ご主人様と遅めの就寝(一人称視点/時雨)

 ――なんだか眠れなくて、ついご主人様の部屋のドアを叩いてしまった。

 日付はとっくに変わっているけど、ご主人様のことだから、きっとまだ漫画を読んでいるか、アイパッドで絵を描いてるか――「ご主人様も早く寝なよ」なんて言っちゃったから 、自分がまだ起きてるのは矛盾してるかもしれない……けど。


「はーい…………――お、時雨。どうしたの?」

 胸の奥がきゅっとする。

 ……この人はどうしていつもこうなんだろう。

 なんでこういう時に限って、優しい声を出すんだろう。……普段みたいにヘラヘラ茶化してくれればいいのに。

「あ、もしかして……オレが夜更かししてると思って心配してくれたとか?」

「…………うん。ご主人様、ほっとくと寝ないもん」

「うーん、じゃあ一緒に寝てくれる? 時雨が抱き枕になってくれたらオレ、秒でスヤァできると思うし。ね?」

 ……むかつく。

 きっと、全部お見通しなんだろうな。


 布団を掛けられて、背中をゆっくりさすられて――小さな子供をあやすみたいだ。……でも、嫌じゃない。

 頭をそっと預ければ、ご主人様が撫でてくれる。

 ……安心する。あたたかくてやさしい手…………。

「おやすみ」

「うん……おやすみなさい、ごしゅじんさま…………」

 眠気が少しずつ近づいてきた。

 これならすぐに眠れそうだ――。

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