第25話 その子って…ハルの彼女なの…?
セックスした――
倉持晴希は、エッチなホテルで諸星穂乃果と体を重ねたのである。
これで何回目だろうか?
昨日で一応、童貞は卒業した。けど、それをきっかけに、何度も行為に及ぶとは予想はしていなかったのだ。
穂乃果の中に出したが、避妊具は着用済みである。
だから、特にこれ以上、大事にはならないだろう。
晴希はベッドで仰向けになっている彼女を見た。
「なに、晴希? もっとやりたい?」
「違うから……」
穂乃果の肌から視線を逸らすように、否定的に言う。
先ほど、正常の形でやったこともあり、彼女の体を隅々まで見渡すことだってできる。
けれど、恥ずかしさも相まって、余計に彼女の裸体を見ることはしなかった。
晴希は俯きがちになり、一瞬、瞼を閉じる。
「ねえ、晴希……もっとやろうよ。私、もう少し、肌を感じていたいの」
そう言うと、穂乃果は仰向けのまま、晴希の右腕を掴んでくる。
突然のことで、晴希は驚き、咄嗟に瞼を見開いたのだ。
「私ね。晴希がいれば十分だから」
「そんなこと……」
晴希は彼女の瞳を見れなかった。
見つめてしまうと、後戻りできなくなりそうで怖い。
それほど、穂乃果の誘惑から拒絶しがちだった。
セックスをし終えた今、全裸姿で会話しているものの、晴希は一刻も早く逃げ出したかったのだ。
できるなら、お風呂に入らなくてもいい。だから、さっさと制服を身に纏い、普段通りの高校生のように振舞いたいのである。
「晴希って、違うこと考えていない?」
「……考えてないから、それともう僕は帰るから……」
「ダメ。約束が違うし」
「でも、明日も学校だよ?」
「それと……まだ、お風呂入ってない」
「え?」
「だから、セックスしたんだから、お風呂に入る流れでしょ?」
「そうなの、か?」
「そうなの」
穂乃果はハッキリと言う。
そんな彼女は上体を起こし、ベッドに座っていた晴希に抱きついてくる。
「もう付き合ってみるみたいだし、いいじゃん♡」
「まだ、正式じゃないよ……」
「私からしたら、もう正式だよ? それに、今日。校舎の空き教室で漣とちょっとだけ会話してたよね?」
「ん? な、なんでそれを?」
「見ていないとでも思ったの? ちゃんと見てたんだからね♡ ズーッとね♡」
「……」
だからか?
今日、高屋敷漣と会話している時、彼の表情が一瞬変わり。何かに怯えた態度を見せたのは。遠くから穂乃果に見られていたことに気づいていたからなのだろうか?
そう思うと、晴希の中で納得がいった。
「でも、漣って、あまり話してくれなかったね」
「うん……」
穂乃果は晴希の耳元で囁く。
晴希は穂乃果に抱きしめられたまま頷いた。
「もしかして、私のせいなのかな?」
「さあ?」
「でも、私ね。晴希が漣と会話しているの、こっそりと覗いていたんだけどね。たまたま、漣と視線が合っちゃったの。だから、私のせいで、晴希が漣から色々と聞き出せなかったのかなって。そう思っちゃって。やっぱり、私のせいだよね?」
穂乃果の声が小さくなり、鳴き声交じりの口調になる。
泣いている……のか?
互いに全裸である。
穂乃果から一方的に抱きつかれ、生のおっぱいの感触を、晴希は自身の胸に感じていた。
緊張感と怖さ。そして、背徳感に襲われ、体が微妙に震え始める。
「ねえ、やっぱり、私のせいなんだよね? そうだよね、私、悪い子だよね?」
「いや、そうでもないと思う……けど……」
穂乃果は悪い子だと、晴希は内心感じていたが、保身のために軽く嘘をついた。
下手に反撃されても困るからだ。
「ねえ、本当に私は悪い子じゃないの?」
「う、うん。穂乃果は、いい子だと思うよ?」
「本当?」
「うん」
「じゃあ、どこがいい子だと思う?」
「え?」
「だから、晴希が私のことをいい子だって思うなら。私のいいところ言えるでしょ? ねえ、晴希は私のどこがいいと思う?」
穂乃果から更に抱きしめられ、首の辺りが苦しくなる。
それにおっぱいの感触や主張も激しさを増していくのだ。
「全部だから……」
「全部? ……晴希って、本当に私のこと意識してるの?」
「し、してるさ」
「本当かな? でもね、私は晴希のこと、ちゃんと考えてるよ。いつだってね♡」
「そ、そうなの?」
「うん。だからね、今日。晴希の具合がよくなるまで、一緒に保健室にいてあげたの」
穂乃果の、晴希に対する想いが歪んでいく。そんな気がした。
肌同士の重なりで、余計に怖さが蓄積され。
その上、強く抱きしめられていて、逃れられない状況に追いやられる。
「晴希も、私の思いだけを考えていてね♡ 約束だよ♡」
「……」
「……あれ? 聞いてる?」
「う、うん。き、聞いてるから」
晴希は急いで返答した。
穂乃果の声が怖い。
適当な発言ができず、一言口にするだけでも心臓の鼓動が早くなっていくのだ。
「じゃあ、私のどこがいい?」
「親切なところ?」
「他には?」
「可愛いところ……とか……」
晴希は自信なく答えた。
「そう思っててくれたの?」
「う、うん」
「嬉しい♡」
穂乃果は笑みを見せ、晴希の体を求めてくる。
もう限界だ。
帰らせてほしい。
晴希は内心、そう強く思った。
「でも、そろそろ時間なんだよね。お風呂入らないと。晴希、一緒に行こ」
ホテルのチェックアウト時間が迫ってきている。
晴希は穂乃果に誘導され、室内に設置されたバスルームに入った。
そして、五分程度で済ませたのである。
思ったよりも時間がなく、あっさりとした感じであり、制服を身に纏った穂乃果はつまらなそうな顔を浮かべていた。
が、今はチェックアウトが先である。
制服を身に纏った晴希は部屋を出た。そして、後から出てきた穂乃果に、左腕に抱きつかれる。
傍から見たら普通のカップルかもしれない。
それ以前に、制服を着ている時点で、このホテルには入っちゃいけないのである。
ただ、ホテルの管理が緩く、簡単に入れてしまうシステムにも問題があると思う。
晴希は背徳を感じつつ、寄り添う穂乃果と一緒に、ホテルの一階へと向かうのだった。
「晴希。どこに行くの?」
「なんかさ、ちょっと用事を思い出して……」
ホテルを後に岐路についている際、違う方へと向かう晴希は、穂乃果から引き留められる。
「用事? なんの?」
穂乃果は晴希の左腕を掴み、逃さないといった姿勢を見せていた。
「用事は用事というか、まあ、色々とね」
「なんで? 晴希って、私と一緒にいてくれるって。嘘はつかないって、約束してくれたじゃない」
穂乃果の眼が怖い。
束縛するかのような対応の仕方に、晴希はたじろぐ。
「そうなんだけど。ごめん……本当にどうしても」
「嘘つき」
「ごめん」
晴希は必死に、誠意を込めて謝罪した。
やはり、これ以上は身が持たないと思ったから、用事があると自己主張を続けたのである。
「だったら、私が行くね」
「え? ど、どういうこと?」
「だから、私が晴希の家に行くってこと」
「そ、それは、こ、困るよ……」
「私だって、困ってるんです。急に帰るなんて。私、晴希と一緒に入れるなら晴希の家でもいいから。じゃ、行こ」
強引で自分中心的な穂乃果は迷うことなく行動に移す。
初めて出会った時の彼女の姿はどこにもなかった。
そんな彼女に晴希は誘導され、自宅へと到着した頃合い。誰かの気配を感じる。
「あれ? もしかして? ハルの彼女?」
聞き覚えのある声。
ふと、晴希が視線を向けると、そこには近所に住む女子大生――天羽彩葉が佇んでいたのだ。
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