第2話 はじめてのカード!
やってきたのは、街の東口を出た先に広がる草原だ。
街を出ると、モンスターが生息している。中でも、ここのモンスターは一番弱いことで有名だ。
「さて、草原に来たまではいいけど……問題はここからだな」
僕は手に持ったナイフを見つめる。
村から出るときに貰った金で買った、安いナイフ。新入りの冒険者の中でも格落ちするくらいの品質だろう。
「このナイフでスライムを……倒せるかなあ……?」
僕がスライムに負ける理由ははっきりしている。
スライムは体が小さく、一撃入れることさえできれば倒すことが出来るほどの強さだ。
しかし、問題なのはスピード。奴はちょこまかと素早く動き回り、まるで攻撃が当たらない。
そうして攻撃を外しているうちに、スライムは僕の体に体当たりを仕掛けてくる。
普通の冒険者ならまずそれで負けることはないが、僕はそれで体勢を崩してしまい、さらに追撃を許してしまう。
何度試してもそのパターンにハマってしまい、勝てない。
「先手必勝で攻撃してみるか? ……いやでも、僕のスピードじゃ無理か?」
「おーい、レシオ!」
その時、一人の少女が俺に手を振って走ってきた。
「フィーテ!」
彼女はフィーテ・アーリルド。俺と同じFランク冒険者で、たまたま同じ日に登録をしたので、そこで知り合ったのだ。
オレンジ色の髪をポニーテールにしており、青色の目は優しく俺を見つめる。
「よっ。街で見かけたからついてきちゃった」
「そういうことか。今、スライムと戦おうとしてるところなんだ」
「えっ、でもレシオは……」
「あはは、やっぱ思うよね……」
僕がスライムすら倒せないことは、フィーテも知っている。
「だったら、アタシが回復してあげよっか?」
「え、フィーテが?」
「うん。だってアタシ
「でも悪いよ。せっかくの休みなのに」
「じゃあ、クエストの報酬でご馳走でもしてもらおうかな~。そうすればウィンウィンでしょ?」
フィーテは僕みたいな相手にも優しい。ご馳走というのも、僕が遠慮しないようにだろう。
ここまで言われて、断るのは失礼だ。僕は彼女の好意に甘えることにした。
僕が頷くと、フィーテは近くにいるスライムを指した。
「さ、やってみて! カバーはアタシがやるから!」
「わかった!」
僕は返事と同時にナイフを握り、スライムに向かって突進を仕掛ける。
「うおおおおお!!」
ナイフを振り払うと、足元の雑草がスパッと音を立てて切れる。
が――外れだ。スライムはその場でジャンプし、攻撃を躱してしまった。
「キュッ!」
次の瞬間、スライムが着地すると同時に体当たりで突っ込んできた。
しまった! やっぱりいつものパターンだ!
「諦めないで!」
腹部にスライムの体がぶつかる。しかし、そこで違和感を覚えた。
「あれ……? 痛くない?」
「アタシが
そうか、フィーテの魔法で僕の防御力が上がってるんだ!
これなら、倒れることなく受け止められそうだぞ!
「よくもいままで好き勝手やってくれたな!」
「キュッ!?」
僕はボールのようなスライムの体を抱きかかえるように掴むと、ナイフを握りしめた。
ジタバタと暴れるスライムを抑えたまま、僕はナイフをスライムに突き立てる。
ナイフを通じてブルブルという感触が伝わってくる。スライムの体内に刃が刺さった。
次の瞬間、スライムはバケツをひっくり返したようにドロドロの液体になって地面にこぼれてしまった。
「やった――勝った!」
「おめでとう!」
僕たちは勝利を噛みしめ、ハイタッチをした。
「見て! あれがカードじゃない?」
フィーテが指す方を見てみると、スライムのドロドロが消え、一枚の紙が落ちていた。
「あれが――僕のカード!」
急いで拾うために手を伸ばした、その時のことだった。
――
レベルが2になりました。
<カード化>の②の効果が解放されました。
――
「なんだ今の……?」
「もしかして、レベルがあがった?」
脳に鳴り響くような無機質な声――これがレベルアップか。
レベルアップをすると、身体能力や魔力が向上する。強い冒険者になるための僕の目標は、このレベルアップにあたる。わけだけど――、
「レベルアップだけじゃない。<カード化>の②の効果が解放されました、って言ってたんだ」
「どういうこと? レシオのスキルが関係してるとか?」
僕はすぐにステータスウィンドウを開いてみた。
すると、変化はすぐにわかった。
――
レシオ・ブースト 16歳 男
レベル2
スキル
<カード化>……倒したモンスターをカード化する。カードを使用すると、以下の効果を発動できる。
①カード化されたモンスターを召喚する。
②モンスター効果を発動する。
――
「モンスター効果……?」
見慣れない文字に、僕は首を傾げる。
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