第3話息子の為に
経理担当の進一は、今日も1人残業をした。
優子は今頃、病院から戻り夕飯の準備をしている事だろう。
貯金を切り崩し、進一自身の給料も治療費用に使っている。
会社の連中からの飲みの誘いも断り続けている。
タバコも辞めた。今は切り詰めるしかない。
だが、限界がある。
息子の為に何とかしてやりたい。
デスクの家族写真を見ながら、拓也の事を思うと、涙がが溢れそうになる。
8時まで毎日勤務しているが、手取り36万円程度だ。優子はスーパーのレジ打ちパートをしていたが、今は拓也に付きっきりで、パートは辞めている。
進一は追い詰められていた。
そこに、魔が差す。
進一はオンライン決済の金を自分の口座に振り込んだ。
30万円。少額だし経理は進一しかいないのでバレる可能性は低いと考えていた。
これも息子の為だ!心苦しいが進一は横領に手を染めた。
翌日、自分の口座からお金を下ろし我慢していたタバコを吸った。
頭がクラクラした。
優子に25万円渡した。
「進一君、このお金はどうしたの?」
優子は封筒の現金を数えている。
「会社から借りたんだ。うちの会社はそういうシステムがあるんだ」
「そうなんだ、助かるわ」
「拓也、今日はどうだった?」
「一日中点滴で、絵本を読んであげたの。そして、ボクいつ家に帰れるの?って、聞かれて返事に戸惑ったわ。もうすぐよ。とは言ったけど」
進一は、
「久しぶり、ビールでも飲まないか?」
「いいわね。今日はビーフシチューだから。先にお風呂入って。洗濯物が多いから」
優子はビーフシチューを温め始めた。
進一はシャワーを浴びながら、会社のお金を横領したことを考えていた。バレたら返せばいいんだ。
明日は土曜日。拓也の顔をずっと見ていたい気分だった。
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