未踏を進む人たち

 未踏では所属先を書かなければいけなくて、だから私の所属先に仲間内で使っているグループ名のようなものを書いた。所属先がなければ「フリーランス」と書くことになっているけど、公表されて今後も残り続けるから、気に入った名前を書きたかった。


 同期のクリエイターの所属先には、東京の名を冠したそれをはじめとする有名国立大学や、誰でも知っているようなIT企業の名前が並んでいる。門戸は平等に開かれているというし、実際選考自体は平等だろう。ただ、過去に採択者が多い大学なんかでは、先輩に応募書類を添削してもらったなんて話も聞いたし、環境による有利不利はたぶん存在している。


 いずれにせよ、未踏に採択されるのはエリート層が多い。


 はっきり言ってエリートは嫌いだ。奴らは頭がいいし、努力もする。人格的にも優れた、立派な人間ばかりだ。立派な人間が成功し、それが立派な人間を育てる。エリートも貧困も再生産され続ける素晴らしき格差社会。


 だけど個々人が自分の幸福を求めるのは当然で、私はそんなことにずっともやもやしている。


 女性の少なさも気になる。繰り返すが選考は平等だろう。平等に選んだ結果、女性が少ないのだ。そのそも女性からの応募が少ないのもあるのだろう。


 未踏はコミュニティを重視していて、色々な人が集まることで生まれるものがあるのだという。そうであれば、同じ大学に偏っていたり、女性が少なかったりするのは好ましくないと思う。多様性は勝手に生まれてくるわけじゃない。平等な選考はある種の固定化につながる。多様な人のつながりによって新しいものが生まれるコミュニティとなることを期待するなら、バックグラウンドや属性の多様性もまた必要だし、提案の内容だけで平等に採択すればそれは得られない。


 未踏では一人のPMが良いと思えば採択されることを強調する。それは尖った提案を採択することはできるけど、全体のバランスや多様性は考えていないということだ。しかし、コミュニティによる相乗効果を期待するなら、個々の提案だけでなく、一定程度全体に目を向ける必要もあるように思う。

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