ナマケモノ持ち家を維持する

@_fly_

第1話 異変

 生来のナマケモノが45歳で突然に家を建て、引っ越し、転職し、子供は転校し、夫は紅茶屋を開店し、輝く新生活が、と思った矢先に、新築の家の作り付けの棚が崩壊したり、水道水が臭ったり、(詳しくは『ナマケモノ家を建てる』をごらんください)バタバタバタバタしているうちに、ある日ナマケモノの体に異変が…。


 すったもんだあってなんとか建てた家に住み始め、家の近くの新たな職場で働き始めて半年が経った頃、脇腹から背中にかけて違和感を感じた。わたしは、風邪をひく前に、よく皮膚の表面が痛くなることがある。最初はそれに似ていたので、風邪かな?と思って、いつもの葛根湯を飲んだ。3日、1週間、2週間と経っても違和感が消えず、消えないどころか、違和感から痛みに変わり、痛みが徐々に強くなってきて、いよいよ不安になる。

 仕事には行けているものの、時には脇を抱えて唸るほどに痛い。朝起きた瞬間が一番痛みが強く、夕方仕事が終わる頃から夜寝るまでは比較的痛みが弱い。夜に、治ったかな?と思うと翌朝目覚めた瞬間に激痛がありガッカリするという繰り返し。なんだコレ。家にあった痛み止めのテープを貼ってみてもよくならないし、家にあった鎮痛剤を飲んでみても効かない。

 病院嫌いのナマケモノだが、流石に心配になり、夫からも職場の上司からも強く勧められて、病院へ行くことにした。

 こういうのって、まず、何科に行けばいいのかで悩む。痛いから整形外科?でも、傷めたわけでもないし痛み止めが効かないとなれば内科?

 大きな病院には、何科にかかればいいかを診てくれる総合診療科みたいのがあるけど、近くにはなかなかない。

 とりあえず、内科も整形外科もある総合病院に行ってみることにした。受付で何科がいいか相談しようと思っていたら、このご時世、入り口で、検温をされ、何科にかかりますか?と尋ねられた。この方は看護師さんだろうか、事務員さんだろうか、はたまたボランティアさんなのだろうか、と思ってどう答えようか考えていると、少し怪しまれた。とりあえず、事情を説明すると、その方も困って、受付で相談してみてと、入口は通してもらえた。

 受付で事情を話したところ、整形外科が休診だったので、内科にかかることにした。内科の先生は比較的若く見え、それなりにこちらの話を聞いてくれたが、胸のレントゲンと心電図に異常が見られないことが分かると、ちょっと困った様子で、原因がわからないですが、とりあえずこの薬飲んでみます?という感じだった。なんだか、これでは完治に時間がかかりそうだし、原因もわからなそうなので、最短ルート狙いが癖のナマケモノは、他の選択肢を聞いてみた。すると、後日この病院の整形外科にかかるか、本日近くの整形外科にかかるか、とりあえず神経の痛みを抑える薬を飲み始めるかのどれかだと言われた。ハシゴで別の病院の整形外科を受診することにした。なかなか、医師に、他の選択肢を聞きづらいが、聞くと意外とスマートに選択肢を上げてくれる。受付やスタッフさんに相談するより話が早い感じがしている。

 教えてもらった整形外科に行き、また一から事情を話す。診察前に看護師さんにひと通り話し、診察時に医師にもまたひと通り話した。とてもめんどくさいが仕方がない。この痛みを無くすための最短ルートを探るため。どうやら神経の痛みっぽいが、レントゲンを撮っても、原因らしきものは見当たらないとのこと。皮膚にポツポツが出たりしてると帯状疱疹とすぐに診断できる痛み方らしく、行く病院行く病院、会う医師会う看護師に、毎回、ポツポツが出ていないか、出たことがないか、全員に聞かれるが、残念ながら?出ていない。

 MRIを勧められて、そこには機械がないので、提携している近くの病院に予約を入れてもらった。薬を飲みつつ2日後にMRI検査を受けた。ナマケモノは、閉所恐怖症なので、意識があるうちは、MRIは一生やらないと思っていた。小さい頃から、とくに頭が押さえつけられたり覆われたりする状態になるとパニックに陥る。ダメだったらやめてもいいしと看護師さんに言われ、トライしてみることにした。

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