第15話 さらなる進化

 レベルアップの効率化に成功してから、さらに一週間が経過した。

 僕たちは相変わらず、この方法を繰り返すために朝から集合していた。


「よっ、時速5レベルアップの男!」


「おはようフィーテ。……その呼び方、なんとかならない?」


「褒めてるつもりなんだけど、嫌だった? まあ、事実だし!」


 時速5レベルアップかどうかはさておき、フィーテの言う通り、僕はかなりのペースでレベルを上げてきた。


――


 レシオ・ブースト 16歳 男

 レベル18


 スキル

 <カード化>……倒したモンスターをカード化する。カードを使用すると、以下の効果を発動できる。


――


 レベル1から、2週間で18か。本当に信じられない数字だな。

 それもこれも、フィーテとゴールデンスライムのおかげだな。


 僕はステータスを確認した後、カードケースの中のゴールデンスライムのカードを取り出した。


――


ゴールデンスライム レア度:レア (5)

①ゴールデンスライムを1体召喚する。

②『黄金の輝き』……強烈な光で10秒間相手の視力を奪う。使用制限:1時間に1枚。

③素早さステータスを強化する。(10/10)


――


 ゴールデンスライム狩りをしたことで、このカードも所持できる数のマックスの5枚になっている。能力の使いどころはイマイチよくわからないけど。


 とまあ、こんな感じで僕の冒険はおおむね大きく上手くいっている。

 ――だけど、一つだけ懸念点があった。


「あと2週間でレベル12……行けるかな?」


 目標だった、1か月でレベル30に到達できるか怪しいのだ。

 レベルが上がるにつれ、経験値の伸びが悪くなっている。レベル10を超えたあたりから、1匹倒してもレベルが上がらなくなってしまったのだ。


 ここからさらにペースが落ちていくとなると……30はかなり厳しい。

 ゴールデンスライムが見つかる回数にはばらつきがあるし、一日フル稼働でも1上がるかはわからない。


「やっぱり難しそうだよね……アタシも薄々そんな気がしてたんだ」


 フィーテも同じことを考えていたようで、腕を組んでうーんと唸り始めた。


「……目標、下方修正しない?」


「出来ればしたくない。せっかく立てた目標だし、いずれは超える道だから」


「だよねー。アタシも出来ればしたくない。でも、現実問題それは難しいしなー」


 僕たちは天井を見つめ、しばらく思考を巡らせた。

 目標は下方修正したくない。だけど、このままだとレベル30には間に合いそうにない。


「……新しい作戦、考えよっか」


 僕もそれがいいと思う。やはり、現状を変えるには新しい作戦が必要だ。


「はいっ! アタシ思いついたんだけど、ゴールデンスライムの上位互換を探すなんてどう? 1匹倒すとゴールデンスライムの10倍くらい経験値が貰えるモンスター、みたいな!」


「そんなモンスター本当にいるの? ここ1週間で1回も見かけなかったけど……」


「まあ、そんなモンスター知らないんだけどね。やっぱり没かー。そう上手くいかないなあ」


 ゴールデンスライム越えのモンスターに期待できない以上、稼働時間を増やすか、時間当たりの経験値量を増やす方法を考えるしかない。

 だけど……そんな方法あるのか?


「うーん、レシオが夜にゴールデンスライム探しをできればいいんだけどなあ」


「寝る時間は確保したいよ」


「じゃあ、レシオが二人になって、どっちか片方が夜に活動するとか!」


「どうやって分裂するんだ……」


 真面目に考えてよ、と言おうとしたその時。


「いや……出来るかもしれないぞ、分身!」


「え、本当!? やってみて! 3、2、1、はいっ!」


「今すぐにって意味じゃないよ! 分身できる能力を持ってるかもしれないモンスターがいる!」


 僕はすぐに辺りを見回すと、クエストが張り出されている掲示板に、目当ての張り紙がされているのを見つけた。

 僕はそこを指すと、フィーテは張り紙の文字を読み始める。


「えーと、『アンデッドモンスター系アイテム、買取強化!』? どこかのお店の張り紙?」


「フィーテは『ドッペルゲンガー』って聞いたことある?」


「そりゃ聞いたことあるけど……あ、そうか!」


 フィーテも僕の真意に気づいたようだ。


 ドッペルゲンガーとは、アンデッドモンスターの一種だ。

 アンデッドモンスターが多く出現するところに現れるのだが、特徴的なのは、自分と同じ見た目をして姿を見せるのだ。


 ある冒険者が薄暗い遺跡を歩いていると、奥から誰かがすすり泣く声が聞こえる。

 誰かがいるのかと思って奥に進むと、一人の人間が膝を折って泣いている。冒険者は恐る恐る、その人物に声をかけた。


 すると、泣いているその人物は――自分自身だったという。


「ドッペルゲンガーなら、僕の分身になって夜も活動してくれるかもしれない!」


「でも、ドッペルゲンガーが強くなっちゃうってことはない?」


「大丈夫、もし分身が出来るとしたらモンスター効果だし、一度カードにしたからには僕の能力だとカウントされると思う」


 僕たちの次なる目標――それは、アンデッドモンスターの討伐だ!

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