第15話 猛暑のある日

 家を建てて、1年で、仕事を辞めたわたし。夫のお店の収入は、順調に伸びているものの、ランニングコスト等考えると、まだまだ家計に入れられるほどではなかった。まるまる3ヶ月休むつもりが、なんだかんだで、まるまる5ヶ月の休養期間となり、家計爆発の導火線はジリジリと燃えて火が近づき、焦りの日々だった。

 爆発直前に、今の職場に滑り込み、1年半が経とうとしている。転職前と比べると、給料はかなり減ってしまったが、適度に忙しく適度に楽に働けているし、職場の雰囲気は良い方で過ごしやすいので、よしとしている。

 だが、毎月の家計簿をつけていると、いつも眉間に皺がよってくる。家のローンに車のローン、そしてここへ来て、食品などの物価高騰に、光熱費の高騰で、毎月の積み立てを少し減らしても、なかなか厳しい家計となっている。

 電気料金が跳ね上がった冬の日、ある1ヶ月に電気代5万円を超えた時には、これが続いたら、もう貯蓄は無理だ、娘よ大学いくなら学費は自分でなんとかしてくれないか…とまで考えたが、翌月から何かの補正で例年のちょい高くらいに落ち着いたので、頭をブンブン駆け巡った悪い考えは、なんとか不時着し落ち着いた。

 そして、早くから猛暑日が続くこの夏、あの冬の電気代ショックのことなどスッカリ忘れ、猛暑のニュースをみながら、エアコンをガンガン効かせ、ゴロゴロ転がりながら、新しい家はやはり快適だな〜と思うのだった。

 そして、この時期一番の暑さです!とテレビのお天気お姉さんが言っていたあの日。その言葉、毎日聞いている気がするなと思いながら、快適な我が家で、掃除なんかしていた。

 なんか、どこかからカラカラと音がすると思い、部屋の中を見まわした。空気を回すために置いてるサーキュレーターかな?と見てみても、そこからではない。

 音のする方を探して辿っていくと、エアコンだ。エアコンが変な音してるかもーと夫に声をかけながら、新築時に買ったまだ真新しいエアコンに近づいた。エアコンの下に置かれたウォーターサーバーの上に水が跳ねているのが見えた。ん?カラカラじゃなくてパラパラだ!

 落ちる水滴がすごい速さでウォーターサーバーの屋根を叩き、パラパラパラパラと音を立てている。

 とりあえずエアコンを止めて、ミニバケツを水滴下に置いた。

 以前に、エアコン付きの賃貸の一軒家に住んでいた時、エアコンもかなり年季が入っていて、水が降ったことがあった。その時は、送風口の風向ルーバーを下向きにしすぎて、冷風がルーバーに当たって結露して水が落ちてしまっていると言われ、風向を一段上にしたら水が落ちなくなった。

 バケツを押さえながら、どこから水が滴り落ちているのか見ると、ルーバーや送風口ではなく、本体の下面の継ぎ目の所から落ちている。嫌な予感がした。

 その日は日曜日だったので、とりあえず、エアコンメーカーの相談窓口に電話した。一時エアコンを止めただけで、焦る気持ちも相まってか、すぐに体感温度は上昇していく。症状を話したところ、電源を切って、コンセントを抜いてブレーカーを落としてくださいと言われた。無理ですぅ、いつまでですかー、めまいがする。

 修理には、すぐには行けないが、いつ行けるか、修理の部門から連絡しますと言われ、まためまいがした。

 嘘でしょ、この、暑さの、中、エアコンが、使えない、なんて、、、考えも息切れ状態。

 こんな時、夫は慌てない。修理となると、取り付けをしたハウスメーカーのアフターケアを通して依頼の方がいいんじゃないかと、エアコンメーカーの修理手配は一旦保留して、ハウスメーカーの相談窓口に電話をした。

 結果、翌日に、ハウスメーカーの下請けのエアコン取り付け業者さんがとりあえず見に来てくれるという。

 最短距離で行きたがるわたしは、メーカーの修理の人が直接来てくれたほうが早くない?ともどかしく思ったが、夫は、明日来てくれるんだからいいじゃないと言う。うーんと思いながら、1日エアコンのない日を耐えた。

 翌日、わたしは仕事だったので、夫に任せて仕事に向かった。職場は、自然派?で、極力エアコンを入れてくれない。朝は風を入れてなんとかしのぎ、どうにも暑くなるとエアコンを入れてくれるが、その頃には、わたしはもう汗だくだ。

 それに比べれば、我が家のエアコン停止は、それほどの酷いダメージを与えていない。

 我が家は、1階に一台、2階に一台のエアコンがあり、すべての部屋が区切られていないので、それで家中が快適温度になっている。さらに1階はお店と繋がっていて、お店に一台のエアコンがある。お店と家は普段は、2っのドアで仕切られている。

 水が出たのは、家の1階のエアコンで、2階のエアコンを稼働して、お店とのドアを2つ開ければ、なんとなく涼しくはなるのだ。

 その日の午後取り付け業者さんがやってきた。

 水の漏れている場所からして、ドレンホースが詰まっているのではと。詰まりを外から吸い出して何か詰まりが取れればそれで大丈夫だが、詰まっていなければ、大々的な修理が必要らしい。

 外から吸い出すと、どわっと水が出てきたらしい。そして何かトロッとしたものも出てきた。その方曰く、たいがい詰まりは、ゴミとか虫とか何か固形物が詰まっているという。トロッとしたモノが出てきたのは初めてだとか…。なんですか、そのトロッと。

 取り付け場所の関係で我が家のエアコンの排水管は、壁の中を通る隠蔽配管で、まあまあ長い距離を壁の中で流れるようになっている。その傾きの角度が緩すぎて、排水の水が溜まり、それがカビたりしてしまって、トロッとしたものはカビの塊なのかもと言われた。

 えー、また家の設計の関係ですかぁ?排水管の傾きとかって考えたらなんとかならないのもの?と、また、ハウスメーカーへの怒り復活。どうしても距離が長くなり角度が取れなかったのか?と思ったが、それほど距離のないお店の排水管も詰まっていたらしい。ううむ…隠蔽配管ってこうなるの?

 角度を変えるには、大々的な工事が必要ですよね…。

 とりあえず、自力でできることは、エアコンフィルターなどの小まめな掃除と、ドレンの詰まりを外から吸い出すグッズがホームセンターなどにもあるので、購入して定期的に吸うぐらいらしい。こまめな掃除は、まめな夫がすでに行っているので、ホームセンターで吸い出すやつを買ってきた。

 エアコンはまた正常に動き、猛暑も快適に過ごしているが、何かもやっとするナマケモノであった。

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