第21話 決着、リッチ!

「うおおおおおおおおおお!!」


 僕の剣とリッチの杖が交じり合う。衝撃が手を伝って返ってくる。


「……くっ!」


 手ごたえは感じる……が、やはりリッチの膂力は圧倒的だ。

 僕は押し負け、地面を横滑りする。


 次いで、リッチが闇魔法の球を無数に生成し、態勢が崩れた僕に向けて放ってくる。


「クリティカルヒット!」


 僕は膝を付いた状態で、剣を横なぎに振り払う。

 闇魔法の球は、僕の剣で、真っ二つに切り裂かれた。やはり、威力が落ちている!


 こうなれば、畳みかけるまでだ!


「ジャイアントバットを9体召喚!」


 僕はジャイアントバットのカードを9枚取り出し、リッチに向かって放つ。

 体長3メートルほどのリッチに対して、ジャイアントバットの体長は20センチほど。


 戦力は圧倒的にこちらが弱いが、ジャイアントバットがリッチを倒すことなんて期待していない。


「視界が邪魔で見えないだろ?」


 ジャイアントバットたちは、リッチの顔に向かって飛来していく。バサバサと激しい音を立て、リッチの障害物となった。

 ――今がチャンスだ!


「コンボ発動! クリティカルヒット、毒牙!」


 奴がジャイアントバットに気を取られている間に、強力な毒攻撃を追撃する!

 この毒攻撃のコンボで、リッチをさらに弱らせる! 名付けて――、


「<ポイズンストライク>!」


「オオオオオオオオオオオン!!」


 リッチの背後に回り込み、剣を振り下ろす。

 その一撃は今までで一番の手ごたえとともに、リッチにダメージを与えた。


「キキギッ!」


 ちょうどその時、最後のジャイアントバットがリッチの杖で落とされてしまった。

 邪魔がいなくなったリッチは、乱暴に杖を振るって反撃をしてくる。


「くっ……!」


 さすがにしっかり食らうと、体が痛いな……!

 だけど、ここで押されたらさらに追撃を許してしまう!


「<ポイズンストライク>!」


 もう一度、斬撃を食らわせると、リッチが初めて後方へ押された。

 いいぞ、着実に相手を弱らせている!


「ウオオオオオオオオオオオ!!」


 リッチは苦し紛れに魔法を乱れ撃つ。

 激しい音を立てて、地面に闇の球が落ちていく。


「どうした? 狙いが足りないんじゃないのか?」


 奴の放つ魔法は、さっきより精度が低い。僕は素早くかわし、リッチに肉薄する。


「もう一度、<ポイズンストライク>!」


 四度目の<ポイズンストライク>は、疲弊したリッチにかなりダイレクトに直撃した。


「ウオオ……オオオ……!」


 リッチは今の一撃がかなり堪えたのか、背を向けて僕から逃げ出そうとする。


 立場逆転。だが、僕は絶対にお前を逃がさない!

 よろよろと歩くリッチに、僕は集中を高めて切っ先を向ける。


「これが俺の……切り札だ!」


 右手で剣を握りしめ、左手に二枚のカードを持つ。


「最後の、<ポイズンストライク>!」


 僕はリッチの背を追いかけて、回転斬りを叩きこむ。


「ウオオオオ……オオオオオオオオオオオオ!!」


 会心の一撃クリティカルヒットを食らったリッチは、遺跡中に響き渡るような断末魔を上げ――絶命した。


「……やった」


 僕は安心感から崩れ落ち、大きく息を吸った。


 勝った。格上のリッチを、倒すことが出来た!


「やったよ、アイシリア」


 ずっと、自分に自信がなかった。

 才能がなかった僕は、一生アイシリアに追いつけないのではないかと思っていた。


 <カード化>の能力に目覚めても、強くなっている実感はなかった。

 レベルだけが上がっても、彼女の隣に立てるような冒険者になんてなれないんじゃないかと思っていた。


 でも――僕はやった。昔とは比べ物にならない。格上の相手と戦って、勝つことが出来たんだ!


「さて、フィーテが心配するから帰ろうかな……」


――


 レベルが19になりました。

 レベルが20になりました。


――


 強敵を倒したから、レベルも上がったな。

 そして、リッチを倒したからカードも手に入る。


――


リッチ レア度:レア (5)

①リッチを1体召喚する。

②『不死王の呪詛』……相手の全ステータスを大幅に下げる。使用制限:1時間に1枚。

③魔力ステータスを強化する。(0/10)


――


「なんだこれ? 全ステータスを下げるって、あんまり強くない能力じゃないか?」


 せっかくリッチを倒したのに、これじゃ戦闘で使ってすぐに無くなってしまう。

 まあ、強くなったらまたリッチを倒してカードを集めればいいか。カードは何枚でもドロップ出来るんだから――、


「……いや、待てよ?」


 もし僕の仮説が正しければ――このカードは、今までのどのカードよりも強力になりうる。

 いや、『他のカードよりも強い』なんてレベルじゃない。『圧倒的に最強の』カードじゃないか――!


「……とはいえ、今はこの一枚だから検証は出来ないんだけどね」


 大人しく、今日は帰るのが吉だな。

 僕はカードケースにリッチのカードをしまい、帰路についた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る