第2話 MRI

 2日後、MRIを受ける病院に行った。

 初めて来た病院だったので、検査の順番を待つ間、見学気分で、怪しくない程度にキョロキョロと見回した。ちょうど目の前の壁に、MRIの機械の説明が貼ってあった。閉所恐怖症でも大丈夫みたいなことが書いてある。そのMRIは、上下は狭いが、横が空いている感じの形らしい。狭い筒に入るのを想像していたので、これなら少しいいかもと自分に言い聞かせた。

 順番が来て、技師さんに閉所恐怖症があることを伝え、途切れ途切れに休憩を入れながら撮影してくれることになった。装置を見ると、確かに横は空いているが、思ったよりオープンなタイプではなかった。説明は受けたが何のためか忘れた重い鎧みたいなのを胸辺りに巻き、ゆっくり頭から機械に入っていった。目を閉じていた方が狭い感じがしなくていいのでは、と思い、目を閉じて進む。撮影が始まり、そこから何分かずつ区切っているものの、しばらく出られないと思うと少し恐怖が湧いてくる。気を紛らわそうと、横がオープンなら意外と大丈夫なのか?わたし?と、軽い気持ちでうっかり、うっすらと目を開けてしまった。上の壁がすぐ目の前に見えてしまった瞬間、動悸ともわからないくらい心臓がドドドっとなり、パニックになりそうになって慌てて再び目を固く閉じた。完全に裏目った。そうだ、首を横に向けて開いてる方を見たら落ち着くんじゃないか?と、撮影の途切れた休憩時間に首を横に曲げて薄目を開けてみた。上下の狭い壁と壁の間からちょいと先のひらけた空間を見ただけでは、ここはオープンな場所!と脳みそも騙されてはくれなかった。そこからは、どんなに落ち着こうとしても、胸で重い鎧を持ち上げるほど呼吸が大きくなり、ドキドキも止まらない。技師の人が、大丈夫ですか?と声をかけてくれるが、もう無理ですってほどのパニックではないかなと思いながら、大丈夫ですと答えてしまう。状態を説明する余裕もなく、鎧を上下させながら、大丈夫ですと答えるので精一杯だった。そうして、なんとかトータル数十分の検査を終えることができたが、案の定、荒い呼吸のおかげで、ブレブレの画像が出来上がった。技師さんごめんなさい。

 少し自分にガッカリしながら、できたてのデータを持って、もとの整形外科へ向かった。

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