第24話 目標達成!

「よしっ! ついにやったぞ!」


 朝目を覚ました僕は、ステータスウィンドウを見てガッツポーズをした。


――


 レシオ・ブースト 16歳 男

 レベル30


 スキル

 <カード化>……倒したモンスターをカード化する。カードを使用すると、以下の効果を発動できる。

 ①カード化されたモンスターを召喚する。

 ②モンスター効果を発動する。

 ③ステータスを強化する。

 ④召喚したモンスターに<光の加護>を付与する。


――


 リッチを討伐してから一週間。目標の1か月より前にして、僕はついに目標を達成することが出来た!


 予定よりも早くレベル30に到達できた要因は、何と言ってもこれだろう。


「よく頑張ってくれたな、ドッペルゲンガー!」


 僕が手に取ったのは、ドッペルゲンガーのカード。

 僕たちの予想は当たっていて、ドッペルゲンガーは僕が活動していない時間帯もゴールデンスライム退治をやってくれた。


 経験値は僕に入ってくるので、これまで以上にレベルアップ効率はうなぎのぼり。作業時間も一切増えていない。


「レベル30って……前までじゃ想像も出来なかったな」


 レベル30もあればBランク冒険者にだってなれるかもしれない。Bランクといえば、僕が住む街には一人もいないほどのランクだ。

 

 Cランクまで昇るのは比較的簡単で、この街にも十人程度いる。

 しかし、上がるのが難しいのはそこから。Bランク以上は実績も必要で、おまけに求められる実力のハードルも上がってくる。


 でも、今の僕なら、実績さえ積めばBランクになれるくらいの実力がある。……戦闘の立ち回りなどは素人かもしれないけれど。


「あれ、この<光の加護>ってなんだ?」


 レベルの数字を眺めていると、スキルの効果に④が追加されていることに気が付く。


 <光の加護>ってなんだろう……? モンスターに何か効果を付けることができるのか?

 でも、そもそも光の加護がなんだかわからないな。これは一度試してみないと。


「まあ、まずはフィーテに結果を報告するところからだな」


 レベル30という目標は、僕とフィーテの二人で決めたものだ。最初にフィーテに報告しよう。

 彼女のことだから、今度は一週間でレベル40なんて言い出しそうだけど……その時はまた新しい作戦を考えよう。



「ちょっと、離してよお兄ちゃん!」


「駄目だ! お前に見合うような相手なんているはずがない! その男を連れてこい、俺が痛い目見せてやる!」


 ギルドに到着してフィーテとの待ち合わせの席に行くと――なにやら声が聞こえてきた。


 見ると、フィーテが男に襲われている。男はフィーテの腕を掴み、強引にどこかに連れて行こうとしているようだ。


「何やってるんですか! その手を離してください!」


「レ、レシオ!」


「何、レシオだと?」


 僕が男の腕を掴むと、二人は僕の顔を見つめる。男の方は、ギロリと僕を睨みつけた。


 あれ……なんだこいつ。男の腕をフィーテから引き剥がそうとしているのに、まるで動きそうな気配がない。


 男はオレンジ色の髪をしており、細身だがかなり筋肉質だ。

 紅色の瞳は真っすぐに僕を見据えており、強い気迫を感じる。


「お前がレシオか! よくも妹に近づいてくれたな!」


「妹……もしかしてあなたはフィーテのお兄さん?」


「気安く話しかけるな!」


 男は激しく一喝すると、僕の手を勢いよく振り払う。


「ごめんレシオ、こんなことになって。この人はアタシのお兄ちゃんのクリジオ。Cランク冒険者なんだ」


 Cランク冒険者……ってことは、この街では最高ランクの冒険者の一人か!


「覚えなくていいぞ。お前が俺の名を覚える前に殺すからな」


 クリジオはふんと鼻を鳴らすと、僕を指さしてきた。


「単刀直入に言う! 金輪際、妹に近づくな!」


「なんでそんなことをあなたに決められなきゃいけないんですか?」


「それは、俺がフィーテの兄であり、俺が一番フィーテのことを理解しているからだ。お前のような赤の他人に関わる権利がないからだ!」


「お兄ちゃんはこういう人なんだ……本当に気持ち悪い」


 フィーテが嫌悪感を示していることも気にせず、クリジオは高圧的な態度でさらに僕に迫ってくる。


「アタシって、レシオとパーティになるまではソロだったでしょ? それはね、お兄ちゃんこいつがアタシと関わった奴を攻撃してたからなの」


「攻撃じゃない。防御だ。フィーテに近づく不遜な奴らからお前を守ったんだ! どうせお前も才能があって美人のフィーテに下心で近づいたんだろ!」


 なるほど……相当重症なようだな。


 要するに、フィーテがこれまでソロで活動していたのは、このクリジオが妨害していたからなのか。


「フィーテは才能がある冒険者だ。冒険者になって一か月でレベル4になり、Eランクになったなんて、類まれなる才能だぞ!?」


 自信満々に妹自慢をするクリジオをよそに、僕たちは耳打ちをする。


「……そうなの?」


「……うん。アタシ、一応神童って言われてたから」


 確かに一か月でEランク冒険者なんて話はあまり聞かない気がするな。やっぱりフィーテってすごいんだ。


「そして、俺も才能がある冒険者だ。冒険者になって4年で、俺はレベル22になった!」


 ……ん?


「フィーテも俺も才能がある! 才能が無いのはお前だけだ!」


「でも……僕の方がレベル高いですよ?」


 クリジオが一瞬、絶句した後、僕を再び睨みつける。


「なん……だと?」

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