第14話 コンボ完成

「もう一度! 獣の嗅覚、発動!」


 2枚目のコボルトのカードを使用し、モンスター効果を発動した。


 起こることはさっきと同じ。ウィンドウが出現し、周辺の生き物の情報を表示してくれる。


 僕は2匹目のゴールデンスライムを探し、リストに目を通す。


「あれ……見つからないな」


「近くにはいないってことかな? そもそも、これってどれくらいの範囲のモンスターを表示してるんだろ?」


 フィーテはそう言うと、手を挙げたまま走って僕から離れて行った。


「どうー!? リストに変化あったー!?」


「今のところは特に……あ! 今、変わった!」


 しばらくフィーテが走ると……リストから、『人間』の文字が消えた。


「今、アタシはここにいるから……だいたい範囲は100メートルくらいだね!」


 フィーテはちょっと疲れた様子で走って戻ってくると、ふうと息を吐いた。

 これで対象となる範囲と、生き物が移動すればリストに変化が起きることもわかった。


「とりあえず、効果の対象を指定しないで、ゴールデンスライムがリストに表示されるように探してみようか」


 フィーテの提案通り、僕たちはしばらく草原エリアを探索することにした。


 リストを凝視し、ゴールデンスライムという文字を探す。

 歩き続けること、5分。


「見つけた!」


 リストにゴールデンスライムが表示された! 近くにいるぞ!


「獣の嗅覚の対象に、ゴールデンスライムを指定!」


 すると、ちょうど100メートルほど先の草むらに反応があった。あそこにゴールデンスライムがいるぞ!


「フィーテ、あいつ倒してみる?」


「アタシじゃあいつに近づいた瞬間逃げられちゃうよ。気にしないで、レシオやっちゃって」


「わかった! 液状化!」


 僕は再び液状化してゴールデンスライムに近づくと――一思いに剣で倒してしまった。


――


 レベルが8になりました。

 レベルが9になりました。


 <カード化>の③の効果が解放されました。


――


「またレベルが2に上がった……って、ん?」


 レベルが上がったと同時に、また新しい能力が追加されたようだ。


「どうだった?」


「レベルは9になったよ。それから……③の効果が解放されたって」


「また新しい効果が増えたってこと!? 確認してみようよ!」


 僕はステータスをオープンし、スキルの欄を確認する。


――


 スキル

 <カード化>……倒したモンスターをカード化する。カードを使用すると、以下の効果を発動できる。

 ①カード化されたモンスターを召喚する。

 ②モンスター効果を発動する。

 ③ステータスを強化する。


――


「ステータスを強化する、って書いてあるな……」


「カードを見てみればいいんじゃない?」


 確かに、カードに記述が増えているかもしれない。

 試しに、スライムのカードを見てみることにした。


――


スライム レア度:ノーマル (10)

①スライムを1体召喚する。

②『液状化』……自分の体を液状化する。

③素早さステータスを強化する。(0/10)


――


「多分、これのことだよな……でも、ステータス強化ってなんだろう?」


「普通に考えれば、この効果を発動すれば身体能力が上がるってことだよね。試しにやってみたら?」


 考えていても仕方ない。僕は試しに、持っているスライムのカードのうち1枚を使ってみることにした。


「スライムを使用して、ステータス強化を発動!」


 宣言した瞬間、いつものようにカードが消滅する。


 ……が、特別何かが起こった様子はない。


「ねえ、もう一度カードを見せてくれない?」


 フィーテにカードを渡してみると、すぐに違和感に気づいたようだった。


「見て。『素早さステータスを強化する』の隣の数字が0から1に変わってる」


 確認すると、その通りだった。(0/10)という数字が増えている。


「もしかして、10っていうのは能力の使用回数の上限ってこと?」


「アタシもそうだと思う。カードを使うたびに身体能力が上がって、1枚のカードにつき10回まで発動できる」


 1枚ではすぐに実感できないけど……10回も発動すれば大きく変化しそうだ。

 特に僕は、レベルが同じ人と比べても体が強くない。だから、この能力は地味に見えてかなり重要だ。


「1種類のカードに強化できる上限があるなら、たくさんの種類のカードを集めるのも大事だよね~」


 これでますます、いろいろなモンスターを倒す必要が出てきたって感じだな。


「にしても……レシオがもうレベル9か。一瞬で追い抜かされちゃったね」


「フィーテのレベルはいくつなの?」


「4だよ。だからゴールデンスライムを倒すまでは並んでたんだけど。まあ、こうも一瞬で9までレベルを上げられると悔しくもないよね」


 コボルトの獣の嗅覚でゴールデンスライムを発見。

 スライムの液状化で気配もなく接近。

 ゴールデンスライムを倒して経験値を大量獲得。


 これから2週間で見つけようとしていたレベルアップ効率化の方法を、僕たちはたった数時間で発見してしまった。

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