エッセイ:ママーと叫ぶカラス

 ひとがしゃべる言葉を真似て発音する鳥といえば、先ず思いつくのはインコ、九官鳥、オウム、etc.・・が思い浮かぶ。それが意外にもカラスが言葉をしゃべったんです。


 出先へ向かっているときだった、何処からともなく聞こえる「ママー・ママー」

 辺りを見回したが、それらしき子連れの母子の姿はいない。いったい何処にいるのかと探してみるが、それらしき母子は居ない。探しながら母親を呼ぶその声に異和を感じる。それは、幼い子供が母親を泣きながら呼ぶあの甲高い声ではなく、声質に違和感があった。


 青年期でもなく就学前の子供の声とも違うのだからどんな子がと気になった。

 気になって辺りを見回すと民家のベランダに一羽のカラスを見つけた。カラスはキョロキョロしてはしゃべっていたのだ。「ママー・ママー」っと・・感情のこもらない無機質な声でである。


 カラスがしゃべった!まさかカラスがしゃべるとはビックリした。

 まぁ、一つの単語だけなのだが、実際、驚いた。自分の耳で聞いた事実なんです。


 カラスはギャーギャー、 カァーカァー、 グアァ~カカカーと鳴くのは良く見かける、が、このカラスは違った。ひとの言葉そっくりに「 ママー・・ ママー・・ 」と鳴いているのだから不思議だと思った。 


 動物や鳥類が鳴くのは、そう・・外敵が来たと仲間に危険を知らせ合う時、同種の鳥が自分の縄張りに進入すれば追い払う時とか、または繁殖のため異性を呼び合うなど等だ。

 それが・・ママ―ママ―と鳴くものだから驚いた。


 なぜこのカラスは人真似をするのだろうか?

 考えてみれば人間の赤ちゃんの泣く声を常に聞こえるところで雛から育ったカラスだとすれば納得できる。


 つまりカラスが雛だった頃、巣が人家に近くにあった、その人家には幼い子供が一日中「ママーママー」と叫んでいたに違いない! 

 とすればカラスの雛は「ママー」と云うフレーズをしっかり覚えてしまったのだと考えると納得できそうだ。


 他のカラスはギャァー・ギャァー鳴いてカラス同士のコミュニケーションをとるのに、ママー ママーと鳴いていたのでは完全にカラス国では外国人!いや外国鳥扱いされてしまう。仲間の鳴く言葉を理解できなければ今後仲間同士のコミュニケーションが巧く取れるかと心配するのだけれど・・大丈夫でしょうかね? まぁ カラスの勝手ですかネ!


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 それから四年経ったある日のこと・・ 


 愛犬との散歩の途中(2007年10月)懐かしいあの「ママ~ ママ~」と鳴くカラスの声が5~6kmほど離れた所で再び聞こえたのです。ちょいと嬉しくなってママーと鳴く声のする方向に目を遣ると、とあるマンションの屋上で例の「ママー・カラス」一羽が翼を休めて愛嬌のある声でママー・ママーと鳴いているのを見つけたのです。


 初めてカラスの鳴き声を聞いたのは2003年、その四年後に再会したママ・カラスは相も変わらず元気でした。カラスの行動範囲とは都市部で5km~10Km、郊外では2~30Kmほどだという。まぁこれだけ行動範囲が広ければ会えなかった訳にも納得です。


 カラスの寿命は大体7年~30年と言う一説があるからこれから先、いつかどこかでママ・ガラスと会えることを楽しみとします。 

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