第22話 買取でビックリ
「いらっしゃいませー……って、レシオさん?」
「メルラ、お疲れ様。今日も買取お願いしたいんだけど」
「ぜひ! お持ちくださってありがとうございますなのです!」
リッチとの戦いの後、僕たちはメルラがいるお店にドロップ品を持ってきた。
メルラはお店の掃除を止めると、いそいそと買取カウンターの方へ小走りで移動する。
「へー、ここがレシオがいつも買取をしてもらってるっていうお店ね……思ったより綺麗なところじゃない」
「そちらの方は?」
「紹介するよ。パーティの仲間のフィーテだ」
二人が互いに挨拶に入ると、メルラは算盤を手に取って態勢を整える。
「それで、今日はどんなアイテムをお持ちくださったのです?」
「ちょっと量が多いんだけど……フィーテ、お願いできる?」
僕が促すと、フィーテはポーチからアイテムを次々と取り出し、カウンターの上に山盛りに置いた。
アイテムが積み上げられていくうちに、メルラの表情が驚きに変わっていく。
「ちょちょちょ、なんですかこの量!? それに、これは――」
「うん、遺跡にいるアンデッドモンスターをちょっと倒してきたんだ」
フィーテが置いたアイテムは、全てアンデッドモンスターのドロップ品。
リッチを倒した後、少し余裕があった僕たちは、ドッペルゲンガーを探すついでにアンデッドモンスター退治をやっていたのだ。
「ざっと30体ってところかな……カードのおまけだから、少しでも値が付けばいいと思って」
「少しどころの話ではないのです! アンデッドモンスターのドロップ品は研究に活用される素材になるから、そのあたりのモンスターよりもはるかに価値が高いのです!」
思えば、アンデッドモンスターは草原エリアのモンスターよりもかなり強いわけだし、値が付くのは当たり前か。
「とりあえず一つずつ見ていくので――ええええええええええっ!?」
さっそく一品目を手に取ったメルラは、また驚きの表情で目を大きく開く。
「ちょっと待って欲しいのです! このローブ、リッチのドロップ品なのです!」
「そうだよ。リッチを倒したところに落ちてたんだ」
「どういうことなのです!? リッチはなかなか現れないモンスター! そのうえ、Bランク以上の冒険者が討伐に向かうような強いアンデッドなのです!」
レベル30――といえば、ちょうどそれくらいか。
メルラが驚くのも無理はない。僕だって、正直勝てるとは思っていなかったんだから。
「これを、たったお二人で!?」
「いや、アタシは何もしてないよ。レシオが一人で勝ってきたんだよ」
「……レシオさんって何者なのです!?」
いや、あれはフィーテが協力してくれたから勝てたようなものであって――、
なんて、言ってもメルラの驚きが引っ込むわけでもあるまいし、黙っておくか。
「お二人のランクはいったいいくつなのです? もしかして、私が知らないだけでレシオさんってAランク冒険者だったりするのです?」
「いや、僕はFランクだよ。フィーテはEランクだね」
「壊れてるのです……ランクシステムが……」
メルラさんはもう驚き疲れたという様子でため息を吐くと、椅子にもたれかかってしまった。
「レシオさん、はっきり言うのですが……あなたの実力はFランクじゃ収まらないのです」
「そう? 僕は冒険者になりたてだし、ちょうどいいような気がするけど……」
「それがおかしいのです! 普通の冒険者なりたては、1か月でリッチを一人で倒したりしないのです!」
フィーテの顔を見ると、彼女も同意といった様子で頷いている。
「レシオさん、あなたは普通の冒険者ではないのです。すぐにでも、ランク昇格試験を受けるのです!」
「昇格試験?」
「ギルドには、ランクを上げるための試験があるのよ。ギルドは実力主義だから、Cランクまでは実績なしでも挑戦できる」
そういえば、ギルドに入るときに聞いたような。
ギルドの職員に言えば、冒険者ランクの昇格試験に挑むことが出来ると。
ランクが上がれば、前よりも報酬が多い依頼を受けることができ、上になれば名声も獲得できる。
これから、リッチ級のモンスターが出現した時、クエストを受注できるようにしておきたい。
そのためにも、ランクを上げることは僕にとって大事なことだ。
「わかった。挑戦してみようと思う」
「それがいいよ。まあ、今のレシオにとってはEランクの昇格試験なんて楽勝だと思うから、Cランクくらいまではすぐに行けると思うよ」
「私も応援してるのです!」
ドッペルゲンガーのカードを手に入れたことで、レベル30までの手立ては見つかった。
あとはランクを上げて、冒険者として認めてもらえるようになるぞ!
アイシリアは確か、今Bランク。だったら、彼女に会うまでに同じBランクになれるようにする!
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