第8話優子が…

初七日法要を済ませた進一と優子の落胆ぶり凄まじい。

優子はまだ家事が出来る気力もなく、出前の食事やコンビニ弁当ばかりであった。

進一は職場に復帰した。

すると、橋社長から呼び出しを喰らった。


「中森君、お子さんの事は残念だったな」

「……はい」

「君がいない間、私が経理の処理をしていると、不審な送金があってね。調べたら、君の名義の銀行に送金されていたんだよ。850万円だった。君が遊興費の為に横領したはずがない。お子さんの治療費のためだね?」

「……はい。申し訳ありません」

進一は深々と頭を下げた。

「私は、君を告発したり他の社員にも黙っていてやろう。働きながら返済しなさい」

「社長、あ、ありがとうございます」

進一は涙ながらに、社長に頭を下げた。社長も、もらい泣きして、進一の方を叩いた。


この日は20時まで残業した。

帰宅すると、部屋の明かりがついていない。

寝室を覗いても、優子の姿が見えない。


どこ、行ったんだろ?


進一は横領したお金を返済するために毎日残業となった。

仏壇の拓也に線香を焚き、バスルームへ向かった。


!!


優子が湯船に浸かっていた。だが、明かりに反応しない。バスルームには、カッターナイフが転がっていた。浴槽の水は赤く染まっていた。脈はない。

だが、救急車をすぐに呼んだ。


救急車に乗り込み、病院まで付き添った。

心配していた事が現実のものとなった。


優子は拓也の後を追う様に、自ら命を絶ったのだ。

進一は怒りしか湧かなかった。


ナゼ、


ナゼ?


拓也の分まで生きようと約束したじゃないか!

進一は病院で目眩がして、意識を失った。

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