未踏の始まり
「未踏」は、経済産業省所管である独立行政法人情報処理推進機構が主催し実施している、”突出したIT人材の発掘と育成”を目的として、ITを活用して世の中を変えていくような、日本の天才的なクリエータを発掘し育てるための事業です。
――未踏:事業概要:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構(https://www.ipa.go.jp/jinzai/mitou/outline.html)
公式サイトにはそんな説明が書いている。天才的なクリエータがそんなに簡単に育成できるかと言いたいが、目標は高いということだろう。
実際に、これまでの未踏の中で天才的と言っていい人材が少数とはいえ発掘できているのは事実だから、一定の実績を上げているのは間違いない。
だけど、技術的に単純かつ新鮮味もなかったり、非現実的なほど目標が壮大だったり、採択するほどだろうかと思ってしまうプロジェクトも多い。もちろんこれは概要を知っただけの私の第一印象でしかないから、提案に対してPMが光るものを感じた部分はあったのだろう。ただ、高いレベルを期待していた分、正直に言えばやや肩透かしなのは否めない。
もっとも、私の採択テーマも「形式手法によるストーリーと設定の機械的検証と視覚化ソフトウェア」というよくわからないものだ。テーマ名から詳細を想像できる人は少ないだろうし、内容もキワモノ。要はストーリーを作るためのソフトなのだけど、それに使うのが理工系の一部にしか馴染みがないだろう、形式手法という専門的な理論だ。とても小説家やら脚本家やらが使いたがるとは思えない。
だから、他のプロジェクトも私に価値が理解できないだけで、未踏に値する意味のあるものなのだろう。
最初のミーティングでPMが言っていたことを思いだす。
「未踏に採択されるのは誰もやったことがないものだから、あまりに内容がバラバラで、他のプロジェクトが理解できないことも普通です。採択されるためには一人のPMに理解してもらえればいいから、多少言葉が拙くても問題ない。でも、未踏の経験の中で、みなさんには自分のプロジェクトをわかりやすく伝えられる能力を身につけてほしいと思っています」
私は、自分のプロジェクトをうまく伝えられるようになるだろうか。形式手法という単語も知らない小説家に、使ってみたいと思わせるような説明はできるだろうか。
未踏が始まる。どんな成果が生まれるのか、私たちはどこへ行くのか。私にはまだわからない。
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