第40話 力
すいません!バイトと学校が忙しくて投稿が遅れてしまいました!
この外伝は10話位で終わらそうと考えてます、少々長いかもしれませんがどうかお付き合い下さい。
「グッ、ハァハァハァハァ、やっど、全部、だおしぎったか⋯⋯」
「たぐっ、多すぎ、だろっ!」
メル達が相対していたあの化け物たちはメル達の奮闘により全て倒すことに成功していた。
「まだ、まだいるぞっ、あの、でけぇやつがなぁ!」
つかれきっている、腕も上がらず足も動かない、最早意識を保つのでさえ精一杯なほど疲労した状態で男たちは未だ奥にいる親玉を倒す気でいた。
「やるか」
「やるしかねぇよなぁ」
「この街を守るために」
立ち上がる、ただ立ち上がり、前をむく。
それでも受けた傷が癒えるわけじゃない、気力だけでは出来ないこともある、だからこそ彼女がいる。
「行ってこい、あんたたちの傷は全て私が治してやるさ」
「「ダルクちゃん!」」
その後方には金髪幼女のジャンヌ・ダルクが大手をふるって立っている。
彼女の力によって男達の傷はたちまち癒えていく。ジャンヌは簡単にやってはいるが1度に大勢の傷を癒すなど、奇跡と言う他ない程の神業であった。
そして彼女のその奇跡の力は安心は少なからず男たちに安心感を与えていた。
男たちは立つ。もう震えない足にめいいっぱい力を込めて前を向く。
もう大丈夫だと心に言い聞かせる。
「行くぞ」
「「おぉ!!」」
・
化け物が訪れたことにリートン達が気づく少し前
謎の液体を入れた丸底フラスコは熱され赤い色をまといながら液体を沸騰させる。
試験管に入れられた色とりどりの石のような物体は乾燥機のようなものに入れられている。
さらに人型に抜き取られた鋳型、定期的に紫色の液体が落ちてくる注射器のようなものがそこにはあった。
静かで不気味、どこか寒気さえするようなそんな場所にリンナはいた。身体中毛むくじゃらで爪は伸びきっている。のっそりとした動きでその部屋を歩き回る。
「おい、まえ、言っていた、ことは、どういう、ことだ、教えろ」
「あ、あぁもちろんだとも」
リンナがそう聞くと部屋の中心にて居座っているメガネの男が答える。
この男の名前はケルシュタイン、この街グレイスの唯一の研究者である、この男は以前カイナ誘拐の容疑者の一人として挙げられていたものであった。
結果としては犯人はクルティカだったが、この男、金の為ならばとクルティカに協力し、やつのクローンの心臓に魔力を阻害させる機械を埋め込んだのだ。
さらに、リンナをこんな姿にした薬を作ったのもケルシュタインである。
そんな人間をジルが見逃すはずもなく、その事実を知ったあとはボコボコのボコボコにし、もう二度と訳の分からないものを作らないということを誓わせたのだった。
そしてリンナが言った前言っていたこと、というのはリンナの体に眠る潜在能力についてのことだ。
ジルに殴られたあとのケルシュタインがリンナにだけ聞こえるような小さい声で言った”真の力が欲しければ二週間後、またここに来い”と、その言葉をリンナは信じてここを訪れたのだ。
リンナは思ったのだ、今のままの自分ではまた弄ばれておもちゃにされるだけだと、そんなのはごめんだと、もう弱いままでいるのは嫌だった、このまま生きるくらいなら死んでやると、それほど強い意志を持っていたのだ、だからこそどんな危険が潜んでいるかも分からないこの男の提案に乗った。
「お前はこの地に何かがあると感じたことはあるか?」
ケルシュタインは何やら自慢気に話し始めた。
「長く、なるのか?私は、待てんぞ」
「そう急くな、すぐに終わる」
そしてケルシュタインは再び話し始める。
「私はこの地にてある不思議な力を観測した、それはとても不思議なもので魔術さえ超える強力でありかつ未知な力であった」
(魔法のことだろうか⋯⋯?)
「そしてこの力は世界中どこでも観測された、だが一番強くどこか引力さえ感じるのはこの街グレイスだけだった、つまりこの力の原点がこの街にはあるということだ、魔力を超えた未知の力が、あるのだ!くはははははっ!」
どこか狂ったように目を見開いて笑うケルシュタインに若干引くリンナ、地獄のような空気がその場に流れた。
「そして私はその一部の力を抽出することに成功した、ではこの力をどう使うかと考えた時動物に入れたらどうなるのだろうと思いついたのだ、だがマウスに使った結果、マウスの体は粉々に弾け飛んでしまった、きっと力に耐えられなかったのだろう、そこで私は思ったのだ、この力を人間の体内に入れたいと、だが私は一人、お金がある訳でもない、そんな時にあの愚かな男クルティカが現れた」
「っ!!」
リンナはクルティカという名前が出た途端全身の毛が逆立つ程頭に血が上る。
「ふっ、どうやら相当嫌いなようだな、まぁいい続けよう、クルティカは言った、何か面白いことが起きるものを寄こせと、これはチャンスだと思った私はなんの迷いもなく抽出した力を液体状にした注射器を渡した」
「··········」
ここまでのことはリンナも知っていたことだったため怒りはするものの沸騰させることにはならなかった。
「そしてその後クルティカから色々なお前の情報を聞いていくうちに私はある仮説を立てた、”あれほどの力を持つものがただ獣化するだけで終わるわけがなく潜在能力が存在するのではないか”という仮説だ」
「そして私は研究に研究を重ね、ようやく試作第一号が出来上がった」
ケルシュタインは近くにあった紫色の液体が入った試験管を手に取りリンナに見せる。
「これはまだ実感途中のものだ、完全に潜在能力が発現するのかも分からないしどんな副作用があるのかも分からない、そもそも潜在能力なんて無いのかもしれない、とてもとても危険なものだ、それでもお前はこの薬を受け取るか?」
煽るようにリンナの前で試験管を揺らすと、リンナはそんなケルシュタインを鼻で笑った。
「ばかめ、私が、その程度の、ことで、怖気付くと、思ったか?やる、それ以外に、選択肢は、ない」
リンナは笑みを浮かべながらパシっと試験管を奪い取る。
「ふむ、ナマケモノのようにのっそり言うと中々格好がつかないな」
「うるさい」
最後の最後でケルシュタインがそんなことを言ったせいで格好がつかなくなってしまったリンナであった。
ほこりまみれのプライド 紅の熊 @remontyoko
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