第41話 逆転コンボ

「くそっ、キリがないな……!」


 西門での攻防は、熾烈を極めていた。

 リッチのモンスター効果が作用しているうちはよかった。しかし、上空の大穴からモンスターが再び出現してからは、戦況は厳しくなった。


 なんといっても、第二陣のモンスターにはリッチの効果が効いていない。それゆえに、振り出しに戻ってしまったのだ。


 兵士たちではモンスターを対処することが出来ず、街の方へと押され気味になっている。


 街の中央に立った塔――あそこに元凶がいるってハイフェルトさんが言っていたけど、こんな状況じゃここを離れるわけにもいかない。


「あああああああああああ!!」


「今助けます!」


 腕をモンスターに噛みつかれた兵士を助け、僕は次のモンスターを探す。


 リッチのカードはもうない。<カード化>にカードを作り出す効果がない以上、僕は限られた手札で戦うしかないんだ。

 でも……これじゃ守り切れない!


「レシオ!」


 その時だった。

 モンスターの波をかき分けるようにして、槍を振り回して走ってくる男。それが門の向こうからこちらへやってくるのだ。


「……クリジオさん!?」


 あれはクリジオだ! 全身包帯だらけになりながら、僕の元までやってくる。


「どうしたんですか!? 傷が開いてるじゃないですか!」


 ところどころ赤く血に染まっていく包帯。クリジオは息を切らしながら僕の肩を掴む。


「お前に、これを渡しに来たんだ」


 そう言ってクリジオが差し出してきたのは、二枚のカードだった。


「なんでカードを!?」


「お前がケルベロスとの戦いを終えた後、これが落ちているのを見つけたんだ。そのあとすぐに気を失って、渡すことが出来なかった」


――


ケルベロス レア度:レア (5)

①ケルベロスを1体召喚する。

②『三つ首トリプレット』……任意のカード効果の数値を3倍にするか、カードの効果を3回発動する。

③魔力ステータスを強化する。(0/10)


――


 ……このカード、今僕が求めていたものだ!


「うっ……!」


 クリジオは開いた傷口を抑えてその場にうずくまった。体に限界が来たらしい。


「出来ればお前なんかじゃなくて、フィーテに会いたかったんだけどな……」


「こんな状況まで何を言ってるんですか」


「……だけどな、悔しいが今お前に会えて安堵してる自分がいる。情けないな、まったく」


 クリジオは苦痛に顔を歪めながら僕の手を握ると、真っすぐに僕を見つめた。


「レシオ、お前がフィーテを――いや、この国を守れ! お前なら、それが出来るはずだ!」


 クリジオはそれだけ言い残すと、気を失って倒れてしまった。

 僕は衛生兵にクリジオの保護を任せると、二枚のカードを持って空を見る。


「……守ってみせますよ。言われなくても」


 このカードが手に入った今なら!


「サルベージ、発動!」


 最初に使うのはマシラのカード。


「効果の対象に、リッチを選択する」


 これにより、自分が使ったリッチのカードを回収することが出来る。

 ケルベロスのカードを持つ手に、リッチが追加された。


 この3枚で、状況を変えてやる!


三つ首トリプレットを発動! カードのテキストを変更する!」


 ②『不死王の呪詛』……相手の全ステータスを大幅に下げる。使用制限:1時間に3枚。


 これで、あと2回はリッチのカードを使うことが出来る!


「もう一枚のケルベロスのカードで、リッチのカードを3回発動する!」


 効果の使用制限があるから、実際には発動するのは2回だけど――それでも、効果は充分だ。


「なんだ……!? またモンスターの動きが悪くなったぞ!?」


「これならいける!」


 途端に、兵士たちが活気づく。作戦は成功のようだ。


「本当に憎めない人だな、あなたは」


 クリジオ。今日だけは心からありがとうと言うことにするよ。しっかり休んでてくれ。


「あとは、僕がなんとかする!」


 決意を固めていると、ハイフェルトさんの使い魔のフクロウがこちらへ飛んできた。


「レシオ様。やってくださったのですね、リッチのカードの発動を!」


「はい、これで僕はもう少し自由に動けます!」


「お願いできるでしょうか。今、ミカリス様が戦っておられるはずですので、加勢してください!」


 僕は頷いた後、塔に向かって走り出す。


 おそらく、この大規模侵攻を率いている相手はかなりの強敵だ。


 アイシリアだけじゃない。この国で暮らす全ての人のため、僕はそいつに勝つ!

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