第28話 光の加護
クエストを受注した後、僕は肝心なことを知らないことに気づく。
「そういえば……ゴーレムってどこにいるんだっけ?」
「知らないで受注してたの!? ゴーレムはね、ダンジョンの15層より下にいるんだよ!」
15層……となると、今までの限界だった5層よりもさらに下にいるモンスターにも出会えるな。
さらなるパワーアップのためにも、いろいろなモンスターのカードを集めることは重要だ。
僕たちはさっそくダンジョンに向かい、いつものように攻略を始める。
*
「レシオ、そっち行ったよ!」
フィーテの声がした方から向かってきたのは、大きなクモのモンスター。
カサカサと音を立てて向かってくる群れを、僕は迎え撃つ。
「キィーッッ!!」
力強く剣を振るうと、斬撃であっさりと蜘蛛の頭部が吹き飛ぶ。
断末魔から数秒、足元にはカードが散らばる。僕はそれを慣れた手つきで拾い上げた。
「ポイズンスパイダーのカードが3枚、か」
「ねえねえ効果はー?」
ダンジョンの12層。ここに至るまで、僕たちはかなりいいペースでカードを集めていた。
最初はゴーレム目当てだったけど、これは収穫だったな。手札は多いに越したことがない。
――
ロック鳥 レア度:ノーマル (10)
①ロック鳥を1体召喚する。
②『ピックシーフ』……相手のアイテムを低確率で奪うことができる。
③素早さステータスを強化する。(0/10)
――
――
キラーラビット レア度:ノーマル (10)
①キラーラビットを1体召喚する。
②『2段ジャンプ』……空中に見えない足場を一度だけ生成する。
③素早さステータスを強化する。(0/10)
――
――
ポイズンスパイダー レア度:ノーマル (10)
①ポイズンスパイダーを1体召喚する。
②『粘着の糸』……物と物をくっつける糸を放つ。
③防御ステータスを強化する。(0/10)
――
主なところだとこんな感じか。どれも地味ではあるけど便利な能力だ。
「カードもだいぶ集まってきたねー。これは新しいコンボを考える手も進めないとね」
「そういえば……今朝ステータスを確認したら、新しい能力が追加されていたんだ」
〈光の加護〉。何の前触れもなしに突然現れたその能力を、僕は全く理解できなかった。
どうやらフィーテもそれは同じようで、しばらく唸った後、口を開く。
「要するに、召喚したモンスターに何か効果が付与されるってことでしょ? とりあえず召喚してみたら?」
かなり適当なアドバイス……とはいえ、こういうときのフィーテの意見は的を得ていることが多い。
ひとまず、僕はスライムを召喚してみることにした。
「可愛いー!スライムって敵のときはなんとも思わないけど、味方になって改めて見るとペットみたいだよね!」
さて、これで何か起こってくれたら嬉しいんだけど……。
「……何も起こらないね」
「だね。見当はずれだったのかな? 来るべき時が来たらわかるとか?」
諦めようとしたとき、スライムが何かをひらめいたように目を開き、たったと走り出してしまった。
「どこに行くんだろう? 追いかけてみようよ!」
フィーテと一緒にスライムの後についていくと――目に飛び込んできたのは、驚くべき光景だった。
「キュキュキュッ!」
「ギーッ!」
なんと、スライムがキラーラビットと戦っているのだ。
スライムは同じくらいの大きさのウサギに体当たりをし、必死に相手を打ち負かそうとしている。
「なあ、スライムってあんな風に戦うものだっけ?」
「ううん、ありえないよ! それに、スライムはモンスターの中でも最弱だよ!」
そうだ。ここは12層。キラーラビットだって弱いモンスターじゃない。草原エリアのモンスターが勝てるわけがないんだ。
「今助けるからな! スライム!」
僕はすぐにキラーラビットを倒すと、ボロボロになりながら戦ったスライムを抱え上げる。
「いったいどうしたんだ……? いきなり走り出して戦うなんて……」
「わかったよレシオ! これが<光の加護>だよ!」
フィーテは合点がいったというように手を打つと、スライムを指さした。
「<光の加護>っていうのは、きっとレシオの力がモンスターに反映されるってことなんだ!」
「僕のレベルが上がると、召喚したモンスターも強くなる……ってこと?」
「そう。レシオが太陽で、モンスターがその光に照らされてるみたいな感じでね。そういうことなら説明がつくよ!」
なるほど、確かに彼女の言うことが正しそうだ。
彼女の名推理を褒めようとしたその時、フィーテが少し悲しそうな表情をしたことに気が付いた。
「どうした、フィーテ?」
「いや、大したことじゃないよ。レシオはすごいな、と思って」
フィーテはいつものように僕に微笑みかける。しかし、それが作り笑いであることは明白だった。
「フィーテ。思うことがあるなら言ってくれ」
「本当にどうでもいいことだよ! でも……アタシじゃ、レシオにはふさわしくないかもなって」
フィーテはそう言うと、スライムの頭を撫で始める。
「だって、その<光の加護>って……アタシの
思わずはっとした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます