第6話小児病棟
拓也が無菌室から出られて、小児病棟へ移った。同じ病気の友達や他の病気で入院している友達と仲良くなった。
久しぶり、夫婦で拓也の様子を見に行く。
病棟に着くと、拓也はキッズルームにいた。
進一と優子の2人の姿を見付けると、
「あっ、パパとママだっ!」
と、掛け寄ってくる。
進一が、
「拓也、沢山お友達がいてよかったね。楽しい?」
「うん、楽しい。でも……あかりちゃん死んじゃった!」
息子はうつ向いている。
あかりちゃんは小学6年生で良くチビッ子たちのお世話をした。その子も白血病だった。
拓也は小学1年生だから、親に甘えたい盛りだが、自分の状況を理解してわがままを言わない。
その日は夜のご飯の時間まで、一緒にいた。
食欲は余りなく、おかずを半分とゼリーを食べただけ。
拓也はみるみる痩せていった。
また、明日も来るからね。と拓也に言って病室を出た。車に乗ろうとして、ふと5階の窓を見ると拓也は手を振っていた。
2人もバイバーイと手を振ってた。
優子は涙を浮かべている。それを見た進一ももらい泣きした。
車の中で2人は黙り込んだ。
薄々気付いている。拓也が長く無いことを。
進一はスーパーに寄り、缶ビールとつまみを買ってきた。
帰宅して2人はシャワーを浴び、缶ビールを飲んだ。
なんだか、今夜のビールはいつもよりほろ苦い。
優子は麦茶を飲んでいた。2人とも今夜は食欲が無く、20時には就寝した。
進一は既に500万円以上着服していた。
お金は返せばいいが、命は金で買えない。
必要悪なのだと言い聞かせた。
そして、2人は深い眠りに落ちた。
明日は日曜日。優子は平日だけ会いに行く決まりであったが土日も会いたいと言う。
進一は仕事の為、土日しか会えない。
拓也が病気と闘っている。親も闘っている。
だが、それは長くは続かない事を進一は感じていた。
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