第19話:のぞき見の代償
美紀ちゃんを駅まで送って、その後 家に帰ってきて違和感の原因に気付いた。部屋の戻ると、
今日は制服から着替えていたが、Tシャツにデニム生地のショートパンツというよりは、ホットパンツ。めちゃくちゃ足が放り出されている。
お尻の辺りの曲線は太ももだけのものではなく、再度盛り上がっているので、一部お尻のそれだろうと思われた。
「あ、
「……」
「美紀ちゃんに貸すラノベ、これはどうかな?」
綾が読んでいたラノベの表紙をこちらに向ける。悪役令嬢物のアレ。アニメにもなった人気作品だ。二期はちょっと勢いが衰えたけれど、原作はすごく面白い。女の子なら入りやすいかとも思った。
綾が選んだ1冊は、俺が選ぼうと思っていた候補の一つだから概ね方向性は同じだった。そして、同時に確信もした。
「お前、窓から覗いてたろ!?」
「な、なんのことかいなー」
明後日の方向を向いて音のない口笛を吹く綾。それ、全然誤魔化せてないから。俺が女の子を部屋に入れるのはいつ以来だろう。男の友達もほとんど入れたことがない。その俺が、彼女候補ぶっちぎりナンバーワンの美紀ちゃんを部屋に招いたのだ。
俺が逆の立場だったら確かに気になる。美紀ちゃんが来てる間、LINEもなければ、電話もない。かと言ってうっかり部屋に入ってきたりもしてない。
極めつけは、会話の内容を知っている。俺を泳がせて、観察していたのだろう。
「で、どうだった?」
「18禁のプレイが生で見れるかと思ったのに残念やったー」
1回頭 小突いとくか。博多弁でいうなら、「ぼてくりこかす」か。
「悠斗は?」
俺? 俺は……なんだろう、意外にもあっさりしていた。美紀ちゃんは可愛いし、顔は好みの方だ。キスはしてみたいし、大き目な胸にも興味はある。趣味が合うかはこれからだけど、俺は少なくとも好かれている。付き合いを進めれば、あの身体を自由にできる日もそう遠くない。
彼女なら俺ともうまく行くかもしれない。少なくとも俺が追い求める「理想の彼女」の範疇から外れることはない。むこうがオリジナルなのだから、もしエリアから外れたら俺の方が修正しないといけない。
それでも俺は冷静だ。エサを前に「待て」された犬のように待ちきれない衝動がない。目の前のごちそうに気持ちがいかないってことは、俺はお腹が空いていないのかもしれない。
「俺は……冷静だ」
「ふーん」
「綾こそ、遊んでくれる人がいなくなったて、寂しいんだろう! 部屋でべそかいてたのか?」
「バカッ! そっ、そんな訳ないやろっ!」
「そうだろうなぁ」
「でも……頭は撫でてもいいよ?」
「なんだこりゃ」
なぜか、綾の頭をなでることに。その後、ゲームをやったけど、あんまり盛り上がらなかった。綾がどこか上の空というか、乗り気じゃないというか。
なんにせよ、美紀ちゃんとのことは、無意味に話を延ばすのはよくない。今週末のデートで色々決めて、色々話そう。それまでに、俺は色々考えよう。
■■■ 小林綾 サイド
ずっと一緒だった悠斗に彼女(仮)ができた。何年ぶり
私は悠斗の努力の過程を
悠斗は、人一倍努力をしている。それも、誰にも見られないところで。私にも秘密にしているくらい
彼女(仮)ができたなんて彼が逆の立場なら、爽やかな笑顔で喜んでくれるはず。私にはそれができないって
後で揶揄ってやろうと思って、部屋を覗いていたら、悠斗が美紀ちゃんをベッドに押し倒した。見てはいけないものを見たことに気がついたし、してはいけないことをしたことに気がついた。
早々に部屋に引っ込んで、激しく後悔した。悪気があった訳じゃない。でも、あれは悪いことやった。勝手に部屋を覗くのは悪いことやった。あんな光景は他人が覗き見ていいものやない。
同時に、私は気づいた。私は女で、悠斗は男。そして、私と彼は同じ人間じゃない。彼は彼、私は私。優斗は私じゃない。じゃあ、何なん?
私と優斗の関係は何なん? 友達? お隣さん? 姉弟? 家族?
このどんな関係なのか説明することができなくなった身近な男の子との距離感が
今はまだ、悠斗に頭を撫でられてひと時の安心感を得ていよう。
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