くないだろ俺の顔!?」


 階段でも俺と目が合った瞬間に倒れていたし、今日も俺の姿を目にした瞬間倒れてしまった。

 いくら頻繁に倒れるとはいえ、そんなことが何度も続けば俺だってそう疑いたくもなる。


 それに、俺と小学生の頃からずっと同じクラスなのに、一度も会話をしたことが無いのはいくらなんでも違和感がある。

 城戸が昔から俺を見るたびに倒れていたのだとすれば、異常なまでに会話をしてこなかった理由についても説明がつく。


「わ、私にとってはちょっと怖い……かも」

「……はぁ。まあそれは置いておくとして、俺を見る以外にも倒れることってあるのか?」

「そ、それはもちろん!! ……緊張したり、驚いたりすると倒れたりします」

「そうなのか。じゃあ単に俺を見なければ倒れなくて済むって話でもないのか……」

「そうですね……。幽体離脱しているときは旭陽さんと話しても倒れることはないので、これからは倒れたら旭陽さんのところに行くようにします‼︎ 迷惑かもしれませんが私が旭陽さんに慣れるよう相手してください!!」

「まあそれは構わないけど……」


 城戸が幽体離脱をしないでも済むようにするための解決策が見当たらない間は、少しでも倒れる回数を減らす対策を取るのが望ましいだろうと考え城戸のお願いを引き受けることにした。


「あ、あと、私のことは佑葉って呼んでもらって構いません!!」

「分かった」


 こうして俺たちは城戸が幽体離脱をしている間は俺のところに来るという約束を取り交わしたのだった。


 あ、城戸じゃなくて佑葉か。


 というか、なんで佑葉は俺のこと最初から旭陽って名前で呼んでるんだろうか。


 まあ特に理由があるわけでもないのだろう。

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