学校一の美少女が醜い嫌われ者の俺を好きになるわけないだろうが!!!
斜偲泳(ななしの えい)
第1話 彼が嫌われ者になったワケ
子供の頃はみんな天使のように可愛いというが、そんなのは嘘っぱちだ。
俺、
遺影に残る悪魔みたいな姿の親父の血を色濃く継いで、俺も悪魔みたいな顔に生まれてしまった。邪悪で不気味で恐ろしい、見る者を怯えさせ、不安にさせ、疑心を抱かせる、そんな顔だ。
一番古い記憶は幼稚園。ほとんどの子供が俺を怖がって避け、たまに遊びに混ぜて貰っても、ヒーローごっこで悪役を押し付けられるだけだった。
小学校に上がると俺への風当たりは順調に悪化した。周りの子供は避けるだけでなくからかう事を覚え、俺はアクマのあだ名でイジメられた。良い事をしてもちろん、ただ普通にしているだけでアクマの癖にと笑われた。悪い事が起きれば全部アクマのせいだ。クラスの男子は成敗とか言って何もしてない俺を暇つぶしに痛めつけ、女子の間では俺に冤罪を着せて被害者ぶる遊びが流行った。
それでもその頃の俺はまだ希望を持っていた。人は見かけじゃない。清く正しく生きていれば、本当の俺は無害で善良な人間だと分かってくれる奴もいるはずだと愚かにも信じていた。
中学生になって、俺は今度こそ人に好かれる人間になろうと決意した。精一杯身なりに気を使い、いつも笑顔を心掛け、積極的に人の輪に入り、人助けをして、他人に優しくした。
結果は散々だった。
俺は悪魔みたいな顔をした腑抜け野郎と舐められて散々イジメられた。肉体的にも精神的にも金銭的にも。クラスメイトは勿論、同級生、上級生、下級生にすら俺はイジメられた。俺を見つけたらイジメるのが義務であるかのように、名前も知らない、話した事もないような奴が俺にちょっかいをかけてきた。
俺はどうしたらいいのか分からなくなった。もはや、人並みに人に好かれたいとか友達が欲しいなんて贅沢な事は望まなくなっていた。ただ、放っておいて欲しかった。いじめられずに、バカにされずに、からかわれずに、そんなささやかな平穏があればそれでよかった。それすらも、その時の俺には夜空の星を手にするよりも難しく思えた。
本当は、息をするくらい簡単な事だったのに。
ある時俺は限界を迎え爆発した。幸か不幸か、悪魔みたいな顔をした俺の身体には、悪魔みたいな力が宿っていた。気が付くと周りには、いつも俺をイジメていたクラスの男子が五人、ボコボコになって倒れていた。盛大に鼻血を流しながら、みっともなく泣いて俺に許しを乞うている。周りで見ている他のクラスメイトは、悪魔を見るような目をして怯えていた。
それで俺はようやく悟った。俺は醜い嫌われ者だ。その事実から目を背けて人間の真似なんかするからおかしくなるのだ。誰もが俺を嫌うなら、俺も他人を嫌えばいい。いい人になんかならずに、素直に嫌われ者になればいい。そうすれば周りも俺を恐れ忌み嫌い、勝手に離れてくれる。ヘタに友達を作ろうと悪あがきをして惨めにイジメられるより、よっぽどいい。
開き直った瞬間、俺の人生は一変した。
ようやく俺はささやかな平穏を手に入れた。
時折トラブルは起きるが、イジメられていた頃と比べれば些細な事だ
俺のささやかな平穏を維持する為の、ちょっとした必要経費のようなものだろう。
そうして俺は高校生になり、一年間を何事もなく過ごした。
思い出す事など一つもない、真っ白な一年だ。
それでいい。
ささやかな平穏が守れるのなら、青春なんか捨ててやる。
俺はもう間違えない。
欲張らない。
勘違いしない。
誰にも心を開かずに、一生醜い嫌われ者として生きていくと決めたのだ。
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