★ティーブレイク その2 個人的に好きなマイナーゲームの紹介 『ディープラビリンス』

 楽しいマイナーゲーム紹介の時間だ! もちろんスルーしてOKだ!


 今回はDSソフト『ディープラビリンス』。

ライターの加藤正人さん、作曲家の光田康典さん好きならば、「お!」っと思ったかもしれない。

また当時携帯電話のアプリ版を遊んだ方もいるだろう。僕もやってみたかった。知るのが遅すぎた。


 『ディープラビリンス』は、DSの下画面をペンでスライドして剣を振ったり、魔法を放ったりして進む一人称視点で進むアクションアドベンチャーだ。

なおこのソフト1本でアプリ版の移植品と、DS用のオリジナルの両方楽しむことが出来る。

 パッケージの絵柄はアニメ塗りのいかにも子供向けというものだが安心してほしい。加藤正人さんだぞ。

 いうなれば(勿論いい意味で)パッケージ詐欺だ。

油断していると宮部みゆき先生の小説『ブレイブストーリー』を彷彿とさせる、なかなかヘビーな親子の軋みを味わうことになる。

 アプリ版はさらに設定が重く、暗く、お辛い展開が君を待つ。その分クリアしたときの達成感と開放感は最高だよ!

 この作品がきっかけで、いろいろ目覚める子もいるのではなかろうか。

なおアニメ調のDS版オリジナルとは真逆に、元となるアプリ版は絵も油彩塗りでリアル調のイラストになってはいるが、作中のCGの差はほぼない。


 さて、ここで紹介するのはDS用オリジナルの方だ。

簡単にあらすじを書くと、「家族旅行中に発見した謎の洋館に吸い込まれたせいではぐれた両親を探すために少年が愛犬と共に迷宮を冒険する」物語だ。

 舞台はタイトル通り迷宮だ。迷路のように入り組んだダンジョンを進むことになる。

 そのため、分類的にはアクションアドベンチャーになるが、実際はローグライク型ゲーム(プレイする度にマップが自動生成されるゲーム)に片足をつっこんでいると言えよう。

(※マップ自体は固定です)


 僕は『チョコボの不思議なダンジョン』シリーズと、『ゼルダの伝説』シリーズが好きだ。そして小説『ブレイブストーリー』も。

そして、僕は一人称視点系のゲームはあまり遊ばないタイプの人間だった。


 一人称視点系というのは、例えば『コールオブデューティー(PS3)』とか『バイオハザード7(PS4)』といった主人公目線の画面で進むものを指す。

映画で言うと『REC』。

VRでみる画面という方が分かりやすいかもしれない。

 何故遊ばないかというと、理由は単純で、カメラ酔いが酷いため15分くらいで目が回り脱落してしまう。『クーロンズゲート(PS1)』ですら酔った。

しかし、この『ディープラビリンス』は携帯機のためか、手振れや画面のサイズのおかげなのか、酔うことがなかった。

 故に僕にとっては一人称視点という画面構成が比較的新鮮に映り、またそれまでにタッチペンをここまで活用するゲームに出会ったことがなかったというのが大きく作用したので、見事にハマった。

 言葉を選ばずに言うと、自分の行動と知識が死に直結しているという恐怖感が楽しかった。

(※実際はそこまで殺伐としてませんよ)


 タッチペン操作だけでいうと、後続で出た初代『二ノ国(DS)』も似たような感じだったのが、どちらかというと『ディープラビリンス』の方が性に合っていた。

ただ『二ノ国』もいい作品であることには変わりない。

ゲームに登場する魔法を、ソフトに付属した実物の本の中から調べて繰り出すというのは、とても素晴らしい体験だった。


 さて『ディープラビリンス』では、メインで操作するのは下画面になる。なお上画面は基本的にマップが表示される。

 下画面の右側にコマンド用のアイコンが縦に一列で並んでおり、剣や魔法の形のアイコンをタッチして選ぶと画面上に9区切りになった正方形の枠が表示される。

例えるなら、囲の字のようなものだ。

 この枠の上をタッチペンでスライドすることで、剣ならばスライド方向に合わせて剣を振り、魔法ならば一筆書きの図形をタッチペンで書きこみ合っていると魔法が発動する仕組みだ。

 なお盾アイコンをタッチすると、押している間は構えることも可能。逆に言うと、盾を構えている間攻撃が出来ない。

 魔法はゲームの進行に合わせて増えていく。難しい魔法は、その分図形も複雑化していく。

 ちゃんと描かないと発動しないので、ボス戦は非常にスリリングだ。

描いても描いても魔法が発動しない絶望感、図形を見直しキチンと描けるようになり戦況が有利になった時の高揚感。たまらん。

 剣の操作についても、登場する敵は振り方によってダメージの通り具合が変わる。何度も切り付けて学習していくのだ。

 なお戦闘を手伝ってくれる味方は皆無なので、自分の腕が上がっていくことが分かりやすい。

 迷宮も中々ボリュームがあり、宮殿風だったり森林だったりと見た目も変わるので、マップ埋めが楽しい。

そして、探索のお供となる音楽の力も大きく、僕にとっては好きな曲調が多かったので、巡回する苦痛を和らげるクッションになった。

トラップを魔法で解くなんてこともあるので手探りで進んでいく探検家気分が味わえる。


 以上のことから、『ディープラビリンス』は職人気質の孤軍奮闘ゲームと言って差し支えないと思う。

 そして、それはゲームのシナリオについても同様だ。

 一人称視点で進む故に、主人公の少年は基本孤独である。両親と出口を探してひたすら彷徨う。

 モブは多少登場するが、少年に対しての態度は村社会を彷彿とするよそよそしさだ。セーブポイントのカモノハシさんは安らぎや…。

 一応相棒として愛犬はいるが、こいつはすぐどこかに行くし、骨型のおやつを渡さないと手伝ってくれない(しかも個数制限あり)。

いつ骨のおやつを使うのかを見極める必要があった…。足元みやがってチクショウ!

 やっと再会した父や母も現実なら虐待すれすれのセリフをぶつけてくる。

 進むことを躊躇するようなことしかないのに、心が折れても不思議ではない環境の中、諦めずに進む主人公…。

状況のせいで大人にならざるを得ない感じが、欧州あたりの日常が得体のしれない何かに侵され価値観が崩壊していく系の映画っぽい感じが、ヒシヒシと伝わってくる。

大好物です。ありがとうございます。

 僕はもはや親戚のおじさん目線で主人公の行く末を見守った。主人公は本当にいい子やで…。

そして薄情な犬よ…。所詮は畜生なのか…。分かり合えないのか…。助けてやれよ、マジで…。


 小説『ブレイブストーリー』『怪物はささやく』『かかし』、映画『ブラックブレッド』『時計仕掛けの小児病棟』『ダークフェアリー』あたりを明るくマイルドにしたものが好きならば、楽しめるのではないだろうか。

漫画『BLAME!』の子供版…は言い過ぎか…。やってることは似てるけど。


 一人称視点自体は珍しいものではなくなったものの、ローグライクよりの構成やタッチパネルを大きく活用した例としては一見の価値ありだと思う。

また一人称ホラーゲーによくあるビックリ要素もないので安心してプレイできる。

 敵はみんなNPCなので、容赦なく倒せる。画面の向こうにいる人間を考えなくて済むのも精神的に楽だ。

 そして相棒やモブのあり方も学べるだろう。ナビィやチャットの小言を恋しく思う日が来るなんてなぁ…。

 ただ、ゲームに慣れていると難易度は少し物足りないかもしれない。アプリ版はDS用オリジナルと比べると物凄く長いので、根気も必要となる。


 DSソフトは3DSでも遊べるので、機会があったらプレイしてみてはいかが?

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