「スライムも倒せねえ雑魚は消えろ!」と言われたFランク冒険者は、チートスキル<カード化>で世界最強になる。

艇駆いいじ

第1話 スライムも倒せない僕

「嘘だろ? スライムも倒せねえ雑魚なんて存在するのかよ!」


 パーティ加入の面接中。何度聞いたかわからないその言葉に、僕はため息を吐きそうだった。


「おい、見ろよあいつ……また面接なんかしてるよ……」


「ああ、あのスライム君だろ? 何回やっても同じなのに、よくやるよな……」


 呆れるパーティリーダーの顔。冷やかすような周囲の声。全てがいつも通りだった。


「えーっと、レシオ・ブーストだっけ? お前、何歳?」


「はい。16歳です」


「16歳でレベル1はいくらなんでも才能ないだろ。ユニークスキルを持ってても、そのレベルじゃ悪いけど、うちのパーティには入れられないから。それじゃ」


「ま、待ってください!」


「しつこい! スライムも倒せねえ雑魚は消えろ!」


 パーティリーダーがすごい剣幕で怒鳴った後、席を立った。僕は一人、誰もいないテーブルの向かい側を見つめてため息を漏らした。


「やっぱり駄目かあ……」


 実績解除。パーティ加入面接、30連敗。

 冒険者になってから1か月半。僕はパーティに入るために面接を受け続けてきたが、反応はどれも、さっきと同じようなものだった。


 原因は大きく二つ。


 一つは、僕の実力不足だ。

 僕は生まれつき力が弱く、スライムすら倒せないほどだった。もちろん、レベルは1。


 もう一つは、僕のスキル。人は一人につき一つスキルを持つのだが、僕は世界に一人しか手に入らない『ユニークスキル』を持っていた。


 それは、<カード化>。効果は、モンスターを倒すと、そのモンスターをカードにすることができるというものだ。

 カードにすると、任意のタイミングで自分の仲間として召喚することができる。……らしい。


 ここまでの話を総括すると、こうだ。


「ステータスオープン」


――


 レシオ・ブースト 16歳 男

 レベル1


 スキル

 <カード化>……倒したモンスターをカード化する。カードを使用すると、以下の効果を発動できる。

 ①カード化されたモンスターを召喚する。


――


 僕は何度見たかわからない、貧弱なステータスをぼんやりと眺めた。


 こんなステータスで、仲間に入れてくれるパーティがあるはずがない。それは自分でもよくわかっていた。

 だが、僕にはどうしても冒険者を続けたい理由があった。


「なあ、聞いたか? 『炎の勇者』がもうBランク冒険者になったんだってよ!」


「確か半年前に冒険者になったばかりじゃなかったか? 学院を出てるとはいえ、いくらなんでも早すぎだよな……」


 席に座っていると、さっき僕の噂話をしていた冒険者たちがまた話を始めた。


 炎の勇者というのは、個人に与えられたあだ名のことだ。由来はシンプルで、<炎の勇者>というユニークスキルを持っているからだ。

 炎のほかにも、<水の勇者>、<風の勇者>、<土の勇者>の3つのスキルが存在する。


 この勇者シリーズが特別な理由は、その効果が絶大であることのほかに、定期的に出現するからである。

 最初に<勇者>のスキルが確認されたのは2000年前。それから定期的に<勇者>スキルを持って生まれてくる子どもが現れるのだ。


 そして、何を隠そう、現代の<炎の勇者>は――、


「すげえよな、炎の勇者アイシリア!」


 僕の幼馴染なのである。


 僕たちは12歳まで同じ村で過ごした。親同士も仲良かったため、よく遊んでいた。

 そして、僕はいつしか彼女のことが好きになっていた。


 だが、事件が起きたのは13歳の時。スキルが明らかになるなり、アイシリアは勇者として生きることを強制された。

 僕は村に残り、アイシリアは学院へ入学。僕たちは離れ離れになった。


 それでも、僕は彼女のことが諦められなかった。強くなれば彼女と一緒にいられるのではないかと思って冒険者になる道を選んだ。


 しかし……結果はこれだ。


 今日までスライムすら倒せず、他の冒険者はパーティに入れてもらえない。

 僕はこのまま一生、雑魚のままなんだろうか。


「……なんて、言ってても仕方ないよな」


 僕は席を立ちあがり、クエストが張り出されている掲示板から一枚の紙きれを取った。


 クエスト名は『スライム討伐』。新入りの冒険者がやるクエストの代表だ。


 これまではパーティに入れてもらうことを考えてきた。だけど、僕が強くならなければ、それは無理だ。

 こうなったらソロでもやってやる。なんとしてでも強くなるんだ!


 僕はそれを受付で提示した後、街の外へ出た。

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