第2話
私は昔から自分が嫌いでした。母には自分を嫌いにならないでと何度も言われてきました。無理です。
どうしたら、自分を好きになれたのでしょう。好きになれる証拠が私には一欠片もありませんでした。
周りのみんなは輝いているのに、私は光のない石ころ。そんな中、一際、輝いていたのがあなたです。
あなたを見た時からあなたになりたいと思いました。あなたのようにではなく、本当のあなたにです。
今、思えば、目立ちたかっただけなのかもしれません。しかし、当時はあなたを、崇拝していました。
これは恋というより、崇拝です。私を救う神様でした。当時、他者から虐められていたこともあって。
それがどれほど辛かったか、そしてあなたがどれほど私を救ったか。あなたは知る由もないでしょう。
本当だったら、あなたに成り代わりたかった。あなたの身体が、性格が、環境がとても羨ましかった。
あなたになるために色々と考え、調べました。チョウチンアンコウの中には交尾で融合するそうです。
オスがメスに齧り付いて一体化し、死ぬまで精子を供給します。私にとってそれは理想的であります。
歪んだ愛なのかもしれません。しかし、私にはこれ以上に幸せなことはないという思いが溢れました。
崇拝している人と一体化できるなんて、どれほど理想的なことか、皆様はわからないかもしれません。
しかし、生殖自体が、遺伝子同士の融合とも言えます。一体化ではないにしろ、皆んながしています。
でもそれは、別個体を新たに産むことです。私がしたいのは、あなた自身になることで異なるのです。
遺伝子同士の融合も、それはそれで羨ましいけれど、私はあなたとの一体化や融合を望みたいのです。
ムンクの接吻のような、私とあなたの顔が見えなくなり、溶け合うほどのキスを、私はしたいのです。
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