第14話 幽霊探し

 初出勤の日、緊張と共に、聞いた噂の検証のため、幽霊はどこだ?とアンテナを立てて仕事をした。

 まずはこれをと言われた仕事をしたが、忙しそうだったので、これはやってもいいですか?と確認しながら手を出して、仕事を覚えた。

 転職に慣れることがいいかわからないが、そこのやり方を覚えて流れに乗って仕事をすることは、年々うまくなっている。

 新たに入った会社は、そこそこ忙しいが、体調を崩して辞めた前職よりはゆとりはある。周りの社員さんの働きを見ながら、仕事をしない幽霊を探してみたが見当たらない。他の社員さんに、どのぐらいこの会社にいるのかなどを聞きつつ、わたしが最初に面接を受けて断られた時に受かった誰かを探したが、それらしき人も見当たらない。

 その後聞いた色んな話を合わせると、わたしが泥舟宇宙船から救われた社長からの打診メールにあった「急な退職者」が幽霊さんだったようだ。10年弱もこの会社にいたらしい。働かず、そして、急に辞めていった…。恐ろしい。

 で、わたしの面接ライバルは、結局断って別の会社に行ってしまったらしい。

 そういえば、社長からのメールに、タイミングの悪さを痛感しておりますと書いてあった。そういうことだったのね。

 とりあえず、幽霊は退散していてよかった。

 経営者も社員もみんな感じがいい。年収決定の時の嫌な予感は、それほど心配なさそうだ。ただ、変なところにケチな感じはありそうだ。給料が安めな割に、他の会社では出ていたいろんな補助や手当ても、ほぼ出ない。

 家を維持するため、それも納得して細々と勤務できればいいか…。幽霊を長年雇っていたぐらいだから、相当なことがない限りクビにはならなそうだし。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る